コラム
2023年02月09日

数字の「6」に関わる各種の話題-時間の単位の関係は「6」の倍数となっており、自然現象等でも多く観測される-

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はじめに

数字の「6」については、時間の単位の関係が6の倍数になっていること等から、割と接する機会が多い数字だとの印象を有している方が多いのではないかと思われる。実は「6」という数字は、宗教の世界、さらには自然現象等においても多く観測されるものとなっている。

今回は、この数字の「6」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。

時間の単位の関係は「6」の倍数となっている

時間の単位としては、1年が12カ月、1カ月は(基本的に)30日、1日が24時間、1時間は60分、1分は60秒となっており、ここで現れてくる「12」、「24」、「30」、「60」は、全て6の倍数となっている。

1年が12か月となっている理由については、以前の研究員の眼「数字の「12」が持つ意味とその不思議な魅力-「12」という数字は何でこんなに生活の多くの場面で使われているのか?-」(2017.10.2)の中で、「暦を知る上での重要な「月」の動きに関連している。月が地球を1年間にほぼ12回転することから来ている。このことは、地球から見ていると、月の満ち欠けが1年間に12回繰り返されることを意味している。」と報告した。

角度のベース360°も「6」の倍数となっている

時間の単位また、角度は円の1周360°がベースになっており、直線は180°、直角は90°となっている。1回転が360°になっているのは、1年が365日になっていることに関係している。簡単に説明すると、以下の通りとなる。

時計が無い時代には、太陽の高度を利用した日時計が使用されていた。太陽が(地球から見て)1周する期間を1日とした場合、太陽が再び同じ場所に現れる日数として、「太陽暦」では1年が365日となっている。一方で、月の動きをベースにして、月が同じ場所に戻ってくる日数として、「太陰暦」では1年355日となっている。こうした太陽や月の動きは、(地球から見て)円を描く運動になっていて、この円を1周するのに要する日数が、それぞれ365日と355日だったことから、その和半ということで360日として、これが円の1周が360°の由来になっている。

結果的に、「360」という数値は、1、2、3、4、5、6、8,9、10、12、15、18、20、24,30、36,40,45,60,72、90,120,180、360と言う24個の数値を約数としており、極めて使い勝手が良い便利な数値になっている。

「6」は、縁起の良い数字なのか、縁起の悪い数字なのか

さて、これまでの数字に関する話題の中で頻繁に取り上げてきたように、今回の「6」という数字についても、それが縁起の良い数字なのか、縁起の悪い数字なのか、を調べてみた。

まずは、日本においては、「6」という数字は縁起とは直接は関係付けられていないように思われるが、縁起が良いとされる「亀甲紋」は亀の甲羅のような正六角形をしている。

一方で、中国においては、「6」は縁起の良い数字と認識されている。

その理由について、TLI日本中国語センターのブログ1によれば、以下の通りとなっている。

六((liù))の発音が、「中国語の商売繁盛を意味する「生意興隆(shēng yi xīng long)」の「隆(lóng)」や給料を意味する「祿(lù)」、物事がスムーズに進むというイメージの「流(liú)」などと似ていることから、とされている。また、有名な四字熟語で「六六大顺(liù liù dà shùn)」という言葉があり、これは6が二つも重なって「大いに順調」、「万事うまくいく」という意味になる。「6」はサイコロにある数字の中で一番大きい数字であり、その「6」が出続けること は大変縁起が良い、とされている。

なお、このためもあり、結婚式は6月や6、16日など6がつく日に行われることが多いようだ。

キリスト教においては、「6」は不完全な数、「666」は獣の数字

一方で、聖書においては、神が人類を創造した「7」が聖なる数とされているのに対して、それに1つ足りない数字として、「6」は不完全な数字とされている2,3

また、「666」は、新約聖書の「ヨハネの黙示録」に記述されている1匹の怪物を表現するシンボルである「獣の数字」とされ、「悪魔の数字」ともいわれている。ヨハネの黙示録第15章16~18節には、「ここに知恵が必要である。思慮のある者は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。その数字は人間を指している。そして、その数字は666である。」と記されており、長年にわたって「666」は悪魔や反キリスト教徒など、様々なものと関連付けられてきた。

「666」という数字がどういう意味を有していて、なぜ不吉な数字とされているのかについては、正確なところはよくわかっていないようだが、キリスト教を弾圧した人々4を、神に背いてこの世の平和を乱す「野獣」であるとし、不完全な数である「6」を3つ並べて強調しているのではないか、と考えられているようだ(「暦と占いの科学」(永田 久著)新潮選書 に基づく)。
 
2 一方で、後に述べるように、数学の数字としての「6」は、最小の完全数である。
3 また、ユダヤ教やユダヤ民族を象徴するダビデの星は、2つの正三角形を逆に重ねた「六芒星(ヘキサグラム)」と言われる形をしている。
4ゲマトリア」という占数術は、アルファベットに数字が割り当てられ、その数字から隠された意味を解読するものであるが、皇帝ネロのゲマトリア数が「666」となることから、具体的には皇帝ネロを指しているのではないかと言われているようだ。

ベルフェゴール素数

なお、これに関連して「最も不吉な素数」とされているのが、「1000000000000066600000000000001」という数字で、中央に「666」が位置し、左右を「13」個の「0」に囲まれて、いわゆる「回文素数」(数字を逆にしても同じ素数)となっている。この数字の合計桁数は「31」で、それをひっくり返すと「13」になる。この数字は、7人いる地獄の王子のうちの巧妙な発明や発見の手助けを任されている1人である(7つの大罪における「怠惰」に対応する悪魔の)ベルフェゴールに由来して、「ベルフェゴール素数(Belphegor's Prime」と呼ばれている。

仏教における「6」―六道

六道」というのは、仏教において、衆生がその業の結果として輪廻転生する6種の世界(あるいは境涯)のことを指しており、「天道」、「人間道」、「修羅道」、「畜生道」、「餓鬼道」、「地獄道」の6つがある。

前者の3つを「三善道」、後者の3つを「三悪道」と呼んでいる。生まれ変わり先である六道は、どれも苦しみの世界とされているが、中でも特に苦しむことが多いとされるのが「三悪道」で、「三善道」は比較的苦しみが少ないとされている。

仏教では、亡くなってから49日目までは、魂がたどり着く先が決まっていないと考えられており、49日目までに、不殺生・不偸盗(ふちゅうとう)・不邪婬(ふじゃいん)・不飲酒・不妄語という「五戒」について、亡くなった日を1日目と数えて7日ごとに審判を受ける機会があるとされている。最後に審判の結果がでるのが49日目で、選ばれる場所は、極楽浄土又は六道のうちのどこか、となる。四十九日法要は、家族や親族らが「故人が極楽浄土へ行けますように」と願って行われる大切な法要となっている。

六曜

六曜」は、暦注(暦に記載される日時・方位などの吉凶、その日の運勢等)の一つで、先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口がある。

「六曜」は、本来中国から伝わったものが日本で変化し、江戸時代に今日のような「日の吉凶」を表す占いになったもので、迷信・因習の一種である。仏滅や友引という、仏事と関連のあるように見える言葉が多く使われているが、これは当て字によるもので、仏教との関係はない、とされている。ところが、これが暦に乗ることで、占いが広く生活全般に入り込み、冠婚葬祭等の儀式と結び付けられて、あたかも根拠のあるしきたりであるかの如くに認識されてきている。

そもそも「暦注」については、人々の知識の進歩や社会生活を阻害してしまうので良くない等との理由から、例えば、明治政府も改暦時等に「吉凶付きの暦注は迷信である」として禁止しているが、一般社会においては「六曜」はなくならないできている。

ただし、「六曜」についても、あくまでも非科学的な迷信・因習であるとの位置付けから、これに基づかない行動等に対する非難が、人権を侵害したり、差別的な状況を助長したりしないように、(以前は一般のカレンダーや手帳にも記載されていることが多かったが)最近は六曜を記載しないケースが多くなってきている。

自然現象等にみられる数字の「6」

自然現象等にも、「6」という数字が特別な意味を持っているケースがいくつか観察される。

ハチの巣は六角形がベースのハニカム構造

これについては、以前の研究員の眼「ハニカム構造について-ハチの巣はなぜ六角形なのか?-」(2021.7.16)で報告した。ハチの巣の1つ1つを正面から見た場合に、それが六角形になっているが、これは、「一定の強度を保ちつつ、最も少ない蜜蠟(honey wax)で、できる限り広い巣を作ることができるのは、「正六角形」の場合」ということの理由による。
ハニカム構造

雪の結晶は六角形

皆さんもご存じのように、雪の結晶は(基本的に)六角形になっている5

水の分子(H2O)は、O(酸素)を中心に、2つのH(水素)が104.5°の角度で結合されており、これは正四面体の中心角(中心と各頂点とが構成する角度)の109.5°に近い値となっている。多くの水分子同士がひきつけ合ってつながっていく(水素結合)時に、隣り合う4つの水分子が正四面体を形成していく(下図参照)。さらにこれらの正四面体が複数結合されることで、六角柱が形成されていき、これを平面的に見ると六角形になっていることによる。
水の分子構造
 
5 十二角や十八角や二十四角等の6の倍数になるケースもある。

柱状節理も六角形

柱状節理」というのは、火山から流れ出た溶岩がゆっくり冷え固まって作られる規則正しい柱のような割れ目、のことを指している6。これは溶岩流が冷えて固まるときに、温度が下がって岩石の体積が収縮することでできる角柱状の割れ目7で、その角柱の断面は六角形のことが多くなっている8

この理由としては、(1)先の研究員の眼「ハニカム構造について-ハチの巣はなぜ六角形なのか?-」(2021.7.16)で報告したように、六角形だと隙間なく平面を埋めることができる、(2)収縮する力を最も効率よく逃がしてくれるのが「三つ又の割れ目」であることから、これにより六角形が構成される、ことが挙げられている。
 
6 玄武洞(兵庫県)や東尋坊(福井県)等が有名である。
7 類似の現象として、「マッドクラック(泥割れ)」(泥状の堆積物が乾燥して収縮するときに形成されるひび割れ)がある。これも内部の水が蒸発して体積が収縮する時に亀裂が形成されることによる。
8 四角形、五角形、七角形、八角形等の他の多角形のものもある。
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中村 亮一

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