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介護保険の2割負担拡大、相次ぐ先送りの経緯と背景は?-「改革工程」では2つの選択肢を提示、今後の方向性と論点を探る
保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
社会保障制度改革の一環として、政府内で検討されていた介護保険の2割負担対象者拡大は紆余曲折の末、次の次の制度改革のタイミングとなる2027年度まで先送りされることになった。これで、先送りは2022年以降だけで3回目となり、かなり異例の展開となっている。
この背景には、関係団体や利用者の反発が強いことがあり、主な議論の舞台となっている社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護保険部会では、意見対立が長く続いている。さらに、与党サイドでも慎重な意見が出ており、2023年12月の議論では、予算編成過程と政治決着に委ねられたものの、方向性を固められなかった。
一方、岸田文雄政権が重視する「次元の異なる少子化対策」の余波として、2023年12月に作られた「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」では、2割負担の方向性について、(1)「負担増に対応できる」と考えられるレベルまで、2割負担の対象者を線引きする基準を引き下げ、(2)当分の間、負担に上限額を設けた上で、(1)よりも2割負担の対象者を幅広く設定――といった形で、2つの選択肢が示されている。さらに利用者負担の決定に際して、資産を考慮する可能性も言及されている。
そこで、本稿では介護保険2割負担の対象者拡大を巡る経緯や論点、今後の方向性を占う。具体的には、2015年度改正で2割負担が導入された経緯を振り返った後、利用者に及ぼした影響などを考察。さらに、政府の政策決定文書の文言などを精査し、先送りが相次いでいる過程や背景を考察するとともに、今後の方向性を論じる。
■目次
1――はじめに~介護保険の2割負担拡大、相次ぐ先送りの経緯と背景は?~
2――介護保険利用者負担見直しの経緯
1|2割負担、3割負担導入の経緯
2|2割負担、3割負担が導入された背景
3――介護保険2割負担、3割負担の現状
1|2割負担、3割負担の対象者
2|利用者負担引き上げの影響
3|実負担率を抑制する高額介護サービス費の推移
4――2割負担対象者拡大、先送りの経緯
1|相次ぐ先送り
2|2023年12月も先送り
5――先送りが相次ぐ理由
1|自民党幹部の発言を解釈すると…
2|費用対効果が悪いと判断された?
6――改革工程の記述
1|「改革工程」の位置付けと記述
2|見直しに際しての先例と方向性、論点
3|医療との違い?
7――物価上昇の影響をどう考えるか
1|インフレが進めば、2割負担と3割負担の対象者が拡大?
2|人材不足が深刻化する可能性
3|限度額の見直しなどに波及?
4|最近の制度改正は先送りか、小粒案件
8――おわりに
(2024年03月01日「基礎研レポート」)
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03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
三原 岳のレポート
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