コラム
2023年03月22日

数字の「11」に関わる各種の話題-「11」といえば、サッカーのイレブンをイメージする人が多いと思うが-

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はじめに

数字の「11」といえば、恐らく多くの方々が、サッカーの1チームのプレーヤーの数である「イレブン」を思い出されるのではないかと思われる。数字としての「11」は、素数であって、十進法のベースとなっている「10」と、約数を多く持ち、時間の単位との関係等でも馴染み深い「12」の間にあって、何となくとっつきにくい数字というイメージがあるのではないだろうか。もし、サッカーが11人でプレーされていなくて、「イレブン」という言葉が一般に普及していなかったら、何とも特徴のない数字になっていたかもしれない。

そもそもサッカーだけでなく、その他のスポーツでも11人で行われているケースがいくつか見られる。さらには、「11」という数字は、スポーツ以外の各種の場面でも現れてくる。

今回は、この数字の「11」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。

サッカーはなぜ11人で戦われるのか

実はこれに対する答えは、必ずしも十分には明確になっていないようだ。個人的には、いくつかの説があり、これらの説が入り混じった形で、何とか一定程度の説明が行われているというような印象を受けている。

例えば、英国の「Football Stadiums」からの記事1等に基づくと、私なりの解釈では、概ね以下の通りとなっているようである。

サッカー(英国におけるフットボール)は、当初はプレーヤーの人数が定められていなかった。学校や地域によって、さらにはその後に形成されていった全国の様々な協会の独自のルールによって、例えば各チームが20人以上等のプレーヤーでも行われていた。それが、19世紀が進むにつれて、より公式化されていった。

11人と定められたのは、多くの試行錯誤の結果でもあり、ゲームがプレーされるフィールドのサイズとの関係で、スペースをカバーできることを確保するのに適正かつ十分な人数であると、判断されたようである。

さらには、当時、イングランドにおいてはクリケットの人気が高かったが、多くのクリケットチームは、夏に健康を維持する方法としてサッカーチームを結成しており、そのため、クリケットと同じ11人が採用されたのではないか、とされている。フットボールチームのマネージャー達は、フットボールをクリケットと同様に人気のあるスポーツにしたかったので、選手の数をコピーした、とも言われているようだ。

なお、サッカーに関する最初のルールは1863年にリリースされたが、その中には各チームのプレーヤー数の規定はなかった。そうした中で、1866年に行われたロンドンとシェフィールドの試合は11人対11人で行われた。1870年代には11人で行われるようなルールも制定(イングランドで1871年に始まった(現在の)FAカップのルールにおいて確認できる)され、11人でのプレーが慣習的になっており、1882年に設立されたIFAB(国際サッカー評議会)が、国際試合の規則を統一するためのルールの制定を決定する機関となり、1897年に11人のプレーヤーとすることが義務付けられたことで、正式に決定されたとのことである。

それでは、クリケットはなぜ11人で戦われるのか

サッカーのプレーヤーの数が必ずしもクリケットに由来するものではないとしても、それではクリケットはなぜ11人で戦われるようになったのだろうか。

クリケットも、初期のチームの人数は固定されておらず、20人以上等でもプレーされていたようであるが、1697年には、サセックスで、1チーム11人での大金を掛けたクリケットの試合が行われたとの新聞報道がなされている。クリケットの基本的なルールが最初に制定された時期については明確ではないが、1728年にはクリケットの選手でパトロンでもあった第2代リッチモンド公爵チャールズ・レノックスらが、特定のゲームの実施規則を決定するための契約条項を作成しており、さらに1744年にはクリケットのルールが初めて成文化されて、11人というプレーヤーの数も固定されていったようである。

ただし、これだけでは、なぜ「11」という人数が選ばれたのかということについての理由は示されていない。王や王侯貴族の廷臣(courtier)の人数に由来しているとの考えもあるようだが、真偽のほどは定かではない。

アメリカンフットボールも11人で戦われる

アメリカンフットボールも11人で戦われる。

アメリカンフットボールは、サッカーとラグビーに端を発して、米国で発展してきたものとされているが、最初の大学間のアメリカンフットボールの試合が、1869年11月6日に、当時のサッカーのルールに基づいたルールを使用して、ラトガースとプリンストンという2つの大学チームの間で行われた。1880 年以降、現在「アメリカンフットボールの父」と呼ばれるウォルター・キャンプ氏によって起草された一連のルール変更により、11人という人数が確立されていったとのことである。

フィールドホッケーも11人で戦われる

フィールドホッケーも11人で戦われる。

そもそも、ホッケー自体、19世紀半ばに、英国のクリケットの選手たちが試合のできない冬季に始めたのが基礎とされており、1871年には最初のホッケークラブが結成され、1886年にはロンドンで協会が発足し、それを機に、ルールも統一されたとされている。このことからも推測されるように、フィールドホッケーの11人もクリケットに由来しているものと考えられることになる。

結局、これらのスポーツの人数が11人なのは

結局、これまで紹介してきたように、サッカー等のスポーツが11人で戦われることの理由としては、フィールドの標準的なサイズを考慮して、興味深いゲームプレーを保証するために最適なプレーヤー密度を実現するため、ということが挙げられるようだ。

例えば、FIFAワールドカップやオリンピックにおけるサッカー競技でのフィールドの大きさは、68m×105m、アメリカンフットボールのフィールドの大きさは、約49m×91.4m(160フィート×300フィート(なお、エンドゾーンを含めると360フィート))、フィールドホッケーのフィールドの大きさは、55m×91.4m(60.1ヤード×100ヤード)となっており、アメリカンフットボールとフィールドホッケーはサッカーと(一回り小さい感じだが)ほぼ同じフィールドの広さで、同じようなゲームプレーを共有していることから、全て11人で戦われることになったようだ。

「11」は、折り紙で折れない、正n角形では最小の数

正十一角形は、コンパスと定規(目盛り付でも)では作図不可能であり、折り紙でも折ることが出来ない(正三角形~正十角形、正十二角形は折り紙で折ることが出来る)。

「11」は、折り紙で折れない、正n角形では最小の数となっている。

(参考1)作図可能性に関する一般的な考え方

定規とコンパスによる作図では、角の二等分線が作図できることから、2 次方程式を解くことができるが、角の三等分線は作図できないので、3 次方程式を解くことはできない2

一方で、折り紙による作図では、角の三等分線が作図できることから、3 次方程式も解くことができる3

(参考2)折り紙の多重折りによる作図

折り紙の多重折りというのは、2 本以上の折り線を同時につける折り方をいう。

ロジャー・C・アルペリン(Roger C. Alperin)とロバート・J・ラング(Robert J. Lang)(1961‐ )により、一般の n 次方程式は(n – 2)重折りによって解くことができると示されている。

正十一角形の作図

正十一角形を折るためには、5次方程式を解く必要がある4。このため、正十一角形は3重折りを用いれば折ることができることになる。
 
4 ここでは詳しくは述べないが、正p角形が作図可能であることは、cos (2π/p)が作図可能であることと同値になり、後者はp=2n+1とした時には、n次方程式が解ける(ただし、nが素因数分解されて、それぞれを解くことで解ける場合を含む)ことと同値になる。pがフェルマー素数(p=2a+1)の場合には、正p角形は定規とコンパスで作図可能となり、pがピアポント素数(p=2a×3b+1)の場合には、正p角形は(通常の)折り紙で作図可能となる。

数学における数字としての「11」

「11」を意味する英語の eleven やドイツ語の elf の語源は、「残りが一つ」とされている。これは、指で10まで数えた後に一つ残ることを意味している。このように十進法が普及している世界においては、「11」は決して切りの良い数字ではないことになる。

ただし、「11」も、数学に関するいくつかの性質を有している。1つだけ挙げるとすれば、「11」は最小の「レピュニット素数」である、ということがある。

レピュニット数(Repunit)」というのは、1, 11, 111, 1111, … のように全ての桁の数字が 1である自然数のことを言う。Repunitという用語は、repeated unitに由来している。十進法におけるn桁のレピュニット数は、Rn=(10n-1)/9 で表される。

レピュニット数が素数である場合に、レピュニット素数と呼ばれるが、R2=11 の次のレピュニット素数は、1が19桁並ぶR19 となる。

11の倍数の見つけ方

ある数が11で割り切れるかどうかの判定法として、小数点から奇数桁目の位の和と偶数桁目の位の和の差が11の倍数ならば、この数は11の倍数である、というのがある。

別の判定法として、連続する2つの位ずつのグループに分け(桁数が奇数ならば先頭に 0 を加える)、分割された数の和が 11 で割り切れるならば、その数は 11 で割り切れる。

11月11日は記念日の設定が多い日

同じ数字が並ぶ日は、日本において記念日に設定されることが多いが、11月11日は、10月10日と並んで、1,2位を争う人気のある日となっている。

「1」が4つ並ぶことになるが、「1」を棒状の食品や日用品に見立てることで、記念日に結び付けているケースが多いようだ。例えば、「麺の日」、「ポッキー&プリッツの日」、「たくあんの日」、「もやしの日」、あるいは「下駄の日」、「配線器具の日」、「靴下の日」等々である。

また、「十一十一」がプラス・マイナス・プラス・マイナスにみえることから、「電池の日」に、さらには、漢字の「鮭」のつくりが「十一十一」にみえることから、「鮭の日」にも指定されている。

なお、厚生労働省は、2008年に「いい日、いい日、毎日あったか介護ありがとう」というキャッチフレーズより「いい(11)日いい(11)日」の語呂合わせから、「介護の日」に設定している。

これ以外にも数多くの記念日に設定されている。

なお、海外を見れば、1918年11月11日に第一次世界大戦が停戦したことを記念して、欧米諸国において、11月11日が祝日や記念日になっている。例えば、米国においては、「復員軍人の日」(「退役軍人の日」あるいは「ベテランズ・デー(Veteran's Day)」とも呼ばれる)として、復員軍人を称えるための日として祝日となっている。英国では、「戦没者追悼記念日」あるいは「リメンバランス・デー(Remembrance Day)」、フランスでは「休戦記念日(Jour de l'Armistice)」になっている。

なお、中国においては、11月11日は、「光棍節(こうこんせつ)」5と言われ、「独身の日」(いわゆる「11(ダブルイレブン)」となっている。この日には、独身者同志が集まってパーティーを開いたり、独身者が結婚相手を探したりといった、様々な活動が行われており、アリババグループ等の各大手通販サイトが一斉に大規模販促イベントを行うことで、年間で最大の売上を計上する日となっている。
 
5 「光棍」が独身、「節」が祝日を意味している。

最後に

今回は数字の「11」について、それが現れてくる例やその理由等について、報告してきた。

「11」という数字は、サッカーの「イレブン」に代表されるように、いくつかの類似のスポーツの1チームのプレーヤーの人数として認識されている人々も多いと思われるが、実はこれらのスポーツが11人でプレーされている由来については、必ずしも十分に明確というわけではないようだ。

ただし、その他にも「11」という数字は、各種の場面で現れてくることで、結構興味深い、愛すべき数字だと再認識していただければと思っている。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2023年03月22日「研究員の眼」)

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