2024年08月09日

東京オフィス市場は賃料の底打ちが明確に。物流市場は空室率高止まり-不動産クォータリー・レビュー2024年第2四半期

金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子

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4.J -REIT(不動産投信)市場

2024年第2四半期の東証REIT指数(配当除き)は3月末比▲4.0%下落した。セクター別では、オフィスが▲4.4%、住宅が▲2.2%、商業・物流等が▲3.9%となり、全てのセクターが下落した(図表-15)。6月末時点のバリュエーションは、純資産12.0兆円に保有物件の含み益5.5兆円を加えた17.5兆円に対して時価総額は14.8兆円でNAV倍率5は0.84倍、分配金利回りは4.7%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは3.6%となっている。
図表-15 東証REIT指数の推移(2023年12月末=100)
J-REITによる第2四半期の物件取得額は2,381億円(前年同期比▲0.7%)、上期累計(1-6月)では7,473億円(同+23%)となった(図表-16)。アセットタイプ別では、オフィスビル(30%)・住宅(27%)・物流施設(21%)・ホテル(10%)・商業施設(6%)・底地ほか(6%)となり、住宅は都心部への人口流入などを背景に賃料上昇が期待できるアセットとして取得意欲が旺盛で、昨年1年間の取得実績を既に上回っている(23年1,821億円→24年上期2,042億円)。
図表-16 J-REITによる物件取得額(四半期毎)
今年上期のJ-REIT市場を振り返ると(図表-17)、東証REIT指数(配当除き)は▲4.6%下落、配当込みで▲2.4%下落した。引き続き、金利上昇への警戒感が強いなか、需給面ではMSCI指数の銘柄入れ替え(5月末)に絡んだ海外投資家の売り圧力やREIT公募投信(上場ETFを除く)からの資金流出など需給環境が悪化し、期末にかけて弱含みで推移した。

続いて、市場規模を確認すると、上場銘柄数は58社で昨年末から変わらず、市場時価総額は14.8兆円(昨年末比▲4%)、運用資産額(取得額ベース)は23.1兆円(同+1%)となった。また、業績面では、ホテル収益の拡大や不動産売却益の計上などが牽引して、市場全体の1口当たり予想分配金は昨年末比+4%増加、1口当たりNAV(Net Asset Value、解散価値)も不動産価格上昇を反映して+1%増加し、いずれも過去最高を更新した。一方、Jリートによる投資法人債の発行利率は24年上期平均で1.33%(23年平均0.81%)と大幅に上昇しており、今後は借入コスト上昇に伴う分配金への影響に留意する必要がありそうだ。
図表-17 2024年上期のJリート市場(まとめ)
 
5 市場時価総額がリートの解散価値(NAV:Net Asset Value)の何倍で評価されているかを表わす指標。
 
 

(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

(2024年08月09日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   准主任研究員

渡邊 布味子 (わたなべ ふみこ)

研究・専門分野
不動産市場、不動産投資

経歴
  • 【職歴】
     2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
     2006年 総合不動産会社に入社
     2018年5月より現職
    ・不動産鑑定士
    ・宅地建物取引士
    ・不動産証券化協会認定マスター
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

    ・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員

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