コラム
2022年12月22日

数字の「4」に関わる各種の話題-日本では不吉な数字と思われているが、実は「安定感のある調和のとれた数字」である-

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はじめに

数字の「4」については、恐らく多くの方々が不吉な数字だとの印象を持たれているのではないかとか思われる。ところが、「4」という数字は、数字自体としては極めて「安定感のある調和のとれた数字」であると思われ、そのため数多くの場面で現れてくる。

今回は、この数字の「4」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。

数字の「4」は、日本では不吉な数字と思われている

皆様もご存じのように、日本においては、数字の「4」は「死」という言葉と同じ音読みになることから、死を連想させるということで、昔から不吉な数字と考えられてきている。

「昔」とはいっても、古来の日本や神道には「四」を忌む考え方はなかったようである。

例えば、出雲大社の参拝方法は「2礼4拍手1礼」と言われており、2度拝礼をして、4回柏手を打ち、最後に1度拝礼する、ということになっている。ただし、平安時代には「四」を「し」と読むことを忌避し、「よ」と呼ばれていたようである。

また、重箱は、現在では三段重が一般的になっているが、正式には四段重が基本で、地方や家庭によっては五段重にするところもあるとされている。この時、上から、「一の重」、「二の重」、「三の重」、「与の重(よのじゅう)」と呼び、「四」は「死」を連想させることからお正月には縁起が悪いという理由で、「四の重」とは言わずに「与の重」と呼んでいる。

さらには、「四年(よねん)」、「四日(よっか)、「四度(よんど)」、「四回(よんかい)」、「四類(よんるい)」と言った呼び方がされる。一方で、「四方(しほう)」、「四季(しき)」、「四球(しきゅう)」等、引き続き「し」の読み方をされる場合もある。

なお、「四」については「七(しち)」との聞き違いを防ぐために、「よん」と呼ばれることも多くなっている。

日本で「4」が忌み数と見なされている事例

日本では、「4」が忌み数と見なされていることから、例えば、マンションの部屋番号等では「4」の付く部屋が飛ばされている場合もある。特に、病院の部屋番号については「4」とともに、「苦」に通じる「9」が回避されている。ただし、4階については、あまり問題にされておらず、4階がない建物や、以前の研究員の眼「数字の「13」に関わる各種の話題-「13」は西洋では忌み数として嫌われているようだが-」(2022.6.13)で紹介したような、欧米諸国において13階を特別視したケースを4階に置き換えて、(1)そもそも4階がない、(2)4階に別の名前を付与、(3)高層ビルの4階は機械室等に利用、(4)ホテルの4階は従業員用の施設として利用、ということになっているケースは珍しいものと思われる。ただし、病院の4階には、集中治療室や手術室を配置していないケースは多いようである。

また、車のナンバープレートにおいて、下2桁の「42」と「49」については、それぞれ「死に」、「死苦(あるいは轢く)」を連想させるから、との理由で、私たちが普段乗っている一般的な車のナンバープレートには使えない1。兵庫県の病院行のバスのナンバープレートが「42」で始まっていたことから、物議を醸して、番号変更が行われたというような事例もある。
 
1 なお、米軍基地関係者が利用しているような「日本国籍を有しない者が所有する自家用自動車」については、「13」も使用されない。

外国でも「4」は忌み数なのか―中国・韓国等

中国や韓国においても、日本と同様に「4」という数字は、「si」と「死」の発音と同じになるため、不吉な数字と見なされている。

さらに、「14」が「実死(確かに死ぬ)」に、「24」が「易死(死にやすい)」に通じるため避けられている。中国人の数字の「4」に対する忌避感は、日本人のそれを超えているケースもあるようで、部屋番号にとどまらず、先ほど述べたような「病院等の建物の4階がない」というケースも珍しくないようだ。一方で、日本とは異なり、「9」という数字は、漢字の「久」と同じ音読みで永久を連想できるので、吉の数字と言われている。

台湾においても同様で、「4」は縁起の良くない数であるのに対して、「9」は縁起のいい数とされており、旧暦9月9日は敬老の日となっている。

韓国でも、病院等には4階がなかったり、4階がある建物でも、エレベーターのボタンでは「F(four)」が使用されていることもある。また、仁川国際空港には4番、44番ゲートがない。さらに、韓国軍では4の付く部隊番号は欠番となっている。

なお、香港や中国系移民が多いシンガポールやマレーシアといった国・地域でも「4」は、嫌われている。

キリスト教では「4」はラッキーナンバー、四福音書

一方で、ドイツ等の欧州諸国においては、「4」は十字架の神聖な十文字を表していることから、ラッキーナンバーとなっているようだ。

また、キリスト教の「福音書」は、4つ(マタイによる福音書、マルコによる福音書、ルカによる福音書、ヨハネによる福音書)あり、世界の四方にイエスの福音を伝える書となっている。

漢数字の「一」「二」「三」の次は「亖」ではなくて、「四」

漢数字では、「一」「二」「三」の次は「四」になる2。それまでの漢数字が「1」、「2」、「3」を横線の数で表していたのに、「4」については、4本の横棒で表される漢数字ではなくて、別の漢字「四」となっている。これは何故だろう、と疑問に思われる方もいらっしゃるのではないだろうか。

「一」「二」「三」は、絵としては描きにくい物事の状態を点や線の組み合わせで表した文字で「指事文字」と呼ばれている。実は「4」についても、「亖」という指事文字があって、「し」と音読みされる(漢字辞典等にも掲載されている)。ところが、恐らく4本の線は読みづらくて視覚的に望ましくない、ということもあって、別の漢字である「四」がこれに取って代わる形になっている。

それでは「四」という数字はどこから来ているのだろうか。

これについては、甲骨文字3や金文4では、「4本の横線」で数の「4」を表していたが、篆文(てんぶん)5では、「口の中に歯・舌の見える」象形として、「息」の意味を表していたものが、転用されて(「仮借」と呼ばれる、同じ読みの部分に「当て字」として使用)、「4」を意味する「四」という漢字が成り立ったとのことである6
 
2 漢数字には、通常使用される単純な字形の「一」「二」「三」等の小字(しょうじ)と、「壱」「弐」「参」等の大字(だいじ)がある。小字は、字画が少なく改竄のおそれがあるため、法的文書や会計書類等の重要な数字の表記では大字が用いられる。
3 古代中国で行われた占卜(せんぼく)(=占い)を、当時の文字でカメの甲羅やウシの肩甲骨の上に刻みをつけて記録したもので、漢字の原初形態である。
4 青銅器の表面に鋳込まれた、あるいは刻まれた文字(「金」は青銅の意味)。年代的には甲骨文字の後にあたる。
5 一般的には周末の金文を起源として、戦国時代に発達して整理され、公式書体とされた小篆とそれに関係する書体。
6 なお、漢数字については「0(又は零)」を除いて、甲骨文字の時から使用されているが、「四」と「万」の字形が変わっているとのことである。

ローマ数字でも「I」「II」「III」の次は「IIII」ではなくて、「IV」

ローマ数字でも、「I」「II」「III」の次は「IIII」ではなくて、「IV」となっている。さらには、「9」についても、「VIIII」ではなくて、IX」となっている。これを「減算則(小さい数を大きい数の左に書くことで、右の数字から左の数字を減じた数字を表す)」と呼んでいる。減算則を使用せずに、「IIII」や「VIIII」を使用することも認められているが、現在では通常は減算則を使用した表記が使用されている。

ローマ数字についても、そもそもは、古代ローマ人が羊の数を数えるために木の棒に刻みを入れたことに由来しているとされ、「4」については「IIII」が使用されていた。また、この時に「5」については、「IIIIV」と表されていたようだ。減算則には様々な異表記があり、減算則が正確にいつ導入されたのかはよくわからないようだが、14世紀には「IV」が使用される例も見られていたようだ。

時計のローマ数字では、「4」は「IIII」と表示されているケースが多い

ただし、こうした経緯もある中で、時計の文字盤の「4」を表すローマ数字では「IIII」と表示されているケースが多い7

有名ブランドの時計やヴィンテージやアンティークの時計の文字盤を見てみると、確かに「IIII」を使用しているケースが多い(個人的には、ローマ数字モデルを使用しているケースでは殆どといっていいほど、との印象を有している)。一方で、全ての時計のローマ数字の文字盤が、「IIII」を使っているわけではない。有名なのは、ロンドンのウェストミンスター宮殿(国会議事堂)の時計台ビッグ・ベン(Big Ben)で、これはヴィクトリア朝時代の1859年に作られたものだが、ローマ数字の減算則に基づいた「Ⅳ」や「IX」が使用されている。

「IIII」が使用されている理由としては、諸説あるようで、セイコーミュージアム銀座のHP8によれば、以下の説が挙げられている。

・14世紀後半、フランスのシャルル5世が「自分の称号5から1を引くIVは縁起が悪い」と、時計師に「IV」を「IIII」に変えさせたという説。

・イギリスで14世紀末に作られた最も初期のウェルズ大聖堂の時計にIIIIが使われ、その後、伝統となったという説。

・IVでは6のVIと見分けにくく、左右対称位置にあるVIIIとバランスもいいと考えられたという説。

・ヨーロッパ中世の17世紀頃までは、ローマ数字の4の表記はIVよりもIIIIが一般的だったという説。

また、このHPには「事実、17世紀頃まで建設された有名な機械式塔時計にはIIIIの表記が多く見られます。放射状の文字板のデザインにはIIIIの表記がバランスがよいため、それが業界の伝統となり、その後のクロックやウオッチにも残った、という説が有力と言われています。」と記載されている。

この「バランスの良さ」というのは、(1)(上記の)「IIII」にすることで、左右対称位置にある「VIII」と文字数のバランスが取れる、(2)文字盤を大きく4時間ごとに3つの領域に分けると、最初は「I」のみで構成、次は「V」を中心に構成、最後は「X」を中心に構成となり、バランスがよい、という意味合いがあるようだ。

なお、これ以外にも、例えば以下の説がある。

・ローマ神話の主神(最高神)であるユピテル(英語読みではジュピター)のラテン語の古典綴りがIVPITERとなることから、この最初の2文字IVを使うことで神への冒涜となることを避けるため。

・ある有名なローマの時計製造者が「IIII」を使用したことで、他の製造者もそれに倣った。

・ルイ14世が、文字盤に「IV」を用いることを禁じた。

どうも、どの説が絶対的に正しいといえるものでもなく、これらの諸説がそれぞれに関わりあう形で、現在の状況になっているようだ。時計という精密な機械に、このようにミステリアスな要素が残されているというのは、何となく不思議な感じがするのではないか。
 
7 数字の「9」についても、「IX」ではなくて、「VIIII」と表記しているケースもあるが、こちらは限られている。
8 https://museum.seiko.co.jp/knowledge/trivia02/
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中村 亮一

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