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コラム
2025年07月23日

数字の「36」に関わる各種の話題-36という数字は、実は意外なところでも現れてくるようだ-

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はじめに

数字の「36」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。「富岳三十六景」や「三十六歌仙」を思い浮かべる人も多いのではないかと思われる。それ以外には小さい頃に学んだ「九九」で「4×9=36(しくさんじゅうろく)」や「6×6=36(ろくろくさんじゅうろく)」の印象が強く残っている人も少なからずいるのではないかと思われる。さらには「三十六計逃げるに如かず」の言葉を思い浮かべる人も相当数いるものと思われる。

今回は、この数字の「36」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。

富岳三十六景

「富岳三十六景」は、葛飾北斎による富士図版画集である。様々な場所、様々な季節、様々な気象条件の富士山を描いている。「三十六景」というぐらいだから、全部で36の図があると考えている方も多いと思われるが、実は全部で46図となっている。元々は36図だったが、その後10図が追加された。ただし、引き続き「三十六景」と言われており、その意味では、ここでいう「三十六」は結果的に「多数」という意味合いを有する用語ともなっている。

なお、歌川広重による富士山を主題とした浮世絵風景画のシリーズである「不二三十六景色」や「富二三十六景」があるが、これらはそれぞれ36作品となっている。

三十六歌仙

三十六歌仙」は、(NHKの2024年の大河ドラマ「光る君へ」でも話題になっていた)藤原公任(ふじわらのきんとう)の『三十六人撰』(さんじゅうろくにんせん)に載っている平安時代の和歌の名人36人の総称である。具体的には、柿本人麻呂、大伴家持、山部赤人、小野小町といった歌人が選ばれている。

これは、確かに36人となっているが、それでもこの表現も「多数」を意味し、優れた和歌の詠み手が多数いることを強調している意味合いもあるようだ。

なお、「三十六歌仙」に影響されて、平安時代末期に藤原範兼が「中古三十六歌仙」、鎌倉時代中期には女性歌人による「女房三十六人歌合」なども誕生している。

三十六計

「三十六計逃げるに如かず」における「三十六計」というのは、魏晋南北朝時代の中国の兵法書である「兵法三十六計」に基づいている。どうにもならなくなった時には逃げるのが最善の策である、という意味になる。ただし、ここでの「三十六」は、「多数の計略」を象徴しているとも言える。

なお、「兵法三十六計」は、兵法における戦術を六系統・三十六種類に分類した内容である。六系統は、勝戦計(こちらが戦いの主導権を握っている場合の定石)、敵戦計(余裕を持って戦える、優勢の場合の作戦)、攻戦計(相手が一筋縄でいかない場合の作戦)、混戦計(相手がかなり手ごわい場合の作戦)、併戦計(同盟国間で優位に立つために用いる策謀)、敗戦計(自国がきわめて劣勢の場合に用いる奇策)、となっている。このうちの「敗戦計」の「走為上(そういじょう)」が兵法三十六計の最後の計となっており、「走ぐるを上と為す」ということで、万策尽きたときは逃げるのが最善の策である、という意味で、「三十六計逃げるに如かず」の語源となっている。

〇〇三十六不動尊霊場、〇〇三十六不動霊場

「〇〇三十六不動尊霊場」と呼ばれるものが、全国の各地域にある。ここで、「36」という数字が選ばれているのは、不動明王の眷属(けんぞく)1が三十六童子2であることによる。また、人間の煩悩三十六支を表し、三十六か寺を巡拝することによって煩悩を消除する意味も含まれているようだ。ただし、必ずしも36箇所でないケースもある。各札所には三十六童子が割り振られ、それぞれの童子がお迎え童子石像として設置されている。

・「近畿三十六不動尊霊場」は、大阪府・兵庫県・京都府・和歌山県・滋賀県・奈良県にある不動尊(不動明王)を祀る36箇所の霊場(寺院の総称)。

・「北関東三十六不動尊霊場」は、群馬県・栃木県・茨城県内にある36箇所の不動尊霊場。

・「東海三十六不動尊霊場」は、愛知県、三重県、岐阜県の東海三県にある36箇所の不動尊霊場。

・「関東三十六不動霊場」は、神奈川県・東京都・埼玉県・千葉県内にある36箇所の不動尊霊場。

・「四国三十六不動霊場」は、徳島県・香川県・高知県・愛媛県内にある36箇所の不動尊霊場。

九州三十六不動尊霊場」は、福岡県、大分県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県にある38箇所の不動尊霊場。
 
1 親族、同族。従者、配下、家子、所従等の隷属身分の者。眷属神(本来は、神の使者。多くはその神と関連する動物(想像上の動物を含む))。
2 不動明王は36の童子を従えており、各童子は1千万の従者を持つとされている。三十六童子の名を唱えれば悪霊は退散し、崇拝する者を背後から守護して、長寿をもたらすと言われている。

「三十六」という数字がなぜ「多数」を象徴することになっているのか

これについては、明確な理由はよくわからない。

例えば、「6」という数字がそもそも人間の5本の指を超える数字になっていることから、(比較的)大きい数字と考えられていたのに対して、その二乗になっている「三十六(6×6)」は、さらに大きな数字で「多数」を意味することになっているのかもしれない。サイコロの眼は「6」が最大で、2個のサイコロを振った場合に、双方とも6のゾロ目が出ることが最大値であることが関係しているのかもしれない。

あるいは、東アジア文化圏では、「四(四季)」と「九(久)」の組み合わせが「多くの」や「長く続く」を象徴することがあったことから、これらを掛け合わせた数字としての「三十六(4×9)」の意味合いに影響を与えているのかもしれない。

三六協定(サブロク協定)

「三六協定」は、労働基準法第36条に基づく労働時間(時間外労働や休日労働)に関する協定のことを指している。労働基準法第36条では、「法律で定められた1日8時間・週40時間を超える労働や休日労働などを従業員に命じる場合、労働者と使用者との間で協定を結んで労働基準監督署長に届けなければならない。」と定められている。36協定書を提出しないまま、労働者に時間外労働や休日労働をさせた場合は、罰則が科されることになる。

グランドピアノの黒鍵は36個

グランドピアノの黒鍵は36個、白鍵が52個あって、合計88個の鍵盤で構成されている。

全体の鍵盤数が88個となっているのは、88鍵以上の音域は、人間が聞き取ることができないからということによる。ピアノが誕生して以来、18世紀から19世紀にかけて、鍵盤数は増加傾向にあったが、結果的には人間が聞き分けることができる音域の範囲内に落ち着いたということのようである。

1オクターブの中のドからシの中に、黒鍵が5個、白鍵が7個あることにより、88鍵は7オクターブと長3度(度数が3度で半音4つ分の音程、黒鍵が1つ含まれる)ということで、黒鍵の数は36個(7×5+1)になっている。
グランドピアノの黒鍵

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年07月23日「研究員の眼」)

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