2025年04月17日

「新築マンション価格指数」でみる東京23区のマンション市場動向【2024年】~都心は価格上昇が加速。一方、下期にかけて南西部は伸び率鈍化、北部と東部は下落に転じる。

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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1.はじめに

不動産経済研究所によれば、2024年に東京23区で販売された新築分譲マンションの平均価格は1億1,181万円となり、2年連続で1億円の大台を上回った1。マンション価格高騰に関する話題がメディア等で取り上げられるなか2、マンション価格に関する人々の関心は引き続き高い状況にある。

そこで、本稿では、一昨年3および昨年4に続いて、新築マンションの販売データを用いて、品質調整をした「新築マンション価格指数」を作成し、東京23区の新築マンション市場の動向を概観する。東京23区全体の市場動向のほか、サブインデックスである「エリア別価格指数」と「タワーマンション価格指数」を用いて、各サブセクターの動向についても解説する。併せて、新築マンション市場を取り巻く需給環境等を確認し、東京23区における今後の市場見通しについて考察したい。
 
1 不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2024 年のまとめ」」(2025年1月23日)
2 日本経済新聞電子版「東京23区「億ション」常態化 4~9月、1億円超続く」(2024年10月21日)
日本経済新聞電子版「マンション価格、年収の10倍を超える、東京は18倍に」(2024年12月12日)
3 吉田資『「新築マンション価格指数」でみる東京23 区のマンション市場動向(1)』『「新築マンション価格指数」でみる東京23 区のマンション市場動向(2)』、『「新築マンション価格指数」でみる東京23 区のマンション市場動向(3)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート 2023年4月11日、2023 年4月21日、2023年5月26日)
4 吉田資『「新築マンション価格指数」でみる東京23 区のマンション市場動向【2023 年】(1)』、『「新築マンション価格指数」でみる東京23 区のマンション市場動向【2023 年】(2)』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート2024年4月18日、2024年5月9日)

2.「新築マンション価格指数」でみる東京23区の新築マンション価格

2.「新築マンション価格指数」でみる東京23区の新築マンション価格

本章では、東京23区の新築マンションの販売データ(2005年~2024年)を用いて、品質調整をした「新築マンション価格指数」を作成し5、その動向を把握する。
 
5 推計式は、『「新築マンション価格指数」でみる東京23区の市場動向(1)』の「3. 「新築マンション価格指数」の作成」を参照されたい。
2-1.東京23区「新築マンション価格指数」の算出
(1) 「新築マンション価格指数」(年次)算出の結果
図表-1に、東京23区の「新築マンション価格指数」(年次)の算出結果を示した。2024年の価格指数(2005年=100)は、前年比+13%上昇の「237.4」となり、過去最高を更新した。「新築マンション価格指数」でみる東京23区の新築マンション価格の推移は、大きく3つのフェーズ6に分類できる。現在は、2013年からスタートした上昇フェーズIII「アベノミクス以降の価格上昇局面」が継続している。
図表-1  「新築マンション価格指数」 (東京23区)(2005年=100、年次)
 
6 上昇フェーズI:「2005年~2008年:リーマンショック前までの価格上昇局面(不動産ファンドバブル期)」、下落フェーズII:「2009年~2012年:リーマンショック後の価格下落局面(東日本大震災を含む)」、上昇フェーズIII:「2013年~:アベノミクス以降の価格上昇局面」。
(2) 「新築マンション価格指数」と「平均価格・m2単価」(不動産経済研究所公表)の比較
「新築マンション価格指数」と不動産経済研究所が公表する「平均価格」(図表-2)および「m2単価」(図表-3)を比較すると、「平均価格」が前年比▲3%、「m2単価」が同▲1%と下落したのに対して、「新築マンション価格指数」は同+13%上昇し、両者の間にかい離が生じる結果となった。

2023年は、総戸数が約1000戸で全住戸1億円以上とされる「三田ガーデンヒルズ」7等の高額物件が供給された影響で、「平均価格」は1億1,483億円(前年比+39%)、「m2単価」は172.7万円(前年比+34%)」といずれも前年から大幅に上昇した。2024年は「平均価格」・「m2単価」ともに下落に転じ、価格上昇が一服したように見える。

しかし、高額物件等の影響を取り除いて品質調整を行った「新築マンション価格指数」をみると、2024年の価格上昇率(前年比+13%)は前年(同+9%)を上回り、むしろ価格上昇の勢いが強まったことが確認できる。
図表-2 「新築マンション価格指数」vs.「平均価格」
図表-3 「新築マンション価格指数」vs「㎡単価」
 
7 日本経済新聞「最高額45億円の三田ガーデンヒルズ、11月に2期目販売」2023/9/12
(3) 「新築マンション価格指数」(半期)算出の結果
続いて、図表-4に、「新築マンション価格指数」の半期毎の算出結果を示した。

2024年下期の価格指数(2005年上期=100)は「243.4」となり、過去最高を更新した。前期比の変動率を上期・下期に分けて確認すると、2023年上期から3期連続でプラス幅が拡大し、2024年上期には+9%に達したが、下期は+1%にとどまり、価格の上昇スピードは鈍化する結果となった。
図表-4 「新築マンション価格指数」 (東京23区)(2005年上期=100、半期)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月17日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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