2024年08月02日

文字サイズ

1.はじめに

仙台のオフィス市場では、昨年の新規供給面積が13年ぶりに1万坪を超えて約1.5万坪に達し、空室率は上昇したものの、成約賃料は堅調に推移している。本稿では、仙台オフィス市場の現況を概観した上で、2028年までの賃料予測を行う。

2.仙台オフィス市場の現況

2.仙台オフィス市場の現況

2-1.空室率および賃料の動向
三幸エステートによると、仙台市の空室率(2024年7月時点)は6.3%となり、前年から+1.2%上昇した(図表-1)。昨年の新規供給面積が13年ぶりに1万坪を超えて約1.5万坪に達し、需給環境が緩和した。

空室率をビルの規模1別にみると、「中型7.2%(前年比+0.5ppt)」、「大規模6.6%(同+2.7ppt)」、「大型4.7%(同+0.1ppt)」が上昇する一方、「小型8.2%(同▲2.2ppt)」は低下した(図表-2)。
図表-1 主要都市のオフィス空室率/図表-2 仙台オフィスの規模別空室率
新規供給の増加を受けて空室率が上昇したものの、成約賃料は堅調に推移している。2023年下期の仙台市の成約賃料は、前年比+7.3%、前期比▲2.9%となった(図表-3)。
図表-3 主要都市のオフィス成約賃料(オフィスレント・インデックス)
2023年の空室率と成約賃料の動き(前年比)を主要都市で比較すると、空室率は、大阪市が低下、東京都心5区、名古屋市、札幌市が横ばい、仙台市と福岡市は上昇した。また、成約賃料は、大阪市が下落、福岡市が横ばい、その他都市は上昇となった(図表-4)。

賃料と空室率の関係を表した仙台市の賃料サイクル2は、2010年下期を起点とした「空室率低下・賃料上昇」局面が長らく続いていたが、足元では「空室率上昇・賃料上昇」局面に移行しつつある(図表-5)。
図表-4 2023年の主要都市のオフィス市況変化/図表-5 仙台オフィス市場の賃料サイクル
 
1 三幸 エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
2-2.オフィス市場の需給動向
三鬼商事によると、仙台ビジネス地区では、「ヨドバシ仙台第一ビル」や「アーバンネット仙台中央ビル」等、大型ビルが竣工したことに伴い、2023年末の賃貸可能面積(総供給面積)は 48.4万坪(前年比+1.0万坪)に増加した。一方、2023年末のテナントによる賃貸面積(総需要面積)は45.4万坪(前年比+0.2万坪)となり、空室面積は3.0万坪(前年比+0.8万坪)と前年比+38%増加した(図表-6)。
図表-6 仙台ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積
図表-7 仙台ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積の増減
2-3.空室率と募集賃料のエリア別動向
2023年末時点で「賃貸可能面積」が最も大きいエリアは、「駅前地区(36.4%)」で、次いで「一番町周辺地区(30.8%)」、「駅東地区(14.9%)」、「県庁・市役所周辺地区(12.7%)」の順となっている(図表-8)。

「賃貸可能面積」は、「駅前地区」(前年比+0.7万坪)や「一番町周辺地区」(同+0.2万坪)等で増加し、合計+1.0万坪となった。これに対して、テナントによる「賃貸面積」は、「駅前地区」(同+0.5万坪)で増加した一方、「駅東地区」(同▲0.3万坪)で減少し、合計で+0.2万坪の増加となった(図表-9)。この結果、空室面積は、仙台ビジネス地区全体で+0.8万坪の増加となった。
図表-8 仙台ビジネス地区の地区別オフィス面積構成比(2023年)/図表-9 仙台ビジネス地区の地区別オフィス需給面積増分(2023年)
エリア別の空室率(2024年6月時点)を確認すると、「駅東地区9.1%」(前年比+1.5ppt)、「駅前地区6.1%」(同+1.0ppt)、「一番町周辺地区5.6%」(同+1.1ppt)、「県庁・市役所周辺地区5.5%」(同+0.3ppt)が上昇した一方、「周辺オフィス地区7.0%」(同▲1.8ppt)は低下した(図表-10左図)。

募集賃料は、「県庁・市役所周辺地区(前年比▲0.3%)」を除く全ての地区で上昇し、「一番町周辺地区(同+1.9%)」の上昇率がやや大きくなっている(図表-10右図)。
図表-10 仙台ビジネス地区の地区別空室率・募集賃料の推移(月次)

(2024年08月02日「不動産投資レポート」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

週間アクセスランキング

ピックアップ

レポート紹介

【「仙台オフィス市場」の現況と見通し(2024年)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

「仙台オフィス市場」の現況と見通し(2024年)のレポート Topへ