コラム
2023年10月03日

数字の「23」に関わる各種の話題-「23」という数字は、と問われても、殆どの人が具体的なイメージは湧かないと思うが-

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はじめに

「23」という数字で何を思い出すかと問われても、殆どの人は具体的なイメージは湧かないものと思われる。もちろん、「東京23区」を挙げる人は少なくないかもしれない。さらに数学好きの人ならば「ヒルベルトの23の問題」を思い浮かべる人もいるかもしれない。

今回は、この数字の「23」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。

東京23区

東京都区部(旧東京市)には、23個の特別区が設置されており、この23個をまとめて「東京都区部」と呼び、一般的には「東京23区」と呼んでいる。

東京23区の歴史について、東京都公文書館のWebサイトの説明1によれば、概ね以下の通りとなっている。

そもそも東京に「区」が設置された明治11年には15区で、現在の23区に相当する範囲の他の地域は「郡」等だったりした。ところが都市化の結果、昭和7年に周辺の郡や市町村が東京市に編入され、改編によって新たに20区が設置されて35区になり、「大東京市」が成立した。それが昭和18年に東京府と東京市が統合して東京都になった。1947年には、戦災による各区の間の人口その他の甚だしい差異の発生等の理由から22区に整理統合され、さらに板橋区から練馬区が分離して、現在の23区になっている。

これらの結果として、現在の東京都は、23区と26の市、5つの町と8つの村で構成されている。

ということで、もちろん「23区」になったのは、たまたまであって、決して意図して「23」という数字になったわけではない。それでも、東京が23区でなかったら、「23」という数字で思い浮かぶ具体的なものは何もないという人が多かったかもしれない。

因みに、世界の大都市の行政区の数をみてみると、(それぞれの「区」の持つ役割等が必ずしも同一ではないので、単純な比較はできないが)ロンドンは(シティ・オブ・ロンドンを除いて)32の特別区、パリは20区、ニューヨークは「ボロー(borough)」と呼ばれる 5 つの行政区、北京市は8つの行政区等となっている。

ヒルベルトの23の問題

「ヒルベルトの23の問題(Hilbert(‘s) 23 problems)は、ドイツ人の数学者であるダフィット・ヒルベルト((David Hilbert)によってまとめられた、当時未解決だった23の数学問題のことを指している。

これらの23の問題の現状については、解決されたもの、部分的に解決されたもの、否定的に解決されたもの、未解決のものと様々になっている。

未解決問題としておそらく最も有名なものが、「リーマン予想(Riemann hypothesis)」と呼ばれる、素数の分布に関係しているものである。これは、米国のクレイ数学研究所によるミレニアム懸賞問題2の1つにもなっている。
 
2 ポアンカレ予想等の7つの問題があり、ポアンカレ予想以外の6つは2023年6月末時点で、未解決のままである。

ヒトの生殖細胞に含まれる染色体の数は23対の46本

細胞核のなかには複数の染色体があり、その本体がDNAで、このDNAのなかに遺伝子があり、DNA上に並ぶアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4つの物質の組み合わせで遺伝情報を伝えている。

ヒトの場合、染色体は1つの細胞に46本あり、そのうち44本は常染色体、残りの2本は男女の性別を決定づける性染色体となっている。性染色体にはXとYの2種類があり、女性の場合はX染色体が2本、男性はX染色体とY染色体が1本ずつとなっている。

46の染色体は、父親から受け継いだものと母親から受け継いだものがペアとなって、23対となっている。

それではなぜ「23対」なのか、ということについては科学的な理由があるわけではないようだ。染色体という構造については割と不安定で、融合・分裂・転座といった組み替えがしばしば起きており、たまたま「ヒト」という種の染色体数が「23対」になったとのことのようだ。

よく知られているように、ヒトとチンパンジーとでは、遺伝子がほとんど同一でありながら、チンパンジーの染色体の数は「24対の48本」となっている。

ラテン語は23文字

ラテン語は23文字あり、これに J、U、W を加えた26文字が、現在において英語において一般的に使用されている「ラテン文字」(我々は通常「ローマ字(ローマ文字)」と呼んでいる)となっている。これがまた、一般的に「アルファベット」と呼ばれているが、正式には「英語アルファベット(English alphabet)」と呼ばれるもので、ドイツ語やフランス語等の欧州言語のアルファベットを含む「ラテンアルファベット」の一種となっている。

 そもそも「ラテン語」というのは、古代ローマ帝国の公用語で、ラテン文字はラテン語の文字として普及したが、元々は20文字しかなかった。その後の領土拡大に伴い、様々な民族の言葉が取り込まれて、G、Y、Zが加わって、ローマ帝国の時代には23文字となっていた。

その後、10世紀以降に、UとW、最後にJが加わって、現在の26文字となっている。

因みに、ドイツ語は、ラテン文字の26字に、いわゆるウムラウト付の3文字とßが加わった30文字、フランス語は、ラテン文字の26字に、独自の14字が加わった40文字、となっている。

23エニグマ(23 enigma)

「23エニグマ」というのは、「23」という数字が、特別かつ特殊な重要性を持つという思想である。

23の謎については、様々な書籍や映画等によって広められてきており、この考え方によれば、23 という数字が様々な文脈で異常な頻度で出現し、より大きな隠された重要性の象徴である可能性があることが示唆されている。特に、西洋においては、23 は 13 と同様に凶兆を表す数字であると、ウィリアム・S・バロウズ等がその著書で主張している。

23 という数字に対する恐怖は「eikositriophobia」(ギリシャ語の23を意味するeikosi(twenty)、tria(three)という言葉から)と呼ばれる。

誕生日のパラドックスにおける23

「誕生日のパラドックス」については、以前の研究員の眼「人間の直感の不確実性-数学的な正しさと乖離している場合があることを知っていますか-」(2016.9.6)で紹介した。そこで述べたように、「23人いれば、その中で同じ誕生日を持つ複数人の組が少なくとも1組できる確率が初めて1/2 より大きくなる」。

この場合の「23」に特別な意味があるわけではないが、このような文脈で「23」という数字が挙げられることもある。

数学における数字としての「23」

「23」が、数学の場面で現れてくる例としては、以下のものが挙げられる。

・23は言うまでもなく素数であるが、「最小の素な素数」となる。「素な素数」というのは、右側から数字を落としていっても残る数は全て素数のものをいう。

・ウェアリングの問題で、9個の立方数が必要な最小数である。つまり、8個以下の和では表せない。

23 = 13 + 13 + 13 + 13 + 13 + 13 + 13 + 23 + 23

因みに、立方数が9個必要なのは他に239しかない。

・2 次元幾何学において、正二十三角形は、定規とコンパスや角の三等分線の助けを借りて作図できない最初の正多角形となる(フェルマー素数でもピアポント素数でもない)3
 
3 以前の研究員の眼「数字の「11」に関わる各種の話題-「11」といえば、サッカーのイレブンをイメージする人が多いと思うが-」(2023.3.22)でも触れたが、正p角形が作図可能であることは、cos (2π/p)が作図可能であることと同値になり、後者はp=2n+1とした時には、n次方程式が解ける(ただし、nが素因数分解されて、それぞれを解くことで解ける場合を含む)ことと同値になる。pがフェルマー素数(p=2a+1)の場合には、正p角形は定規とコンパスで作図可能となり、pがピアポント素数(p=2a×3b+1)の場合には、正p角形は(通常の)折り紙で作図可能となる。

その他

その他に、数字の「23」や「二十三」が現れるケースとして、例えば以下のものが挙げられる。

・FIFA ワールドカップやFIFA 女子ワールドカップに出場する各代表チームには、1チーム23人の選手が認められている(男子は2002 年から、女子は2015 年から)。

・地軸(地球が自転する際の軸(自転軸))は、公転軸に対して約23度(約23.4度)傾いている。

最後に

今回は数字の「23」について、それが現れてくる例やその理由等について、報告してきた。

冒頭で、「「23」という数字で何を思い出すかと問われても、殆どの人は具体的なイメージは湧かないものと思われる。」と述べた。もちろん「東京23区」というのを思い出す人も多いと思われるが、それ以外にはと聞かれると、はたと困ってしまうだろう。ところが、調べてみると、ヒトの染色体の対の数でもあり、その意味では重要な意味合いを有する数字だともいえなくもないことがわかる。

数字の「23」を再評価してもらえればと思っている。

(2023年10月03日「研究員の眼」)

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