2024年03月28日

女性にとって「育児と管理職の両立」は可能か~中高年の女性管理職のうち、子がいる割合は4割弱

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子

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■要旨

2000年代に入って以降、育児休業の法制化や短時間勤務制度の導入・拡大など、子どもがいても働き続けやすくする「育児と仕事の両立支援」策は、確実に拡充されてきた。しかし、「育児と管理職の両立」または「育児とキャリアアップの両立」についてはどうだろうか。一般社団法人定年後研究所とニッセイ基礎研究所が昨年10月に共同研究として行ったインターネット調査「中高年女性の管理職志向とキャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」によると、45歳以上の現役管理職の女性のうち、子がいる割合は4割弱、小学生以下の子がいる割合は約15%にとどまっていた。

男女両方の正社員を対象に行われた先行研究による調査をみても、女性管理職のうち子がいる割合は約3割だったが、男性管理職は約8割であり、大きな男女差があった。特に子の年齢階級が小さいほど、男女差が大きく、女性にとって、「育児と管理職の両立」は、男性に比べて非常にハードルが高いのが実態だと言える。

今後、女性が「育児と管理職の両立」を実現していくためには、まず企業側には、育児中の社員も働きやすく、成果を出しやすい「ダイバーシティ経営」が必要である。近年は、若者の意識も変化し、育児をしたいという男性が増えているため、近い将来、管理職となる男性人材を確保するためにも、ダイバーシティ経営を構築することは重要だと言える。

次に女性側にできる工夫としては、管理職になったとき、自身の家庭の都合を勘案して仕事のスケジュールを決める「タイムコントロール」や、部下に任せられる仕事は部下に任せる「権限移譲」をすることが挙げられる。これらは、一般社団法人定年後研究所・ニッセイ基礎研究所「ダイバーシティ・中高年女性社員活躍に関する大企業取組インタビュー調査」より得られたキーワードである。他にも、子が小さいうちは育児を優先し、子育てがひと段落した50歳代などから、管理職やキャリアアップに挑戦するという道もあるだろう。

■目次

1――はじめに
2――女性管理職のうち、子がいる人の割合は4割弱
 ~一般社団法人定年後研究所・ニッセイ基礎研究所「中高年女性の管理職志向と
  キャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」より~
  2-1│管理職を務める中高年女性の属性
  2-2│子がいる女性管理職の割合が小さい要因
  2-3│裾野の女性から見た状況
3――「育児と管理職の両立」を実現するために
 ~一般社団法人定年後研究所・ニッセイ基礎研究所「ダイバーシティ・中高年女性
  社員活躍に関する大企業取組インタビュー調査」より~
  3-1│企業側に求められる制度・取組
  3-2│管理職に就く女性自身にできる工夫
4――終わりに
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生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
中高年女性の雇用と暮らし、高齢者の移動サービス、ジェロントロジー

経歴
  • 【職歴】
     2002年 読売新聞大阪本社入社
     2017年 ニッセイ基礎研究所入社

    【委員活動】
     2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
     2023年度  日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員

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レポート紹介

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