コラム
2023年04月21日

数字の「19」に関わる各種の話題-「19」という数字はいかにも中途半端な数字というイメージがあると思われるが-

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はじめに

数字の「19」と聞いて、多くの方は「20」に一つ足りない数字ということで、何となく中途半端で不完全なイメージを持たれるのではないかと思われる。しかし、このような数字の「19」も世の中で現れてくる場面はある。特に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を経験して、図らずも、世の中で「19」という数字に遭遇する機会が多くなってしまった。

今回は、この数字の「19」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。

太陰太陽暦の修正-メトン周期

太陰暦1というのは、月の満ち欠けの周期に基づいて、29日または30日からなる「月」2を12回繰り返して「1年」とする暦である。これによると、1年が約354日となり、太陽暦の1年に比べて約11日短く、3年ごとに約1か月のずれが生じてしまうことになる。そのため、太陰暦では、実際の季節との食い違いが生じて、同じ日付でも毎年季節が異なることになってしまう。

そこで、暦と季節のずれが生じないように、太陽の運行を参考にして、「閏月」を挿入し、1年を13か月にする方法が採用された。これを、太陰暦に基づくが太陽暦の要素も取り入れている暦ということで「太陰太陽暦」と呼んでいる。

紀元前2000年ごろのバビロニアではこの太陰太陽暦を用いていたが、暦と季節のずれに対しては当初、天体を観測して、適当に日や閏月を加えることが行われていた。こうした中で、紀元前433年にアテナイ(アテネの古名)の天文学者で数学者のメトンが、「メトン周期(19年に7回、閏月を暦に入れる)」に基づいて、太陰太陽暦の修正を行うことを提案した。メトン周期は、19太陽年(太陽暦の19年)(地球が太陽の周りを19回めぐる日数)が、235朔望月(月の満ち欠けによる235か月(太陰暦の19年と7か月))の日数とほぼ等しい、ということに基づいている。

このメトン周期の原理は世界各地でも知られるようになって、古代中国や古代ギリシアの暦もこのメトン周期の原理に基づいて、あるいはメトン周期の影響を受けたと言われている。

中国では19年を1章と呼ぶことから、メトン周期の原理に従って19年の間に7回、閏月を置く暦法を「章法」と呼んでいた。しかしながら、235朔望月は19太陽年よりもわずかに長く、219太陽年で約1日ずれることになっていた。これに対して、中国では、暦に閏月の入る割合を減らすことで対処する「破章法」と呼ばれる暦法が行われた。一方で、日本においては、月の大小や閏月の順序を入れ替える改暦を行って、ずれを修正していた。
 
1 「太陰」というのは、空にある月のことを指している。
2 太陰暦の1か月を「朔望月」と呼んでいる。

標準的な碁盤は19路盤

囲碁の碁盤
囲碁の碁盤の標準的なものは「19路盤」となっている。

「19路盤」というのは、碁石を置くことができる縦横19本の線を持つ盤のことを指している。従って、19路盤では、交点(目)の数が361(=19×19)、マス目の数が324(=18×18)あることになる。碁盤のサイズは、縦1尺5寸(約45.5cm)×横1尺4寸(約42.5cm)が本寸サイズとなっており、厚さは足付き盤で2寸から9寸程度(4寸(約11.5cm)前後を基準として、各メーカーによって異なる)となっている。

碁盤には、「19路盤」以外にも、「15路盤」、「13路盤」、「9路盤」といったものもある。「15路盤」は囲碁では使用されずに、連珠で使用されるので「連珠盤」と呼ばれる。「13路盤」や「9路盤」は、囲碁の初級者や初心者が囲碁の実践感覚を学ぶため等に使用される。
囲碁の歴史
囲碁の起源についてはよくわかっていないようだが、今から四千年ぐらい前に中国で誕生したと言われている(インドやチベット発祥の異説もある)。中国での占星術の一法が変化・洗練されて、現在の形になったようで、碁盤と碁石はその占いの道具だった。その後、兵法の研究のためにも使用されたりしていたようだ。初期に使われていた碁盤は、15路盤や17路盤(9路盤を(端の線を重ねる形で)4枚束ねると17路盤になる)で、(おそらくはより複雑な盤面が望まれるようになって)次第に大きくなり、唐の時代に19路盤に定まったようだ。なお、現在もミマンと呼ばれるチベット碁は17路盤となっている。

日本には、奈良時代に吉備真備(695-775)が遣唐使として唐から持ち帰ったという説があるが、701年に制定された大宝律令のなかにも「碁」に関する記述があること等から、5世紀頃に朝鮮から渡ってきたとする説が有力とされているようだ。

因みに、奈良の東大寺の正倉院にある碁盤3面は、19路盤となっており、中でも「木画紫檀棊局(もくがしたんのききょく)」が最も有名なものとなっている。
なぜ「19路盤」が標準的なものとなっているのか。
路盤の数については、「天元(てんげん)」と呼ばれる碁盤の中心点があるためには、奇数路盤でなければならない。結果的に19路盤となったことについて、19路盤の交点(目)が361(=19×19)あることに対して、これは古代中国の五行説3でいう1年の360日に対応しており、残りの一目を中央の「天元」に擬して、万物の根源と考えることで数を合わせていた、と言われているようだ。

19路盤でなければならないその他の合理的な理由があるのかについては、よくわからない。

囲碁は「地」という陣地取りのゲームだが、路盤の数が多くなればそれだけパターンが増加し、複雑なゲームになっていき、ゲーム時間は長くなってしまうことになる。路盤の数を増やすと、面白さは増すという面はあるが、一方で冗長になってつまらなくなってしまうという面もあるかもしれない。結局は、こうした両者のバランスを取る中で、最適なサイズとして19路盤に定着してきたのではないかと思われる。19路盤あれば、中央、辺、隅の各部位における陣地取りが、それぞれにおいて十分に興味深い形で行われていく形になる。
 
3 万物は水・金・土・木・火の5要素で構成されていると考える思想

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

新型コロナウイルス感染症は、世界保健機関(WHO)による国際正式名称を「COVID-19」と呼んでいる。これは「Coronavirus disease 2019」の略語となっている。2019年12月に中国の武漢で最初に発見されたことから、この名前が付与された。その後2020年に入ってから、世界中に感染が拡大し、世界的大流行(パンデミック)をもたらした。

COVID-19については、後遺症の存在等も言われており、幅広い意味において、今後もその影響が一定継続していくことが想定されている。その意味において、今後は、数字の「19」と言えば、多くの人がCOVID-19を思い出す形になるほどの強いインパクトを与えたものと思われる。

数学における数字としての「19」

「19」が、数学の場面で現れてくる例としては、以下のものが挙げられる。

・19は素数であり、13とセクシー素数、17と双子素数、23といとこ素数を形成している。

・三乗された2つの素数の差となるただ一つの数である。
 33-23=19

・ローマ数字ⅩⅨは逆にしても同じ

・全ての自然数は、高々19個の4乗数の和で表すことができる。(ウェアリングの問題)

・1919 (=1978419655660313589123979)は、パンデジタル数で、このようにmmという形で表現される十進法の数としては、最小。因みに、「パンデジタル数(pandigital number)」は、自然数のうちn進法において0から(n – 1) までの全ての数字を少なくとも1つ使って表される数

その他

その他に、数字の「19」や「十九」が現れるケースとして、例えば以下のものが挙げられる。

・日本語で発音が「重苦(じゅうく)」に通じるため、19という数字が忌み嫌われる場合がある。

さらには、自動車のナンバープレート等では、「4219」は「死に行く」として、縁起の悪い語呂合わせの数字として忌み嫌われているようだ。

・ゴルフでは、「19 番ホール」はクラブハウスバーを意味している。

・音律の中では、1オクターヴを12等分する(隣り合う音(半音)の周波数比を等しく21/12と設定する)という方法による「十二平均律」が有名で、現代の西洋音楽において一般的に使用されているが、1オクターヴを19等分する(隣り合う音(半音)の周波数比を等しく21/19と設定する)という方法による「十九平均律」も考案されてきた。

・以前の研究員の眼「数字の「17」は結構興味深い数字だって知っていますか」(2022.5.20)において、「17頭のラクダの分配」の話を紹介したが、類似の話は「17」を「19」に置き換えても成り立つことになる。ただし、この場合には「長男に2分の1、次男に4分の1、三男に5分の1」という分配になり、結果として「長男に10頭、次男に5頭、三男に4頭」分配されることになる。

最後に

今回は、数字の「19」について、それが現れてくる例やその理由等について、報告してきた。

メトン周期や囲碁の碁盤に、暦の1年の日数との関係等から「19」という数字が使用されていたようで、何とも興味深い話なのではなかっただろうか。

いずれにしても、「19」という数字も、何となく中途半端で不完全なイメージを持たれるかもしれないが、思いがけないところに現われてくる数字だということを認識していただければと思っている。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2023年04月21日「研究員の眼」)

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