2024年06月13日

【アジア・新興国】韓国の生命保険市場の現状-2022年と2023年のデータを中心に-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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1――加入状況

韓国の生命保険協会が2021年12月に発表した「生命保険性向調査」1によると、2021年における生命保険の世帯加入率は81.0%で、2018年の86.0%に比べて5.0%ポイントも低下した。世帯主の年齢階級別の加入率は50代が91.4%で最も高く、次いで40代(85.1%)、30代(75.2%)、60代以上(63.7%)、20代(56.8%)の順であった。一方、生命保険加入世帯の平均加入件数は2021年現在4.3件で2018年の4.5件に比べて0.2件減少していることが明らかになった(図表1)。
図表1 韓国における生命保険の世帯加入率や生命保険加入世帯の平均加入件数の動向
最近加入した生命保険商品は、疾病保障保険(42.8%)、実損填補型医療保険(22.7%)、災害傷害保険(16.6%)、死亡保障保険(6.2%)が上位4位を占めた。生命保険の加入目的は「医療費保障」が75.8%で最も高く、次いで「家族の生活保障」(44.3%)、「一時的な所得喪失に対する対策」(17.4%)の順で、2018年の調査結果と大きく変わっていない。一方、生命保険に対する満足度は82.7%で2018年の87.8%に比べて5.0%ポイント低下した。
 
1 「生命保険性向調査」は3年ごとに実施されており、2024年の調査結果がまだ公表されていないので、本稿では2021年までのデータに基づいて生命保険の世帯加入率等をまとめた。

2――収入保険料推移

2――収入保険料推移

2022年の収入保険料は132.7兆ウォンで対前年比11.1%(13.3兆ウォン)増加した。特別勘定の収入保険料は40.3兆ウォンで対前年比4.9% (2.1兆ウォン)減少したものの、一般勘定の収入保険料が92.4兆ウォンで対前年比19.9%(15.3兆ウォン)増加した結果、収入保険料の増加に繋がった。

一般勘定の収入保険料を保険種類別に見ると、「死亡保険」(46.5兆ウォン、対前年比0.1%減少)が最も多く、次いで、「生死混合保険」(26.3兆ウォン、同15.7%減少)、「生存保険」(18.8兆ウォン、同0.3%増加)、「団体保険」(0.8兆ウォン、同1.1%増加)の順であった。特別勘定の場合は、退職年金が27.5兆ウォンで対前年比12.8%増加したものの、変額保険は12.7兆ウォンで対前年比29.0%減少した。
図表2 収入保険料の推移
2022年時点の収入保険料の払込方法は、月払が64.9%(86.1兆ウォン)で最も多く、次いで、一時払(22.0%、29.2兆ウォン)、年払(12.8%、17.0兆ウォン)の順であり、月払の割合が毎年低下傾向を見せていることに比べて、年払や一時払の割合が増加傾向であった(図表3)。
図表3保険料の払込方法の推移
一方、2022年における保険金等支払金は134.4兆ウォンで、1年前と比べて35.5%増加し、生命保険業界の当期純利益は約3.7兆ウォンで、前年と比べて0.6%減少した(図表4)。保険金等支払金が大きく増加した理由は、保険金、払戻金、配当金がそれぞれ対前年比38.0%、34.9%、23.3%増加したからだ。特に、解約払戻金は対前年比45.3%も増加した。
図表4 当期純利益の動向

3――保険商品

3――保険商品

韓国における生命保険商品は基本的に生存保険、死亡保険、生死混合保険に分類される。生存保険は、被保険者が保険期間満期日まで生存した時にのみ、保険金が支払われる保険であるものの、現在、韓国で販売されている生存保険はほとんど被保険者が保険期間中に死亡しても死亡保険金を受け取ることができるように設計されている。代表的な生存保険の商品としては教育保険と年金保険がある。

死亡保険は生存保険とは反対に、被保険者が保険期間中に死亡した際に保険金が支給される保険である。この保険は保険期間をあらかじめ決めておいて被保険者が保険期間内に死亡した際、保険金を支給する定期保険と一定の期間を定めず、被保険者がいつ死亡しても保険金を支給する終身保険(終身保險)に分けられる。

生死混合保険は被保険者が一定期間内に死亡したときに死亡保険金を支給する定期保険と満期まで生存した時に満期保険金を支給する生存保険を合わせたものである。 つまり、生存保険と死亡保険の長所と短所を相互に補完したものとして死亡保険金の保障機能と生存保険の貯蓄機能を同時に兼ね備えた商品だと言える。

図表5は、生命保険の種類別新規契約の動向を示しており、死亡保険の件数や金額が最も多いことが分かる。但し、死亡保険の2022年の新規契約金額は、継続的に減少傾向にあり、2021年と比べて12%減少した。このように死亡保険の新規契約金額が大きく減少した理由としては一人世帯の増加と物価上昇による給付金の価値下落が考えられる。
図表5 生命保険の種類別新規契約の動向

(2024年06月13日「保険・年金フォーカス」)

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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
高齢者雇用、不安定労働、働き方改革、貧困・格差、日韓社会政策比較、日韓経済比較、人的資源管理、基礎統計

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~ 日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2022年~ 慶應義塾大学非常勤講師
    ・2024年~ 関東学院大学非常勤講師

    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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