2024年01月25日

2024年度の社会保障予算の内容と過程を問う(上)-インフレ対応でトリプル改定は増額、少子化対策で複雑な様相に

保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

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■要旨

2024年度政府予算案が決まり、1月26日召集の通常国会で審議される。一般会計の規模は対前年度当初比で▲1.6%減の112兆5,717億円となり、6年連続で100兆円を超えた。ただ、新型コロナウイルス対策として計上されていた巨額の予備費が廃止されたことなどで、規模自体は12年ぶりに減少に転じた。

こうした中、歳出の約3分の1を占める社会保障関係予算は対前年度当初比2.3%増の37兆7,193億円となった。今回は医療機関向けの診療報酬本体と、介護事業所や障害福祉サービス事業所に対する報酬が6年ぶりに同時に改定される「トリプル改定」の結果に注目が集まった。特に物価が上昇に転じる中、逆ザヤとなる医療機関や介護・福祉事業所の人材確保に向け、プラス改定の増額規模が主な論点となった。さらに、岸田文雄政権が掲げる「次元の異なる少子化対策」の財源確保問題も絡み、予算編成を巡る議論は複雑な様相を呈した。

結局、例年通り、薬価改定で1,300億円程度をカットするなどの歳出抑制策を積み上げた。一方、同時改定となった診療報酬本体は0.88%増、介護報酬は1.59%増、障害福祉サービスの報酬は1.12%増となった。これに年金の物価スライドも重なり、社会保障関係予算は8,500億円程度、増えた。

本稿は3回シリーズで、社会保障関係費を中心に、2024年度政府予算案の概要や制度改正の内容、政策形成過程などを考察する。(上)では予算案や社会保障関係予算の全体像を把握するとともに、同時改定の決定過程や意味合いを考察した上で、インフレ下における報酬改定の論点を考える。(中)では次元が異なる少子化対策の内容を、(下)では少子化対策の検討過程で作られた社会保障の給付抑制に向けた工程表の内容をそれぞれ取り上げる。

■目次

1――はじめに~2024年度社会保障予算の内容と過程を問う~
2――2024年度予算案の概況
  1|歳出と歳入の概況
  2|減税補填で地方交付税等は増額に
  3|新型コロナ対応の予備費が廃止に
3――社会保障関係予算の概況
  1|骨太方針の記述
  2|社会保障関係費の全体像
  3|「高齢化による増加分」で盛り込まれている制度改正
  4|「高齢化による増加分」「社会保障の充実」にまたがるトリプル報酬改定
  5|「社会保障の充実」の項目
4――トリプル改定の増額の意味合いと論点
  1|診療報酬本体の細かい内訳
  2|介護報酬、障害福祉サービス報酬は1%を超える増額
  3|6月施行で「デスマーチ」解消
  4|トリプル改定のポイント(1)~本体は前回の2倍超だが、診療所はマイナス~
  5|トリプル改定のポイント(2)~診療報酬本体を上回った介護・福祉向け改定~
  6|トリプル改定の評価
5――インフレ下での改定を今後、どうするか
  1|今回のトリプル改定の調整が難航した理由
  2|インフレ下での報酬改定の選択肢
6――おわりに

(2024年01月25日「基礎研レポート」)

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