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「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向【2024年】~都心は価格上昇が加速。一方、下期にかけて南西部は伸び率鈍化、北部と東部は下落に転じる。

金融研究部 主任研究員 吉田 資
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一方、前述の通り、資産性を重視する傾向が強まるなか、実需層に加えて、タワーマンションの資産性に着目した購入のほか16、海外の個人富裕層による購入事例も多い17。価格上昇が継続するなかでも、タワーマンションの購入意欲は強い模様だ18。
こうした良好な需給環境を背景に、「タワーマンション価格指数」は2005年対比で約3.1倍の水準に達している。
16 LIFULL HOME'S不動産査定「タワマン売却に関する意識調査」(2024年)によれば、売却したタワーマンションの「購入の決め手」について、「最寄り駅までの時間」(53%)、「生活の利便性の良さ」(49%)に次いで、「資産性の高さ」(47%)との回答が多かった。
17 マンションリサーチ株式会社が東京都中央区月島・晴海・勝どきの湾岸エリアタワーマンションの所有権移転(2023年7月~2024年6月)について調査したところ、所有者の約3割が外国人であった。
18 スタイルアクト「マンション購入に関する意識調査」(2025年2月時点)によれば、東京23区のタワーマンション購入を検討している割合は、72.2%(「予算が合えば検討する」(44.4%)と「積極的に検討している(購入した)(27.8%)の合計」であった。
続いて、図表-14に、「タワーマンション価格指数」の半期毎の算出結果を示した。
2024年下期の価格指数(2005年上期=100)は「333.3」となり、過去最高を更新した。
2024年の上昇率を上期と下期に分けて確認すると(図表-14)、2024年上期は+19%に達したが下期は+4%となり、価格の上昇スピードが鈍化する結果となった。タワーマンションについても急ピッチでの価格上昇に購入者が追随できず、販売価格と購入希望金額とのギャップが拡大している可能性が考えられる。
また、タワーマンションでは、修繕積立金19や管理費20の上昇がしばしば問題視されている。
加えて、実際に居住している区分所有者と、賃貸や投資目的で保有する区分所有者との間で管理に対する価値観が異なること等により、大規模修繕工事等の多額の支出などに向けた合意形成が困難となる可能性が指摘されている21。こうした状況を受けて、神戸市では全国で初めて、有識者会議の提言に基づき、居住実態のないタワーマンションの空室への課税が検討されている22。
今後、投資目的等でタワーマンションを所有することに対して懸念が高まる可能性もあり、引き続き動向を注視したい。
19 東洋経済オンライン「一気に3倍!「修繕積立費」値上げの怖すぎる事情」(2025年3月12日)
20 朝日新聞「マンション相談が過去最多 タワマン管理費値上げで管理会社へ反発も」(2024年10月13日)
21 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング株式会社・大和ライフネクスト株式会社「タワーマンションの管理データから紐解く住まいの実態や維持管理上の課題」
22 共同通信「神戸市、タワマン空室に課税案 導入すれば全国の自治体で初」(2025年1月9日)
3.おわりに
また、上昇率を上期と下期に分けて確認すると、都心(上期13%/下期16%)は下期にかけて上昇率が拡大した一方、南西部(上期8%/下期3%)は下期に上昇率が縮小し、北部(上期5%/下期▲1%)と東部(上期11%/下期▲1%」は下期に下落に転じる結果となった。
東京23区では、ローン借入23を前提にマンション購入を検討する消費者が多いなか、住宅ローン金利の水準は、住宅購入判断に影響を及ぼしている24。長期固定金利住宅ローンである「フラット35」の金利25は、2022年以降上昇傾向で推移し2%の水準に迫っている。
首都圏の新築マンション需要は、30代および40代の「夫婦と子からなる世帯」と「夫婦のみの世帯」26が支えている部分が大きい。しかし、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)令和6(2024)年推計」によれば、東京都の世帯主が30代および40代である「夫婦と子からなる世帯」は、約78.9万世帯(2020年)から約73.5万世帯(2030年・対2020年比▲7%)に、「夫婦のみの世帯」は、約27.8万世帯(2020年)から約26.3万世帯(2030年・対2020年比▲5%)に減少する見通しである。
また、トランプ政権による相互関税の発表を受けて、株価の下落や円高が進行しており、資産効果の剥落や海外富裕層のマンション購入意欲に影響を与える可能性がある。
2025年は、大規模タワーマンションの販売が複数計画されており、新規供給戸数は前年から増加する見通し27である。経済および金融市場、世帯数の動向次第では、需給環境が悪化する可能性もあり、引き続き注視が必要であろう。
23 リクルート住まいカンパニー「首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、2024年の住宅ローン借入総額は、平均5,671万円となり、2005年以降で最も高かった。
24 野村不動産ソリューションズ「第28回住宅購入に関する意識調査アンケート」によれば、「買い時だと思う理由」を質問したところ、「今後、住宅ローンの金利が上がると思われる」(59.9%)との回答が最も多かった。
25 返済期間が21年以上35年以下の下限金利。
26 リクルート住まいカンパニー「首都圏新築マンション契約者動向調査」によれば、首都圏における新築マンション購入者の世帯主年齢は30代前半(30%)が最も多く、次いで30代後半(19%)、40代(18%)が多い。また、世帯構成は、「子供あり世帯」(35%)が最も多く、次いで「夫婦のみの世帯」(33%)となっている。
27 不動産経済研究所「首都圏・近畿圏マンション市場予測」によれば、東京23区の新築マンション新規供給戸数は約1.2万戸と予測されている。
(2025年04月17日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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