コラム
2023年05月19日

数字の「20」に関わる各種の話題-20進法は古くから使用されており、その名残が現在でも随所で見受けられる-

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はじめに

数字の「20」と聞いて、多くの方は「10」の丁度2倍の数字ということで、それなりに心地よい数字だと感じられるのではないだろうか。実は数字の「20」が現れる二十進法は古くから使用されており、その名残が現在でも随所で見受けられる。

今回は、この数字の「20」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。

二十進法とは

二十進法(vigesimal1というのは、20 を底(てい)とし、底及びその冪を基準にして、数を表す方法、のことを指している。また、「二十進記数法」は、20を底とする位取り記数法、のことを言う。二十進記数法では、通常、0から9までの10個のアラビア数字と(十から十九までの数字を表すために)AからJまでの10個のラテン文字を用いる2。これにより、例えば、二十は10 、二十一は11と表記されることになる。

十進法での数字と区別するために、二十進法での数字については、通常は下記のように、括弧及び下付の 20を用いて表記される。

(10)20 =20、 (2C)20=52(=2×201+12)、 (34E)20 =1294(=3×202+4×201+14)    

十進法が手の指の総数に由来しているのに対して、二十進法は手足の指の総数に由来している。
 
1 「vigesimal」というのは、あまり聞きなれない英語だが、ラテン語の二十(viginti)に由来している。
2 なお、Bと8 、Iと1が類似して間違いやすいことから、BやIを使用せずに、十一をC、十八をJやKと表記することもある。

二十進法はどこで使用されているのか

数詞等における二十進法
二十進記数法による数詞を有する言語は、世界中に多く見られる。ただし、二十進法の数詞が、1 から 20 までの独立した20個の単語を有していることは珍しく、五進法又は十進法を補助的に含んでいることが多い(これはやはり、指を用いた数の数え方に関係しているものと思われる)。
マヤ文明における数詞
最も体系的で有名なものは、マヤやアステカ等のメソアメリカ文明3で使用されていたものである。

マヤ文明では、二十進法が基本になっており、数詞も五進法を補助的に使用する二十進記数法となっていた。貝殻(あるいは人間の眼とも言われている)(4で「0」、点(●)の数で1から4、横棒()で「5」を表し、20以上の数については、桁を繰り上げる「位取り記数法」を使用している。ただし、位取りは、大きい桁から小さい桁に対して、現代のアラビア数字等による左から右へという形ではなく、上から下へという形(即ち、上に置かれる数がより大きな桁)になっている。
マヤ数字(零から19)
位取り記数の例
なお、マヤ暦には周期や日数が異なるいくつかの種類があり、20日が基本になって、(1)20日と13日という2つの独立した周期の組み合わせで、1周期260日の「ツォルキン」と呼ばれているもの、(2)1周期が365日(20日×18か月+5日)の「ハアブ」と呼ばれているもの、があった。

さらに、「長期暦」は、5桁の数字で表示され、1日をキン、20キンの「月」をウィナル、18ウィナルの「年」をトゥン、20トゥンを1カトゥン、20カトゥンを1バクトゥンとする単位で構成されていた。
 
3 「メソアメリカ(Mesoamerica)」は、ほぼメキシコ及び中央アメリカ北西部の地域で、共通的な特徴をもった農耕民文化ないし様々な高度文明(マヤ、テオティワカン、アステカ等)が繁栄していた文化領域
4 筆者作成のため、必ずしも正確な形ではないかもしれないが、あくまでもイメージを把握してもらうためのものとご理解いただきたい。
現代の言語における数詞
現代においても、ブータンの国語である「ゾンカ語(Dzongkha)」は、二十進法と現代的な十進法の2つの命数法を有しており、二十進法も広く使用されている。

「フランス語」の数詞は、十進法と二十進法が混在しており、かなり複雑になっている。0~16、20、30、40、50、60は独立した数詞を有しており、その他の69までの数詞はこれらの数詞を組み合わせて表現される。これに対して、70以降の数詞については、70はsoixante-dix (60+10)、80はquatre-vingts (4×20)、90はquatre-vingt-dix(4×20+10)、79はsoixante-dix-neuf(60+10+9)、99はquatre-vingt-dix-neuf(80+10+9)等と表現される。

「英語」では15をfifteen(5+10)と呼ぶのに対して 25をtwenty-five(20+5)、「ドイツ語」では15をfünfzehn(5+10)と呼ぶのに対して25はfünfundzwanzig(5+20)と呼ぶ等、11から19までと21 以上とで異なる語構成となっている。

「アイヌ語」では 40をtu-hotnep (2×20)、100 をasikne-hotnep(5×20)と呼んでいる。

なお、「日本語」では、30(みそ)から90(ここのそ)までは接尾辞「そ」が付けて呼ぶのに対して、20 は「はた」と呼んで、20 を意味する語が他の 10 の倍数とは異なる語構成となっている。
20」は「score」と呼ばれる
西洋においては、20 は多数を意味する数とされてきており、物を数える単位で、20個を「1 score」と呼んでいたりする。

「score」というのは、元々は古期のスカンジナビア語で「切り刻むこと」を意味しており、羊飼が羊を数えるのに手の指と足の指で数え、20頭ごとに棒切れに刻みをつけたことに由来している。

英語で「a score of」というのは、理屈上は「20」を意味しているが、実際にこのような表現を使用する時には「大体20ぐらい」の意味を有している。明確に「20」と分かっている場合には「twenty」を使えばよいことになる。
単位系にみられる二十進法
米国を中心に使用されている単位系であるヤード・ポンド法においては、1トンは20ハンドレッドウェイト、1トロイオンスは20ペニーウェイトとなっており、また、英国における1パイントは 20液量オンスとなっている等、二十進法が使用されている。

1971年2月15日に十進法に変わる前の英国の通貨では、十二進法と二十進法の組み合わせが使用されており、1ポンドは 20シリング、1シリングが12ペンスであった。

「10」の場合、1とその数以外の約数は2と5しかないのに対して、「20」の場合、1とその数以外の約数は2, 4, 5, 10 と4個あることから、四分割や五分割に便利であり、このことが二十進法の単位が使用される一因になっていたようだ。なお、またこの理由から、二十進法は十進法や十二進法との親和性も高いとみられている。
原稿用紙は120字で20行連ねた400字詰めが基本形
原稿用紙は、1行20字を20行連ねた合計400文字のものが基本形となっている。

この20字×20行の400字詰めの様式の起源については、いくつかの説があるようだ。

一般的には、江戸時代の国学者である塙保己一(はなわ ほきいち)が編纂した「群書類従」(1819年完成)の版木が起源であるとされている。この版木は、縦20文字、横10行が2段で400字に統一されており、国の重要文化財にも指定されている。

なお、これ以前には、京都府宇治市にある「萬福寺」の住職だった鉄眼禅師が、中国の明朝時代に隠元和尚が持ってきた『大蔵経』を1681年に刊行しているが、この印刷用木版も20字×20行で彫られていたようだ。

それではなぜ、1行20字だったのかについては、必ずしも明確ではないようだ。先の「群書類従」の版木の大きさは、横470mm×縦230mm×厚さ15mmであったようで、現在において最も定番のB4サイズの原稿用紙の場合の、横364mm×縦257mmに比べて、横長のものだったが、上下左右に適当なスペースを保持した上で、一定程度読みやすい大きさの文字数ということで、20字になったのではないかと推測されることになる。そもそも当時の手書きは筆によるものだったことを考えた場合、現代の筆記具によるもの以上に、小さな文字を書くことは容易ではなかったものと思われる。その意味においても、20字が手書きによる用紙の1行に収まる字数として、最適なものだったと考えられることになる。

因みに、現在のWORD(ワード)による文書作成では、10.5pt文字のA4横書きでは、1行あたり文字数が40文字、1ページあたり行数は36行、合計1,440字収まる形になっている。プリンターによる文字ではこの大きさでも問題はないが、手書きではかなり小さな文字になってしまう。

また、1枚20行についても、真ん中にページの区切りのための余白があって、1ページ10行となっているのが縦横のバランスも図られた最適なサイズだったということなのだろう。
ルービックキューブは20手以内で必ず解ける
ルービックキューブ(Rubik's Cube)は人気のある立方体パズルであるが、これについては、どんな状態からでも、最大20手で全面揃った状態に戻せる、ことが証明されている。

2010年8月に、米グーグル(Google)の支援を受けた国際研究チームが、ルービックキューブの全パターンを調べ上げ、どんな状態からでも20手以内で全面の色をそろえることができることを突き止めている。

常に最短の手数で済むアルゴリズムは「ゴッドアルゴリズム(神のアルゴリズム、God's Algorithm)」、このアルゴリズムで解くために最大で必要な手数は「ゴッドナンバー(神の数、God's Number)」と呼ばれているが、これを解明した数学者チームは、ルービックキューブの「ゴッドナンバーは20であることを突き止めた」と述べている5

彼らは、グーグルが提供した多数のパソコンを利用して、約43×106兆(0.43垓)通り(4325京2003兆2744億8985万6000通り)もある配置から、全パターンをわずか数週間で解析した、とのことである。
 
5 この上限について、1981年には52手とされたが、その後1995年には29手、2008年には22手と徐々に小さくなってきていた。
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中村 亮一

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