2024年08月21日

訪日外国人消費の動向(2024年4-6月期)-円安効果で四半期で初の2兆円超え、2024年は8兆円台が視野に

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 2024年4-6月の訪日外客数(921万8,703人)は2019年同期より+7.4%増加。最多は韓国(全体の22.8%)、次いで中国(同18.9%)、台湾(同16.3%)と続く。中国は回復途上だが前期(2024年1-3月の外客数は2019年同期比▲38.8%)と比べてさらに改善した(同▲26.4%)。また、引続き米国(同+53.6%)や豪州(同+35.8%)をはじめとした他国は円安による割安感などの影響からコロナ禍を大幅に上回る。
     
  • 2024年4-6月の訪日外国人旅行消費額(2兆1,370億円:1次速報値)はコロナ禍の1.7倍に増え、四半期としては初めて2兆円を超えた。円安による割安感や国内の物価上昇の影響などから、1人当たりの消費額(2024年4-6月平均23万8,722円、2019年同期+54.0%)がコロナ禍前の1.5倍に増えていた。
     
  • 国籍・地域別に見て最多は中国(全体の20.7%)、次いで米国(同13.0%)、台湾(同12.3%)、韓国(同10.4%)と続く。中国の外客数は2位だが消費額は前期から首位を占めるまでに改善している。訪日外客数が多い国ほど消費額は多い傾向はあるが、欧米諸国は観光・レジャー目的による平均泊数の長さ(10日程度)、中国は「爆買い」として見られてきた旺盛な消費意欲など、滞在日数や購買意欲の違いの影響も大きい。
     
  • 消費額の内訳は、インバウンド再開当初は訪日中国人観光客の回復が遅れる一方、コト消費志向の高い欧米客が増える中で買い物代の割合は4分の1を下回っていたが、円安による割安感や中国人の回復傾向が強まる中で、2024年4-6月では31.1%を占める。今後は更なる中国人の回復と、原稿執筆時点では円高方向に振れているが2019年比では依然として円安であることから、買い物代の割合は一層高まる可能性がある。
     
  • 中長期的にはリピーターも増える中で、モノを買うというよりも、日本ならではの体験(コト)消費の需要は強まっていくと見られる。特に日本ではナイトタイムエコノミーや富裕層向けサービスに伸びしろがあり、新たなサービスの供給は成熟した日本の消費市場の発展にもつながる。人手不足は深刻だが労働生産性や付加価値向上の面には改善の余地がある。


■目次

1――はじめに
 ~2024年は過去最高の2023年(5兆3,065億円)を優に超える見込み
2――訪日外客数
 ~2024年6月は313.6万人で2019年より+1割、首位は韓国、中国は2位で改善傾向
3――訪日外国人旅行消費額
 ~コロナ禍前の1.7倍、円安効果で1人当たり消費額が2倍超の国も
4――訪日外国人旅行消費額の内訳
 ~円安による割安感と中国人観光客の回復傾向で買い物代が3割へ
  1|全体の状況
   ~円安と訪日中国人観光客の回復傾向で「買い物代」は36.8%、コロナ禍前を上回る
  2|訪日中国人観光客の状況
   ~買い物意欲が旺盛で足元で「買い物代」が半分、全体より+1割強
  3|国籍・地域による特徴
   ~東南アジアはモノ消費、欧米諸国はコト(サービス)消費
5――おわりに
 ~2024年は8兆円台が視野に、日本ならではの体験やナイトタイムエコノミーに期待

(2024年08月21日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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