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コラム
2025年05月09日
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法により何が変わったかを要約すると以下の通りである。
自身に対する誹謗中傷やプライバシー侵害に該当するSNS投稿がなされた場合においては、法的手段をとる前にまず、SNS事業者に対して当該投稿の削除を求めるのが通例である。ところが、法改正前には、SNS事業者は申出に対し、画一的・形式的な対応をするにとどまることも多く、投稿削除が困難であるという問題があった。
このように画一的・形式的な対応にとどまってしまうのは、日々大量の投稿がなされるSNS事業者の人的資源等の不足があることに加え、SNSといえども表現の自由にかかわる部分もあり、確証がないままに投稿削除をすることに躊躇を感じる部分があったとも考えられる。
法改正により大きく変わったのは、SNS事業者のうち、上記で指定された事業者(=提供者)にあっては、その保有するプラットフォーム上で権利侵害を受けたとの被侵害者から申し出に対しては、義務として調査を行い(法23条)、自社の公表した送信防止措置基準(=削除基準)に基づいて、送信防止措置(=削除措置)を講じるもの(法26条)とされたことである。
すなわち、自社が公表した送信防止措置基準に該当すると判断される場合には、提供者は送信防止措置を行えることが法によって明確化されたことにより、時間を要することなく提供者における対応が可能となった。この点、法25条1項、規則16条において、申出者に対して申出日から7日以内に、(1)送信防止措置をとった場合はその旨、(2)送信防止措置をとらなかった場合にはその旨および理由を通知しなければならないとされている。
法については上記基礎研レターを参照いただくとして、以下では、規則3で定められた主な事項について触れておきたい。
(1) 指定される提供者の要件:提供者の指定要件として、1年間の算定期間のなかで、1月間の平均利用者数1000万人以上かつ1月間の平均発信者数200万人以上であることとされている(規則8条)。なお、行政に対する報告義務を負うのは、1月間の平均利用者数900万人以上かつ1月間の平均発信者数180万人以上とされている(規則9条)
(2) 被侵害者からの申出方法:侵害を受けた者からの申出方法はインターネットにより(法22条2項)、日本語で申出できるものとされ(規則13条1項)、申出方法の公表もインターネットによらなければならない(同条2項)。
(3) 侵害情報調査専門員:侵害の有無について調査する専門員はSNSサービスごとに1名選任する(規則14条)こととされている。なお、総務省が策定したガイドライン4では、専門調査員は弁護士等の法律専門家、日本の風俗・社会問題に十分な知識経験を有する者を選任すべきものとしている(ガイドラインII-2)。
(4) 送信防止措置の実施状況の公表:年度単位で年度経過後2カ月以内にインターネット経由で公表することとされた(規則18条)。
法施行により、送信防止措置が迅速になされることが期待される。他方で、たとえば各提供者が定める送信防止措置基準が十分に具体的でないときは、法が実効性を欠くことも想定される。このあたり、どのような人物が侵害情報調査専門員に選任されるかによる部分も多いと考えられる。送信防止措置の実施状況も公表されるため、今後、送信停止措置の実施状況や対応の透明性が確保されるかが重要な論点となる。引き続き注視が必要である。
1 正式名称は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」。2024年通常国会で改正された。
2 基礎研レター「情報通信プラットフォーム対処法-ネット上の誹謗中傷への対応」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=79202?site=nli 参照。
3 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律施行規則 https://laws.e-gov.go.jp/law/504M60000008039 参照。
4 https://www.soumu.go.jp/main_content/001001530.pdf 参照。
自身に対する誹謗中傷やプライバシー侵害に該当するSNS投稿がなされた場合においては、法的手段をとる前にまず、SNS事業者に対して当該投稿の削除を求めるのが通例である。ところが、法改正前には、SNS事業者は申出に対し、画一的・形式的な対応をするにとどまることも多く、投稿削除が困難であるという問題があった。
このように画一的・形式的な対応にとどまってしまうのは、日々大量の投稿がなされるSNS事業者の人的資源等の不足があることに加え、SNSといえども表現の自由にかかわる部分もあり、確証がないままに投稿削除をすることに躊躇を感じる部分があったとも考えられる。
法改正により大きく変わったのは、SNS事業者のうち、上記で指定された事業者(=提供者)にあっては、その保有するプラットフォーム上で権利侵害を受けたとの被侵害者から申し出に対しては、義務として調査を行い(法23条)、自社の公表した送信防止措置基準(=削除基準)に基づいて、送信防止措置(=削除措置)を講じるもの(法26条)とされたことである。
すなわち、自社が公表した送信防止措置基準に該当すると判断される場合には、提供者は送信防止措置を行えることが法によって明確化されたことにより、時間を要することなく提供者における対応が可能となった。この点、法25条1項、規則16条において、申出者に対して申出日から7日以内に、(1)送信防止措置をとった場合はその旨、(2)送信防止措置をとらなかった場合にはその旨および理由を通知しなければならないとされている。
法については上記基礎研レターを参照いただくとして、以下では、規則3で定められた主な事項について触れておきたい。
(1) 指定される提供者の要件:提供者の指定要件として、1年間の算定期間のなかで、1月間の平均利用者数1000万人以上かつ1月間の平均発信者数200万人以上であることとされている(規則8条)。なお、行政に対する報告義務を負うのは、1月間の平均利用者数900万人以上かつ1月間の平均発信者数180万人以上とされている(規則9条)
(2) 被侵害者からの申出方法:侵害を受けた者からの申出方法はインターネットにより(法22条2項)、日本語で申出できるものとされ(規則13条1項)、申出方法の公表もインターネットによらなければならない(同条2項)。
(3) 侵害情報調査専門員:侵害の有無について調査する専門員はSNSサービスごとに1名選任する(規則14条)こととされている。なお、総務省が策定したガイドライン4では、専門調査員は弁護士等の法律専門家、日本の風俗・社会問題に十分な知識経験を有する者を選任すべきものとしている(ガイドラインII-2)。
(4) 送信防止措置の実施状況の公表:年度単位で年度経過後2カ月以内にインターネット経由で公表することとされた(規則18条)。
法施行により、送信防止措置が迅速になされることが期待される。他方で、たとえば各提供者が定める送信防止措置基準が十分に具体的でないときは、法が実効性を欠くことも想定される。このあたり、どのような人物が侵害情報調査専門員に選任されるかによる部分も多いと考えられる。送信防止措置の実施状況も公表されるため、今後、送信停止措置の実施状況や対応の透明性が確保されるかが重要な論点となる。引き続き注視が必要である。
1 正式名称は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」。2024年通常国会で改正された。
2 基礎研レター「情報通信プラットフォーム対処法-ネット上の誹謗中傷への対応」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=79202?site=nli 参照。
3 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律施行規則 https://laws.e-gov.go.jp/law/504M60000008039 参照。
4 https://www.soumu.go.jp/main_content/001001530.pdf 参照。
(2025年05月09日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
1985年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所 内部監査室長兼システム部長
2015年4月 生活研究部部長兼システム部長
2018年4月 取締役保険研究部研究理事
2021年4月 常務取締役保険研究部研究理事
2025年4月より現職
【加入団体等】
東京大学法学部(学士)、ハーバードロースクール(LLM:修士)
東京大学経済学部非常勤講師(2022年度・2023年度)
大阪経済大学非常勤講師(2018年度~2022年度)
金融審議会専門委員(2004年7月~2008年7月)
日本保険学会理事、生命保険経営学会常務理事 等
【著書】
『はじめて学ぶ少額短期保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2024年02月
『Q&Aで読み解く保険業法』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2022年07月
『はじめて学ぶ生命保険』
出版社:保険毎日新聞社
発行年月:2021年05月
松澤 登のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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