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- 家計消費の動向(~2024年7月)-物価高で食料や日用品を抑え、娯楽をやや優先だが温度差も
2024年09月19日
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4――おわりに~個人消費の改善は可処分所得の持続的増加が鍵
本稿では、総務省「家計調査」を用いて、コロナ禍以降、2024年7月までの二人以上世帯の消費動向について捉えた。その結果、2023年5月の5類引き下げ以降、消費行動は平常化に向かう中でも、物価高で可処分所得に限りがあるために、食料や日用品などの日常的な消費は抑制される一方、コロナ禍で控えられてきた旅行・レジャーなどの娯楽といった非日常的な消費が比較的優先されるなど(とはいえコロナ禍前より低水準)、消費者の選択性が高まっている様子がうかがえた。また、娯楽の中でも優先度や割高感の違いなどから温度差が生じている様子も見えた(国内旅行や遊園地と比べて、海外旅行や外食(特に飲酒)の改善状況が弱いなど)。このほか、これまでも指摘してきたように、バスやタクシーの運転手の高齢化による供給不足やテレワークの普及など行動変容に伴う支出額の減少といった、社会や消費構造変化の影響も見て取れた。
冒頭で述べたように、個人消費は足元で僅かに改善傾向を示しているものの、2024年7月の時点では未だコロナ禍前の水準を下回っている。その要因として、消費者が可処分所得の増加が一時的なものと捉えていることや、不安定な金融市場を背景にした先行き不安の影響などがあげられる。確かに、2024年7月の時点では、主に基本給から成る「きまって支給する給与」は未だマイナスのままだが、推移を見れば、2023年以降は改善傾向が続き、プラスへの転換が目前に迫った状況だ。実質的に基本給が増え、その状況が継続することで、消費者が可処分所得の増加を持続的なものと認識できるようになれば、個人消費はコロナ禍前の水準を超えて改善していくだろう。
冒頭で述べたように、個人消費は足元で僅かに改善傾向を示しているものの、2024年7月の時点では未だコロナ禍前の水準を下回っている。その要因として、消費者が可処分所得の増加が一時的なものと捉えていることや、不安定な金融市場を背景にした先行き不安の影響などがあげられる。確かに、2024年7月の時点では、主に基本給から成る「きまって支給する給与」は未だマイナスのままだが、推移を見れば、2023年以降は改善傾向が続き、プラスへの転換が目前に迫った状況だ。実質的に基本給が増え、その状況が継続することで、消費者が可処分所得の増加を持続的なものと認識できるようになれば、個人消費はコロナ禍前の水準を超えて改善していくだろう。
(2024年09月19日「基礎研レポート」)
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03-3512-1878
経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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