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- 米でのGoogle広告訴訟判決-オープンウェブ・ディスプレイ広告における独占認定
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2025年05月14日
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■要旨
Googleはディスプレイ広告向けの製品として、(1)媒体社の広告枠を公告取引所に提供する媒体社アドサーバーであるDFP(Double Crick for Publishers)と、(2)媒体社の広告枠を入札にかける広告取引所であるAdx、および(3)広告主向けの入札を行うサービスとしてAdWords等の製品を提供している。
米国司法省等がディスプレイ広告に関連する市場におけるGoogleの行為がシャーマン法(競争法)違反であるとして連邦地裁に訴えた訴訟の判決が2025年4月に下された。
判決を要約すると、(1)のDFPはオープンウェブ・ディスプレイ広告向けの媒体社アドサーバー市場における独占力を意図的に獲得・維持している。また(2)の同じくオープンウェブ・ディスプレイ広告向けの広告取引所であるAdxも市場における独占力を意図的に獲得・維持しているとした。ただし、(3)のAdWordsについては、オープンウェブ・ディスプレイ広告向けの広告主向けアドネットワーク市場は認識できず、したがって独占力を有しないとした。
これら独占は、大量の広告主を抱えるAdWordsの入札をAdxに限定し、かつ媒体社が販売枠をAdWordsの広告主に販売するには、DFPを利用してAdxへ入札リクエストを行わなければならない仕組みであることから生じた。
DFPには9割という高シェアと高い参入障壁が存在し、一方でAdxは反競争的な手数料を徴収していることから、前者はオープンウェブ・ディスプレイ広告向けの媒体社アドサーバー市場での独占を、後者はオープンウェブ・ディスプレイ広告向けの広告取引所での独占を裁判所は認めた。
加えて、オープンウェブ・ディスプレイ広告向けの広告の入札にあたっては、Adxが最初に入札・落札できるファースト・ルック、Adxが他の広告取引所が入札した後に、入札状況を把握したうえで最高入札額に1セント足した額で落札できるラストルックといった反競争的な手法により独占状態を維持していた。
これらを正当化する理由はないことから、判決ではGoogle敗訴の判決が下された。救済方法はAdxおよびDFPの譲渡を含めて、今後、協議・審査されることとなる。
■目次
1――はじめに
2――前提とする事実
1|ディスプレイ広告発展の経緯
2|リアルタイム入札
3|2種のディスプレイ広告
4|コメント
3――Googleのアドテク事業の拡大
1|DFPの買収
2|ウォーターフォール方式
3|ヘッダー入札
4|統一価格ルール
5|コメント
4――裁判所の判断枠組み
5――裁判所の判断-関連市場
1|争点
2|関連市場の定義
3|製品市場-媒体社アドサーバー
4|製品市場-広告取引所市場
5|製品市場-広告主アドネットワーク市場
6|地理的市場
7|コメント
6――裁判所の判断-独占力
1|判断の枠組み
2|OD媒体社アドサーバー
3|OD広告取引所
4|コメント
7――裁判所の判断-独占力の意図的な獲得又は維持
1|総論
2|DFP買収
3|DFPとAdxの連携
4|反競争的行為による独占力の強化
5|コメント
8――裁判所の判断-Google側の正当化事由等
1|Googleの主張―取引拒絶にかかる免責
2|Googleの主張―競争促進的な正当性
3|総論
4|コメント
9――おわりに
Googleはディスプレイ広告向けの製品として、(1)媒体社の広告枠を公告取引所に提供する媒体社アドサーバーであるDFP(Double Crick for Publishers)と、(2)媒体社の広告枠を入札にかける広告取引所であるAdx、および(3)広告主向けの入札を行うサービスとしてAdWords等の製品を提供している。
米国司法省等がディスプレイ広告に関連する市場におけるGoogleの行為がシャーマン法(競争法)違反であるとして連邦地裁に訴えた訴訟の判決が2025年4月に下された。
判決を要約すると、(1)のDFPはオープンウェブ・ディスプレイ広告向けの媒体社アドサーバー市場における独占力を意図的に獲得・維持している。また(2)の同じくオープンウェブ・ディスプレイ広告向けの広告取引所であるAdxも市場における独占力を意図的に獲得・維持しているとした。ただし、(3)のAdWordsについては、オープンウェブ・ディスプレイ広告向けの広告主向けアドネットワーク市場は認識できず、したがって独占力を有しないとした。
これら独占は、大量の広告主を抱えるAdWordsの入札をAdxに限定し、かつ媒体社が販売枠をAdWordsの広告主に販売するには、DFPを利用してAdxへ入札リクエストを行わなければならない仕組みであることから生じた。
DFPには9割という高シェアと高い参入障壁が存在し、一方でAdxは反競争的な手数料を徴収していることから、前者はオープンウェブ・ディスプレイ広告向けの媒体社アドサーバー市場での独占を、後者はオープンウェブ・ディスプレイ広告向けの広告取引所での独占を裁判所は認めた。
加えて、オープンウェブ・ディスプレイ広告向けの広告の入札にあたっては、Adxが最初に入札・落札できるファースト・ルック、Adxが他の広告取引所が入札した後に、入札状況を把握したうえで最高入札額に1セント足した額で落札できるラストルックといった反競争的な手法により独占状態を維持していた。
これらを正当化する理由はないことから、判決ではGoogle敗訴の判決が下された。救済方法はAdxおよびDFPの譲渡を含めて、今後、協議・審査されることとなる。
■目次
1――はじめに
2――前提とする事実
1|ディスプレイ広告発展の経緯
2|リアルタイム入札
3|2種のディスプレイ広告
4|コメント
3――Googleのアドテク事業の拡大
1|DFPの買収
2|ウォーターフォール方式
3|ヘッダー入札
4|統一価格ルール
5|コメント
4――裁判所の判断枠組み
5――裁判所の判断-関連市場
1|争点
2|関連市場の定義
3|製品市場-媒体社アドサーバー
4|製品市場-広告取引所市場
5|製品市場-広告主アドネットワーク市場
6|地理的市場
7|コメント
6――裁判所の判断-独占力
1|判断の枠組み
2|OD媒体社アドサーバー
3|OD広告取引所
4|コメント
7――裁判所の判断-独占力の意図的な獲得又は維持
1|総論
2|DFP買収
3|DFPとAdxの連携
4|反競争的行為による独占力の強化
5|コメント
8――裁判所の判断-Google側の正当化事由等
1|Googleの主張―取引拒絶にかかる免責
2|Googleの主張―競争促進的な正当性
3|総論
4|コメント
9――おわりに
(2025年05月14日「基礎研レポート」)
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03-3512-1866
経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
松澤 登のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/05/14 | 米でのGoogle広告訴訟判決-オープンウェブ・ディスプレイ広告における独占認定 | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/05/09 | Google等を情プラ法で指定-SNS上の権利侵害投稿に関する削除要請への対応 | 松澤 登 | 研究員の眼 |
2025/05/02 | ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? | 松澤 登 | 基礎研レポート |
2025/04/28 | 欧州委、AppleとMetaに制裁金-Digital Market Act違反で | 松澤 登 | 研究員の眼 |
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【米でのGoogle広告訴訟判決-オープンウェブ・ディスプレイ広告における独占認定】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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