コラム
2016年09月06日

人間の直感の不確実性-数学的な正しさと乖離している場合があることを知っていますか-

中村 亮一

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はじめに

人間の直感が非常に役に立つことは理解されるが、時として、この直感が数学的には正しくないことがあることは有名な話である。今回は、そうしたケースを2つ紹介したい。

誕生日のパラドックス

一番有名なのは、「誕生日のパラドックス」と呼ばれているものである。具体的には、「現在1つの部屋にn人の人がいるとする。この時に、誕生日が同じ人がいる確率はいくらか。」という問題である。あるいは「何人の人がいれば、その中で誕生日が同じ人がいる確率が50%以上になるのか。」という問題である。

これに対する答えについては、一般的に多くの人は、直感的に、相当多くの人数を想定してしまう。極端なことを言えば、365日の1/2の183人が必要だと思う人もかなりいると思われる。

ところが、この答えは23人ということになる。23人の人がいれば、少なくとも誕生日が同じ一組が存在する確率が50%を超えることになる。これは、数学的に極めて簡単に証明できる。

n人の誕生日が全て異なる確率を p(n) とする。

2人目が1人目と異なる誕生日である確率は、364/365 。3人目が1人目及び2人目と異なる誕生日である確率は 363/365 。同様に4人目は 362/365、…、n人目は (365-n+1)/365 となる。従って、n人の誕生日が全て異なる確率は、以下の通りとなる。
n人の誕生日が全て異なる確率
よって、n人の中で同じ誕生日の人が少なくとも2人いる確率 q(n)  は、
n人の中で同じ誕生日の人が少なくとも2人いる確率 q(n)
となり、n=23の場合に、この数値は  0.507 となって、50%を超えることになる。

同じ考え方により、41人の人がいれば、90%以上の確率で、70人の人がいれば、99.9%以上の確率で、誕生日が同じ人がいることになる。これは、直感的には驚くべきことのように思われるのではないか。

いずれにしても、これが「パラドックス」と呼ばれるのは、論理的な矛盾がある、という意味ではなく、あくまでも、一般的な直感に反している、という意味で、このように称されている。

一方で、この数値を100%にするには、当然のことながら、366人(うるう年も考慮すれば、367人)必要ということになる。

これから、わかることは、100%を追求することは極めて難しいということ、わずか0.1%のために5倍以上の人が必要になることになる。似たような例は他でもあると思われる。100%を追求するのはよいことだが、効率性も考慮した対応が、往々にして求められることになる。

誕生日問題

これまでは、部屋の中の誰でもよいので、少なくとも2人の誕生日が一致している確率を述べてきた。これが特定の人が誰か他の人と誕生日が一致している確率となると、極めて低いものになる。

23人の場合にはわずか6%であり、50%を超えるためには、253人いなければならなくなる。さらに、99%以上の確率となるためには、1,679人、99.9%以上の確率となるためには2,518人いなければならない。

即ち、先ほどの、n人の部屋に特定の人と同じ誕生日の人がいる確率 r(n)  は、
n人の部屋に特定の人と同じ誕生日の人がいる確率 r(n)
となる。

実は、この誕生日のパラドックス情報科学において様々に応用されており、代表的なものでは、ハッシュテーブルというデータ構造におけるテーブルの大きさを決めるのに、誕生日のパラドックスの結果が利用されている。
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