コラム
2022年11月25日

数字の「8」に関わる各種の話題-「8」は、末広がりを意味して、日本では幸運な数字と見なされているようだが-

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

はじめに

数字の「8」と聞くと、漢字の「八」からイメージされる「末広がり」の意味から、幸運な数字、縁起の良い数字である、と認識している方々も多いものと思われる。「八」の形が「上」(現在)から「下」(未来や将来)へ広がり、これが永久的に発展、繁栄するということを意味している、とされている。

今回は、この数字の「8」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。

数字の「8」は、世界でも幸運な数字と思われているのか

有名なのは、中国で、中国においては「8」は幸運な数字と認識されており、日本以上に、はるかに「8」という数字が好まれている。これは、8の発音が、富む、発展する、等を意味する「発」(ファー)と似ていることによるもの、とされている。2008年の北京オリンピックが8月8日夜の8時8分8秒、に開会したことは有名な話である。車のナンバープレートにおいては「8」が付くものは非常に人気があり、特に「88」等は高額で取引されているようだ。また、電話番号や部屋の番号等でも「8」が付くものの人気が高くなっている。さらに、会社の開業日や建物の竣工式等の各種のイベントは、8の付く日に執り行われたりしている。

米国では、以前の研究員の眼で報告したように、(「8」ではなくて)「7」がラッキーナンバーとされており、これは英国やフランス等でも同様なようである。また、イタリアにおいては、同じく以前の研究員の眼で「13」がラッキーナンバーとされている、と報告した。

他の主要国でも「8」をラッキーナンバーとしている国はあまりみられない。

むしろ、八本の足を持つタコなどは「悪魔の化身」等と呼ばれており、西洋では「8」は不吉な数と認識している人も多いようである。

漢字の「八」は、「全ての側面」を意味している

漢字の「八」を使用する慣用表現(とその意味合い)には、以下のようなものがある。

八方美人(どこから見ても欠点のない美人、転じて、誰に対しても如才なく振る舞う人)。
八方塞がり(どの方角・方面にも障りがあって何もできない状態)
八つ当たり(直接関係のない人を含めて、あらゆる方面に怒りをぶつけること)
嘘八百(数えきれない程のたくさんの嘘)
口八丁手八丁(「八丁」は八つの道具という意味で、それらが使いこなせるほど、いろいろなことが上手であること)
四方八方(あらゆる方面)

これらの表現で使用されている「八」は「あらゆる方向から」、「全ての面から」という意味合いを有している。

古代日本においては「八」は聖数

古代においては、「八」は数が大きいことを指しており、以下の表現で使用されている。

八島、八州(日本の呼称の1つ、多くの島からなる国)
八雲(幾重にも重なり合った雲)
八重桜(花弁が何枚も重なっている桜の総称)
八千代(非常に永い年代)

昔は、1から順に数えていったときに、具体的に「8」以上を数える機会は限られていたことから、これが「たくさん」とか「最大」というような意味合いを有しており、縁起の良い数でもあり、さらにこれが「聖数」と認識されていたようである。

仏教における数字の「8」

お釈迦さまが亡くなった時、その周辺には8つの国があったため、残された弟子たちは彼の遺骨(仏舎利)を8つに分け、各国の王様にそれぞれ贈ったとされ、これにより、仏の教えが世界全体へ広がっていったとされている。このため、仏教において「8」という数字は重要視されている。

仏教において、数字の「8」が現れてくるものとしては、例えば以下のものが挙げられる。

八相成道」(はっそうじょうどう)は、釈迦の生涯における八つの主要な出来事のことで、「八相」は、降兜率、托胎、出胎、出家、降魔、成道、転法輪、入滅の八つの段階や局面を指している。

八正道」(はっしょうどう)は、仏教において涅槃に至るための8つの修行法である、正見、正思惟、正語、正業、正命、正精進、正念、正定のことを指している。

四苦八苦」は、仏教における苦の分類で、生苦(生まれることに起因する苦しみ)、老苦(老いる苦しみ)、病苦(病の苦しみ)、死苦(死ぬ苦しみ)という根本的な「四苦」に加えて、愛別離苦(愛するものととの別れによる苦しみ)、怨憎会苦(恨み憎しんでいるものに会わなければならない苦しみ)、求不得苦(求めるものが思うように得られない苦しみ)、五蘊盛苦(五蘊(人間の肉体と精神)が思い通りにならない苦しみ)の四苦を加えたものを指している。

なお、仏舎利塔(仏舎利(釈迦の遺骨)を納めるとされる仏塔)は、初期は円形だったが、木造になるにつれ円形に近くてより作りやすい、八角塔に変わって行ったと言われている(なお、さらに六角や現在主流の四角になっていったようだ)。 

キリスト教における数字の「8」

キリスト教においては、「8」はイエス・キリストの再生と復活を表す数字と考えられている。

旧約聖書の創世記には、神は6日間で天地を創造し、7日目に休んだ、と記述されており、キリスト教において「7」はこの世における完全を表している。「8」はこれを超えるものとして、神の領域を表しており、復活、新しい創造を象徴している、とされる。

洗礼は、生まれながらに有している原罪を浄めることであり、キリスト教を信じるものとして生まれ変わることを意味している。このため、洗礼堂は八角形になっている。

因みに、旧約聖書の創世記で、ノアの方舟に乗って洪水を免れた人間の数は8人(ノアとその妻、3人の息子とそれぞれの妻)となっている。

数学における数字としての「8」

数学における数字としての「8」といわれると、個人的には「2の立方数 23」であることを思い浮かべる。このため、以下で述べるトーナメント方式の競技における「ベスト8」というような言い方ができることになる。さらには、「正八面体」の存在が思い浮かぶことになる。これもまさに正四面体を2つ重ね合わせたものになっている。

なお、「8」という数字もいくつかの性質を有しているが、1つだけ挙げると、「2つの奇数の平方数の差は、必ず8の倍数になる」というものがある。これは、以下の算式で示される。

(2m-1)2-(2n-1)2=4{m(m-1)-n(n-1)}

ここで、{  }内は、連続する整数の積(偶数)の差なので偶数、である。

スポーツの入賞はなぜ8位までなのか

オリンピックや世界選手権を初めとして、各種のスポーツの競技会においては、8位までが入賞とされることが多い。この理由については、陸上や水泳のトラック短距離種目が8人(レーン)で競われるから、と説明されるようである。即ち、決勝の8人に残った「ファイナリスト」としての栄誉を示すものとして、8位までが入賞ということになっている。このルールは、決勝が8人で行われる短距離等だけでなく、さらに多くの人数で決勝が争われる中距離や長距離の「トラック競技」、さらには走り幅跳びや走り高跳び、棒高跳び、三段跳び等の「跳躍」や砲丸投、円盤投、ハンマー投、やり投等の「投てき」の「フィールド競技」にも適用されている。

なお、テニスや卓球等のトーナメント形式の競技の場合には、3位までが表彰されることが多いようにも思われるが、ベスト8に残った競技者もクォーターファイナリスト (Quarterfinalist)と呼ばれて、一定の名誉が与えられている。

トラックは何故8レーンなのか

それでは、トラックはなぜ8レーンなのか、トラックが10レーンだったら、10位までが入賞になっていたのか、ということになる。残念ながら、これについては明確な答えがわからなかった。もしご存じの方がいらっしゃったら、是非ご教示いただきたいと思っている。

個人的にはおそらく、トーナメント方式におけるベスト8との関係もあるのではないかと思っている。その意味では、鶏が先か卵が先か、というような話になってしまうが、トラック方式とトーナメント方式の両方を考えた場合に、「8」という数字は収まりが良かったということなのではないだろうか。

因みに、トラックは一周400mとなっているが、これはあくまでも第1レーンのケースで、第8レーンでは(競技場にもよるが)450mを超えるような距離になっている。これが例えば第10レーンであれば470m程度になってしまう。なお、競技場の広さに関しては、国際的なルールもあり、建設のための資金面での制約等」もある。

また、競技自体は8つのレーンで行われるものの、最近の競技場では9レーンまで設置しているところが多くなっているようだ。

これは、中・長距離走の場合、第1レーンが有利になるため、第1レーンの使用頻度が高くなることに関係している。現在の競技場のトラックは「全天候舗装」と呼ばれ、特殊なゴムの素材で作られているが、中・長距離走で第1レーンが良く使用されると、第1レーンの舗装材がより摩耗してしまうことになるため、と言われている。

よって短距離では、第1レーンを避け、第2~第9レーンを使用している。なお、準決勝で8位通過が同タイムで2人いたような場合には、2人とも決勝へ進出し、9名で決勝が行われることになる1

現在、オリンピックや世界選手権を開催するには、9レーンが必要とされ、旧国立競技場は8レーンだったが、新国立競技場は9レーンとなっている。
 
1 さらに同タイムの競技者がいた場合や救済者が出たような場合で、競技場のレーン数を超えるような場合の取扱いについては、必ずしも統一的な取扱いがあるわけではなく、抽選で絞ったり、さらには決勝を2レースに分けて行うようなケースもあるようだ。

八卦とは

八卦(はっけ)」と言う言葉は、「当たるも八卦当たらぬも八卦」というような言い回しで使用されている。これは、「当っても当らなくても、それが占いである」といった意味合いで使用されている。

ここでの「八卦」というのは、古代中国から伝わる易における8つの基本図像、を指しており、陰と陽とを示す二種の爻(こう)を三つ組み合わせた、乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤からなる。卦(け)の形は様々な事物事象を表しているとされ、方位などに当てて運勢や方位の吉凶を占うことが多いため、「占い」を意味しているように認識されてきている。

ミツバチの飛行 8の字ダンス

ミツバチがアラビア数字の「8」の通りに飛行活動する行為を「パルス」という。ミツバチは仲間の蜂たちに、新しく見付けた餌(花の蜜)のある場所を教えるために、巣箱の中で「8の字ダンス」と云われる特殊な動きをする、と言われている。

8月8日は何の日

8月8日は、その漢字の形や読み方等から、多くの記念日に指定されており、日本記念日協会認定の記念日が1年中で3番目に多い日2となっているようだ。具体的には、例えば以下のような記念日となっている。

「笑いの日」、「スマイルの日」
「髭の日」、「屋根の日」
「パパの日」、「おばあさんの日」、「親孝行の日」
「タコの日」、「白玉の日」、「そろばんの日」、「パパイヤの日」、「ひょうたんの日」

また、カナダに本部がある「IFAW(国際動物福祉基金)」は、2002年に、8月8日を「世界猫の日(World Cat Day又はInternational Cat Day)」に制定しているが、その由来等は明確ではないようだ(因みに、日本においては、その鳴き声の「ニャンニャンニャン」から、2月22日が「猫の日」になっている3)。
 
2 因みに、最も多いのは10月10日、次が11月11日、となっているとのことである(ただし、今後も新たな記念日が制定される可能性があるので、順位は変動的)。
3 世界各国で「猫の日」が制定されているが、その日は、欧州の多くの国では「2月17日」、米国では「10月29日」と異なっているようだ。

最後に

今回は数字の「8」について、それが現れてくる例やその理由等について、報告してきた。

「8」という数字は、日本や中国においては、ラッキーナンバーとされているが、西洋においては必ずしもそうではなく、むしろ不吉なナンバーと捉える人々もいるようだ。さらには、日本においても、以前の研究員の眼「数字の「7」に関わる各種の話題-「7」は何で人気が高い特別な数字として考えられているのか?-」(2020.6.1)で報告したように、西洋化の影響等を受けて、数字の「7」をラッキーセブンとして、よりラッキーなナンバーとして意識しているケースが、若い世代を中心に多いように思われる。

数字の「8」に対するイメージは、人それぞれであることを認識しておくことが適当かもしれない。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

中村 亮一

研究・専門分野

(2022年11月25日「研究員の眼」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【数字の「8」に関わる各種の話題-「8」は、末広がりを意味して、日本では幸運な数字と見なされているようだが-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

数字の「8」に関わる各種の話題-「8」は、末広がりを意味して、日本では幸運な数字と見なされているようだが-のレポート Topへ