NEW
コラム
2025年06月02日

日韓カップルの増加は少子化に歯止めをかけるか?

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

文字サイズ

韓国の出生率が改善された理由は?

2024年の韓国の出生率が改善された理由の一つは、2012年以降減少していた婚姻件数が増加したことだ。韓国における婚姻件数は、1996年に434,911件でピークに達した以降、減少傾向に変わり、新型コロナウイルスの感染が拡大された2021年には192,507件で初めて20万件を下回った。さらに、2022年の婚姻件数は191,690件まで減少し、19万人を切ることが懸念されたが、幸いに2023年の婚姻件数は2022年より1,967件増加した。
図表1韓国における婚姻件数の推移
特に、新型コロナウイルスの感染拡大以降、大きく減少していた外国人との婚姻件数が2022年以降再び増加し、2023年にはコロナ禍下でボトムであった2021年と比べて約3万件も増加した。これは、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い、外国人の韓国入国時の入国制限が緩和されたことが一因であると考えられる。
図表2韓国における外国人との婚姻件数の推移

韓国人男性と日本人女性の婚姻件数が急増

特に、注目したいのは韓国人男性と日本人女性の婚姻件数が最近大きく増加していることだ。2024年の韓国人男性と外国人女性の婚姻件数は15,624件で、前年比6.2%増加したが、特に韓国人男性と日本人女性の婚姻件数は1,176件と、1年前と比べて40%も増加した。偶然のことかも知れないが、日韓カップルの増減は日韓関係の影響を受けているように見える。

実際、日韓関係が良くなかった文在寅(ムン・ゼイン)政権時代の2019年の韓国人男性と日本人女性の婚姻件数は903件で2018年の987件と比べて9.3%も減少した。同時期の韓国人男性と外国人女性の婚姻件数が6.5%増加したこととは反対の結果である。一方、新型コロナウイルス感染症が収束し、日韓関係が改善された尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権時代の2024年には、韓国人男性と日本人女性の婚姻件数が大きく増加した(韓国人女性と日本人男性の婚姻件数は少ない。)
図表3 韓国における韓国人の国籍別婚姻件数
 では、日本のデータはどうだろうか。日本政府の「人口動態調査・人口動態統計」によると、夫が日本人で妻が韓国・朝鮮人である婚姻件数は、1990年の8,940件をピークに減少傾向にある。また、妻が日本人で夫が韓国・朝鮮人である婚姻件数も、1995年の2,842件をピークに減少へと転じている。韓国とは対照的に、日本においては政治的な影響をあまり受けていない様子がうかがえる。
図表4 日本における日本人と韓国人の婚姻件数

韓国人男性と日本人女性の婚姻件数が増えた理由は?

このようにここ10年でみた場合、韓国人男性と日本人女性の婚姻件数のみが増加していることが際立っているが、なぜこのような現象が生じているのだろうか。この点については、今後さらに詳細な分析が必要だが、日本のアニメなどのコンテンツや韓国ドラマ・K-POPの影響でお互いに親しみを感じたり、若者を中心に相互の行き来が増え相互理解が深まったことが要因のひとつとなっていることについては、まず疑いの余地はないだろう。

6月3日に行われる韓国の大統領選挙により韓国では新しい大統領が誕生することとなる。2025年は日韓国交正常化60周年にあたる年だ。この節目の年に新しい大統領には、日韓関係を重視し、両国の国民が自由に交流できる環境を維持するための外交政策を推進していただきたいと考える。

少子高齢化が進む日韓両国において、両国の国民が活発に交流することは、経済成長や出生率の改善などさまざまな面でプラスの効果をもたらす可能性が高い。友好的な外交政策を通じて、日韓両国が共に直面する社会的・経済的課題に対処し、互いに理解と協力を深めることは、両国の未来にとって不可欠であると言えるだろう。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年06月02日「研究員の眼」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【日韓カップルの増加は少子化に歯止めをかけるか?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

日韓カップルの増加は少子化に歯止めをかけるか?のレポート Topへ