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韓国の出生率が0.72で、8年連続過去最低を更新-若者の意識を的確に把握し有効な対策の実施を-
生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
韓国の出生率が8年連続過去最低を更新
また、その内訳をみると、ソウル市を含む大都市の出生率低下が続いている。韓国の4大都市の出生率はソウル市が0.55、釜山市が0.66、仁川市が0.69、大邱市が0.70で下位1位から4位を占めた。2022年と比べて出生率が上昇したのは忠清北道のみで、2022年には出生率が1を超えた世宗市の出生率もついに1を下回ることになった。特に、ソウル市の中でも鍾路区(チョンノク、0.40)、広津区(クァンジンク、0.45)、江北区(カンブック、0.48)、麻浦区(マポク、0.48)の出生率は0.5を下回った。
首都圏に人口や就業者が集中し、若者の意識が変化
行政安全部が発表した調査結果によると、2023年12月現在、首都圏の住民登録人口は2,601万人(ソウル市939万人、京畿道が1,363万人、仁川市300万人)で、全体の50.7%にのぼることが分かった。また、同時点における首都圏の就業者数は1,448万人で全就業者の51.6%を占めた。良質の仕事を求めて首都圏に集まった若者は、激しい競争を生き残るために結婚と出産をあきらめた可能性が高いだろう。
若者の意識変化に注目を
日本は、韓国に比べると若者の就職率が高く、子育てに対する経済的負担が大きくないが、最近、物価が上昇することにより実質賃金が減少している。実質賃金の減少は子育て世帯の経済的負担を増やし、子どもを産むことをためらわせる要因になるだろう。政府は子育て世帯の経済的負担が増えないように財政政策だけではなく、実質賃金の減少を防ぐための対策を講じる必要がある。また、ビッグデータなどを用いて、なぜ若者の結婚や出産に関する意識が変化したのかを徹底的に分析し、対策を講じることが望ましい。将来の労働力不足の解消や社会保障制度の持続可能性を高めるために少子化対策は待ったなしではあるが、若者の意識を的確に把握し有効な対策を考えないと、この流れを止めることは困難ではないだろうか。
(2024年03月04日「研究員の眼」)
生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
金 明中 (きむ みょんじゅん)
研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計
03-3512-1825
- プロフィール
【職歴】
独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職
・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
・2021年~ 専修大学非常勤講師
・2021年~ 日本大学非常勤講師
・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
・2024年~ 関東学院大学非常勤講師
・2019年 労働政策研究会議準備委員会準備委員
東アジア経済経営学会理事
・2021年 第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員
【加入団体等】
・日本経済学会
・日本労務学会
・社会政策学会
・日本労使関係研究協会
・東アジア経済経営学会
・現代韓国朝鮮学会
・韓国人事管理学会
・博士(慶應義塾大学、商学)
金 明中のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2024/11/21 | なぜ日本の出生率は韓国より高いだろうか | 金 明中 | 研究員の眼 |
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