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- トランプ・ショックと欧州-現実味帯びるポピュリズム伝播、試金石として注目されるイタリア国民投票-
2016年11月18日
■要旨
- 大統領選挙でのトランプ氏勝利の波紋は欧州でも広がっている。EUと米国との環大西洋貿易投資協定(TTIP)の行方は益々不透明になった。トランプ時期大統領は北大西洋条約機構(NATO)の基盤となる集団防衛条項に経費負担の公平性の観点から疑問を呈しており、安全保障の面でも潜在的な不安が燻る。
- 市場では、低迷が続いた銀行株に前向きな動きが見られ、前回ECB政策理事会前からの長期金利上昇のペースが幾分加速、ドル高ユーロ安が進んだ。しかし、米国の政策期待を背景とする長期金利への圧力やドル高ユーロ安基調が持続するかは不確かだ。
- 欧州にとって、対米関係に起こり得る変化や、市場のボラタイルな動き以上に悩ましいのは、英国発米国経由で欧州大陸にポピュリズムの伝播が広がることだろう。英国のEU離脱、米国でトランプ大統領誕生を後押ししたのは、現状に強い不満を持つ有権者だった。高失業、財政緊縮、テロ、難民危機に悩まされてきた欧州では、現状に不満を持つ有権者は多く、EU、ユーロは既存の体制の象徴として標的となりやすい。12月4日のイタリアの国民投票の「否決」は直ちに現状を大きく変えるものではないが、ポピュリズム伝播の試金石として注目を集めやすくなっている。
- 欧州委員会は11月16日に発表したユーロ参加国の17年度(1~12月)予算案の事前審査でイタリアなどの中期目標からの逸脱リスクを認めつつ一定の理解を示した。スペイン、ポルトガルへの制裁発動も見送った。緊縮策を強いるEUへの反発を強める民意に配慮した面があると言われる。現下の判断としては、おそらく適切だろう。
(2016年11月18日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
伊藤 さゆりのレポート
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