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女性の「定年」への意識~「中高年女性会社員の管理職志向とキャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」より(7)

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
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1――はじめに
1 調査対象は、全国の、従業員500人以上の大企業に正社員として勤める45歳以上で、コース別雇用管理制度がある企業では「一般職」と「総合職」の女性。コース別雇用管理制度がない企業では、「主に基幹的な業務や総合的判断を行う職種」と「主に定型的な業務を行う職種」に就く女性。及び、定年前にこれらのコースや職種に就き、定年後も同じ会社で、継続雇用で働いている女性。有効回答数1,326(「一般職」1,000、「元一般職」39、「総合職」258、「元総合職」29)。
2――定年を迎える女性の割合とボリューム
2 調査は、常時雇用する労働者が21人以上の企業249,911社に送付し、237,006社が回答。うち中小企業が219,987社、大企業が17.019社。
次に、定年を迎える女性社員の「数」に着目すると、今後は増加が予想される。総務省の令和4年「就業構造基本調査」から、均等法施行直後の1987年から最新の2022年までの45~59歳の「正規の職員・従業員」の人数の推移を男女別でみたものが図表である。これによると、男女とも、概ね増加傾向にある。男女いずれも、人口が多い「団塊世代」が50歳前後だった1997年と、「団塊ジュニア」が50歳前後だった2022年に山があり、女性は2022年に初めて400万人を超えている。1で述べたように、均等法第一世代が含まれることも背景にあると考えられる。そして、この約400万人の多くが、今後15年間のうちに、60歳を迎えていく。
3――中高年女性社員の定年への意識
(1) 職場満足度と勤続意欲との関連
3-1|のように、定年に到達する前に退職したいと考える層(「今すぐ退職したい」または「定年より前に早期退職したい」と回答した女性)が2割を超える中で、現在の会社で「定年まで働きたい」という勤続意欲を強く持っているのはどのような女性なのかについて、共同研究では様々なクロス分析を行った。本稿ではそのうち、代表的なものを紹介する。
まず初めに、職場への満足度との関連をみていく。職場において、職務や組織運営など、様々な状況に対して「満足」または「やや満足」と回答した層について、「いつまで働きたいか」をまとめた結果が図表4である。その結果、赤地・プラス表記したように、「評価制度」や「人事異動ローテーションや転勤の範囲」、「管理職登用の機会」、「教育・研修機会」、「同僚との相互サポート体制」、「現在の女性管理職の人数」、「ジェンダー平等」について「満足」または「やや満足」と回答した層は、「定年まで働きたい」の値が全体より高かった。
つまり、会社で研修受講や配置などによって、自身がスキルアップ・キャリアアップする機会があり、同僚とのサポート体制が整っていることによって、家庭や健康上の事情が発生しても対応しやすく、実際にそれを正当に評価されていると感じている女性は、定年まで働こうという意欲が相対的に強いことが分かった。
ここで、「現在の女性管理職の人数」や「ジェンダー平等」といった、ジェンダーに関する状況について満足度と、勤続意欲との関連が見られることも注目される。この理由を考えると、例えば企業が女性管理職を増やそうとすれば、仕事と家庭との両立のハードルを下げるために働き方を見直したり、部署や管理職同士での協力・サポート体制を強化したりするなどの工夫が必要だと考えられる。従って、女性管理職を増やすと結果的に職場改革が進み、個々の中高年女性にとっても「働きやすい職場」が整備されていく、という可能性も考えられる。
その他、このクロス分析から分かった点としては、図表4に青地・マイナス表記したように、「職務」や「評価・待遇」(うち「評価制度」)、「人事・配置」、「組織運営」、「福利厚生」(うち「健康増進に関する取り組み」)などで満足度が高い層は、軒並み、「今すぐ退職したい」層が全体より低かった。つまり、これらの点への満足度が高い層は、勤続意欲が低い人が相対的に少ないと言える。
(2024年05月17日「基礎研レター」)
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03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
坊 美生子のレポート
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