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就労世代の熱中症リスクと生活習慣~レセプトデータと健診データを使った分析

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――熱中症を引き起こす要因のうち、「からだ」に関する情報は少ない
また、熱中症患者に関する情報として取得できるのは、主として上述の救急搬送者数だけであり、自分で病院を受診した人についての情報はない。
そこで、本稿では、日本生命保険相互会社が健康保険組合等から許可を得て取得した健康診断結果のデータと医療機関を受診した際に発行される診療報酬明細書(レセプト)が蓄積されたデータベースを使って、まず、熱中症による医療機関の受診者数を推計したあと、熱中症による受診と関連がある健康診断項目を確認し、からだ要因についての情報を得たい。なお、このデータベースは匿名加工が施されており、個人を特定する情報は含まない。
1 集計対象の月は、2008~2009年7~9月、2010~2014年、2020年6~9月、2015~2019年、2021~2024年5~9月。
2 たとえば環境省の熱中症予防情報サイト「熱中症の基礎知識」(https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness.php)など。
3 2025年1月時点。環境省熱中症予防サイト「当サイトで提供する暑さ指数(WBGT)について」(https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_detail.php)。
4 暑さ指数(WBGT)と熱中症搬送者数の関係は、村松容子「暑さ指数(WBGT)と熱中症による搬送者数の関係」ニッセイ基礎研究所 研究員の眼、2024年10月3日(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/79839_ext_18_0.pdf?site=nli)等。
5 日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」(2022)
6 (公財)日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)
2――レセプトデータを使った熱中症受診状況の分析
医療機関を受診した人の情報としては、厚生労働省から「患者調査」や「社会保障診療行為別統計」が公表されている。前者は3年ごとに10月に実施されていて、後者は毎年6月審査分について公表されており、いずれも熱中症のような季節ごとや年による変動が大きい傷病等の分析には不向きである。同じく、厚生労働省から、国全体の診療報酬明細書(レセプト)の一部がNDBデータとして7公表されているが、傷病情報については公表されていない。
そこで、本稿では、上述のいくつかの健康保険組合等による健康診断8とレセプトのデータベースのうち、これまでで2番目に救急搬送者数が多かった2018年4~10月のデータを使用する。
7 年間の全国の医療機関による診療行為と特定健診について、年齢群、都道府県別の集計表がNDBオープンデータとして公表されている。対象は、電子化されたレセプト情報(労災、自賠責、自費等の保険適用外のレセプトは対象外)。また、診療行為の算定回数や処方薬・調剤の数量、特定健診の結果について基本的な集計を行えるNDBオープンデータ分析サイトがある。
8 39歳以下も対象とする労働安全衛生法に基づく法定健診と、40歳以上を対象とする高齢者の医療の確保に関する法律に基づく特定健診(特定健康診査、いわゆる「メタボ健診」)の結果。
3――2018年における熱中症による受診者数は推計60万人
図表4に、日最高WBGT別の受診率の推計結果、および性・年齢群(男女20歳刻み)の受診率の推計結果を日最高WBGTが20以上25未満の場合と30以上の場合について示す。日最高WBGT別救急搬送者数の分析11と同様に、日最高WBGTが30を超えると受診者は急激に上がる。性・年齢群別では、若年で男性が高く、高年齢で女性が高い傾向があった。
2018年は、救急搬送者数が9.8万人だったことから、受診者数は救急搬送者数のおよそ6倍となる。
12 環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」(https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf、2025年1月20日アクセス)
(2025年03月28日「基礎研レポート」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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