2023年12月01日

ユーロ圏失業率(2023年10月)-若年失業率の上昇が継続

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率は6.5%で横ばい

11月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏の失業率を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏失業率(20か国、2023年10月、季節調整値)】
失業率は6.5%、市場予想1(6.5%)と一致、前月(6.5%)から横ばいとなった(図表1)
失業者は1113.4万人となり、前月(1108.6万人)から4.8万人増加した

(図表1)失業率と国別失業者数/(図表2)若年失業率(25才未満)と国別若年失業者数
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:若年失業率は上昇傾向が継続

ユーロ圏(20か国)の10月の失業率は6.5%で、9月から横ばいとなった。過去データはほとんど改定されなかったが、統計データ公表以来の最低値とされていた6月と8月の失業率がやや悪化方向に改定された(いずれも改定前6.4→改定後6.5%)。その結果、失業率は3月以降6.5%で横ばいになっている(6.5%は統計データ公表以来の最低値でもある)。

失業者数は10月の前月差で4.8万人増となり、9月の5.5万人増に続き2か月連続の増加となった(図表3・4)。主要4か国では、ドイツのみ小幅減少(▲0.1万人)で、フランス(+0.8万人)、スペイン(+0.9万人)、イタリア(+3.1万人)は増加した。

10月の若年失業率は14.9%で、9月(14.6%)から上昇した。また、過去データは5月以降の数値が悪化方向に改定されており、特に7月以降の改定幅が大きくなっている(7月改定前14.0%→改定後14.5%、8月13.9%→14.5%、9月14.0%→14.6%)。その結果、若年失業率は4月(13.9%)をボトムに上昇傾向が継続している形になっている(前掲図表2)。

若年失業者数は10月で238.0万人(前月差4.4万人)となり、6か月連続で増加している。その結果、10月はコロナショック直前の水準(20年3月の234.5万人)を上回った(図表4)。
(図表3)ユーロ圏(20か国)の累積失業者数変化/(図表4)ユーロ圏(20か国)の累積失業者数変化
国別の9月のデータを見ると、失業率はデータが公表されている19か国中、悪化した国が6か国、改善が5か国、横ばいが8か国だった(図表5)。また、若年失業率は悪化した国が10か国、改善が3か国、横ばいが7か国だった(図表6)。
(図表5)ユーロ圏の失業率(国別)/(図表6)ユーロ圏の若年失業率(国別)
最後に詳細な月次データを公表しているイタリアとポルトガルについて確認すると、イタリアは失業者が増加したが、非労働力人口がそれ以上に減少し、就業者は増加した(図表7)。一方、ポルトガルは失業者と増加、非労働人口が増加し就業者が減少した(図表8)。
(図表7)イタリアの失業者・非労働力人口・労働参加率/(図表8)ポルトガルの失業者・非労働力人口・労働参加率
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年12月01日「経済・金融フラッシュ」)

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