コラム
2024年01月26日

数字の「10」に関わる各種の話題-十進法を採用している現代社会では、「10」という数字は特別な意味を有している-

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はじめに

これまで述べてきた数字とは異なり、十進法を採用している現代社会において、数字の「10」に接する機会は極めて多いと思われる。その意味では、「10」という数字は特別な意味合いを有しており、殆どの人にとって、最も馴染み深い数字の1つになっているものと思われる。

今回は、この数字の「10」について、それが現れてくる代表的な例やその理由等について調べてみた。ただし、今回取り上げるトピックも、10が現れてくるケースのほんの一部に過ぎないことを敢えて述べておく。

十進法

「十進法(decimal system)」は、十を底とし、底及びその冪を基準にして数を表す方法である。

また、「十進記数法」は、十を底とする位取り記数法であり、アラビア数字の0から9までの数字、あるいは日本においては漢数字(〇、一、二、三、四、五、六、七、八、九)のように10種類の数字を用いて表される。

ヒトの手指の数が、両手を併せて十本あることから、多くの文明において、標準的な記数法として十進法が採用されている。これは、人間が指折り数える習慣に由来している。

なお、ローマ数字、漢数字、ヒエログリフ(エジプト数字)1等は、十を「10」ではなく新しい文字として表現しているが、これらは十進法を基本にしている。

また、五本指の手が二本あるので、十の他に五も基準にして、「十の累乗数」と「十の累乗数の五倍」で桁を繰り上げる方法があり、これを「二・五進法」と呼んでいる。

例えば、ローマ数字は、十進法に基づいてはいるが、以下のように、5や50や500を表す数字も存在しており、二・五進法とみることができる。
ローマ数字/アラビア数字
因みに、日本の算盤(そろばん)も、1の珠と5の珠があり、一種の二・五進法になっている。
 
1 ヒエログリフの数字については、研究員の眼「分数について(その1)-分数の起源等はどうなっているのか-」(2023.3.28)で紹介している。

十進命数法

「十進命数法」は、十を底とする命数法である。十進命数法も、ヒトの両手の手指の数に由来している。

現在の世界の言語の数詞においては、殆どのケースにおいて、十進命数法が使用されている。ただし、フランスのように、記数法は十進法であるものの、命数法では二十進法等が使用されている2等、限られたケースでは十進法以外が採用されている。

単位系

現代においては、多くの単位系が10 の冪乗に基づいている。具体的には、例えば以下のものが挙げられる。

・国際単位系(SI):長さ(m(メートル))、質量(g(グラム))等

・百分率、千分率:%(パーセント)、‰(パーミル)

・世紀:西暦を100年単位に区切ったもの、C(century)で表記される。

・貨幣制度:基本的には十進法をベースにしているものの、発行される硬貨・貨幣の額面には、二・五進法も多くみられる。則ち、硬貨と紙幣は「1」と「5」(と「0」)が付くものが多くなっている(ただし、日本の二千円紙幣や米国の25セント硬貨等、これに該当しないものもある)。なお、1ドルの10分の1である10セントを表す「dime」は「10分の1」に由来している。

ところで、10を底とする単位系は、今では幅広く受け入れられている常識的なものになっているが、これはフランス革命以降に世界規模に拡大したと言われている。それ以前には地域ごとに様々な数に基づく単位系が使用されていた。たとえば、ヤード・ポンド法では1ヤード = 3フィート、1フィート =12インチ、1マイル=1760ヤード、1ポンド=16オンス等となっている。

漢字の「十」

「十」は、細長い棒を縦と横に交差させた象形から成り立っている漢字で、もとは「針」を表していたが、転じて数字の10を意味するようになった。

一方で、日本語には「大字(だいじ)」と呼ばれる、通常とは違う漢数字が存在しており、大字では「拾」と書く。「拾」という漢字は、手へンが5本の指を表し、「合」のつくりの部分がフタの付いている容器を表し、両手を合わせるという意味合いから、10を意味するようになっているようである。

大字は法的文書や金融文書などで、画数が多く難しい漢字を使うことで書き換え・改竄を防ぐために使われる(例えば、「一」を使った場合、後から線を付け足すだけで「二」や「三」に書き換えることができてしまう)。現在の日本の法令では、一(壱)、二(弐)、三(参)、十(拾)のみに大字が用いられている。

なお、漢字の「十」の常用漢字表での読み方は、音読みでは「ジュウ」や「ジッ」(当用漢字表では「ジュッ」とも読み、平成22年の常用漢字表の改定で、補足としてこの読み方が加えられている)、訓読みでは、「とお」や「と」と読む。

十分(ジュウブン)、十字(ジュウジ)、十二分(ジュウニブン)
十把(ジッパ)、十手(ジッテ)、十傑(ジッケツ)、十匹(ジッピキ)
十進法(ジッシンホウ)、十階(ジッカイ)

これらの読み方として「ジッ」ではなく、「ジュッ」と読んでいる人も多いものと思われる。何を隠そう、私自身もその一人である。これは間違いではないが、正式な読み方ではないとのことである。

その他にも、以下のような読み方もされる。

十六夜(いざよい)、十八番(おはこ)、三十路(みそじ)、十露盤(そろばん)

英語における「ten」

数字の「10」のことをなぜ「ten」と呼ぶのだろうかと、不思議に思ったことはないだろうか。

「ten」の語源については、いつまで遡るのかということもあると思われるが、千年前の古英語ではウェストサクソン方言で tīen(e),アングリア方言で tēne等と呼ばれていたとのことである。ドイツ語ではzehnと呼ばれる。

さて、「20」や「30」については、「twenty」や「thirty」と呼ばれる。これらは、「two」や「three」に「10」を表す「ty」が付与された形になっている。それでは「10」は「onety」等でも良いのではないかと思われるかもしれないが、日本語でも「10」を「イチジュウ」とは呼ばないのと同じで、単位系の基準となっているものなので、1つの言葉で表されているようだ。

宗教において現れる数字の「10」

聖書において「10」という数字は、完全な数と認識されており、神の支配を表すとされている。具体的には、10が現れてくる例としては、以下が挙げられる。

・「十の災い」は、旧約聖書において、古代エジプトで奴隷状態にあったイスラエルの人々を解放するために、神がもたらしたとされる十種類の災い

・「モーセの十戒」は、旧約聖書において、神がモーセに与えたとされる10の戒律

・「10枚のドラクメ銀貨」は、新約聖書において、「神の憐れみの三つのたとえ」の1つとして、以下のように述べられている。

「あるいは,ドラクメ銀貨を十枚持っている女がいて、その一枚を無くしたとすれば、ともし火をつけ、家を掃き、見つけるまで念を入れて捜さないだろうか。」(ルカによる福音書 15章 8節)

・「十人の乙女たちのたとえ」(十人の乙女)の話が「マタイによる福音書」に残されている。

なお、中世ヨーロッパでは、農民は農産物の十分の一を教会に納めており、十分の一献金の習慣は今日でもキリスト教会で一般的になっているようだ。

仏教における「十戒」は、沙弥および沙弥尼(見習いの僧侶・小僧)が日常的に守るべきとされる十か条の戒律をいう。また、「十善戒」は、十悪(十不善業道)を否定形にして、戒としたもので、比丘(出家し、具足戒を守る男性の修行者)向けの戒である。

10人で競技されるスポーツ

これまでの数字の現れ方の紹介の中で、「9」、「11」、「15」等において、スポーツの競技者の人数を挙げてきた。「10」というのは切りの良い数字なので、さぞかし10人で競技するスポーツが多いのかと思いきや、意外とそのようなスポーツを探し出すのは難しい。おそらく多くの人は1つの例も挙げることができないのではないだろうか。

実際に調べてみると、以下のようなスポーツが挙げられる。

ラクロス
クロスと呼ばれる先端にネットの付いたスティックを用いて、テニスボール大の硬質ゴム製のボールを奪い合い、相手陣のゴールに入れることで得点を競う球技であり、競技者は1チーム10人又は6人となっている。2028年のロサンゼルスオリンピックの(男女とも)正式な追加競技となり、120年ぶりにオリンピックの舞台に戻ってくることになっている(過去には、1904年と1908年に正式競技、1928年、1932年、1948年には公開競技となっていたが、男子のみの種目だった)。

ハンドベースボール
ソフトビニール製やゴム製などのやわらかいボールを用いて行う簡易野球。バットの代わりに、手のひらでボールを打ち、捕球も素手で行う。

ティーボール
これも、野球やソフトボールに似た屋外球技で、競技者の数は10~15人となっている。ピッチャーのいない球技で、打者は、審判の「プレイ」の宣告後、バッティングティーの上に置かれたボールを打つ。

その他のスポーツにおける「10」

・サッカーにおいては「10」はエースナンバーであり、一般的には司令塔あるいはエースストライカーと呼ばれるプレーヤーが背番号10を付けている。

・ボクシングでは、レフリーが10までカウントすると、ノックアウトによって勝者が宣言される。

・十種競技は、10 の陸上競技からなる複合競技である。男子の十種競技の場合、通常、1日目:100m、走幅跳、砲丸投、走高跳、400m、2日目:110mH、円盤投、棒高跳、やり投、1500m で構成される(因みに、女子の場合は7種競技となり、通常、1日目:100mハードル、走高跳、砲丸投、200m、2日目:走幅跳、やり投、800m で構成される)。

・(テンピン)ボウリングでは、10本のピンが三角形のパターンに配置され、1ゲームあたり10フレームある。
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中村 亮一

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