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- ベスト・ベターな秘書をどうやって選んだらよいのか-「秘書問題」で効率的な選択を実現する-
コラム
2016年06月20日

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はじめに
いくつかの選択肢がある場合に最適の選択を行うには、どのような基準に基づいて行えばよいのかという問題は、常に悩ましい問題である。いくつかの条件が複雑に絡み合って、物事は単純には解決しない。ただし、数学の世界では、一定の条件の下での、最良選択をどのように行うべきかの研究が行われており、簡単な例ではシンプルな結論も得られている。
このレポートでは、一般的に「秘書問題」と呼ばれるものを紹介する。これは、しばしば「結婚問題」や「最良選択問題」等幅広くいろいろな呼び方をされているものである。最初のいくつかの選択肢を見送った後、それらの選択肢との比較に基づく一定の基準に従って、最終的な選択を行うという典型的な「最適停止問題」のケースとなっている。
このレポートでは、一般的に「秘書問題」と呼ばれるものを紹介する。これは、しばしば「結婚問題」や「最良選択問題」等幅広くいろいろな呼び方をされているものである。最初のいくつかの選択肢を見送った後、それらの選択肢との比較に基づく一定の基準に従って、最終的な選択を行うという典型的な「最適停止問題」のケースとなっている。
秘書問題-最良選択問題-
ということになる。この時、最良の応募者を採用できる確率は1/e、即ち約37%となる。これにより、この最適戦略については、「37%の法則」とか「37%ルール」と呼ばれることもある。
秘書問題のバリエーション-順位最小化問題-
このように、「順位最小化問題」の場合には、「最良選択問題」の場合と比べて、スキップする人数がより少なくなる。一般的な感覚としては、この最適戦略の方がより実感に合っているかもしれない。
なお、順位の期待値の最小値は、応募者数nが大きくなると大きくなっていくが、それでも3.87という値に近づいていくことが証明されている。即ち、上記の戦略に従えば、nがどんなに大きくても平均的には4位以下の人を選ぶことができる、ということになる。
なお、順位の期待値の最小値は、応募者数nが大きくなると大きくなっていくが、それでも3.87という値に近づいていくことが証明されている。即ち、上記の戦略に従えば、nがどんなに大きくても平均的には4位以下の人を選ぶことができる、ということになる。
秘書問題の実際
以上、シンプルなケースにおける理論的にあるべき最適戦略について、述べてきた。
ただし、実際の選択の場面では、人は早めに決定を行う傾向がある。例えば、秘書問題の最適戦略を採った場合において、最初のn/e人の中に最良の応募者が含まれていた場合には、結局は最後の応募者を選択することになる。その場合には、その応募者の順位の期待値は、全体の平均ということになってしまう。従って、一般的には、一定程度満足感が得られるのであれば、最適でなくてもそれを選択する傾向が強いことになる。不採用を決断して、その後の応募者に満足できなかった場合には、以前の応募者を失ったことに伴う損失感が大きくなりがちだからである。
さらに、現実に当てはめてみた場合、実際には、ここで述べた秘書問題における前提は、必ずしも十分に満たされるわけではない。
特に、「6.応募者は採用を決して断わらない。」との前提は、よほど採用者側に絶対的な優位性がない限り、かなり難しい前提になっている。特に、これを「結婚問題」に当てはめる場合には、自分に絶対的な選択権がある人は、そうはいないことから、必ずしも適切な前提とはいえず、あくまでも参考として考えるしかない。
一方で、「5.不採用にした応募者を後から採用することはできない。」も必ずしも当てはまらないかもしれない。現実には、複数段階の選択で、採用する側と採用される側の意思の相互確認が行われていくプロセスが、多くのケースで利用されているものと思われる。
ここで、紹介したものは、あくまでも基本的でシンプルなケースに相当するものである。例えば、応募者に拒否権があるケースや複数の応募者が選択されるケース等のより複雑な前提下での最適戦略の研究も行われている。
いずれにしても、こうした理論上の最適戦略が現実にどの程度適合するのかという問題は別にして、こうした理論の存在を一定程度認識した上で、事に臨むことも重要なことであると考えられる。
ただし、実際の選択の場面では、人は早めに決定を行う傾向がある。例えば、秘書問題の最適戦略を採った場合において、最初のn/e人の中に最良の応募者が含まれていた場合には、結局は最後の応募者を選択することになる。その場合には、その応募者の順位の期待値は、全体の平均ということになってしまう。従って、一般的には、一定程度満足感が得られるのであれば、最適でなくてもそれを選択する傾向が強いことになる。不採用を決断して、その後の応募者に満足できなかった場合には、以前の応募者を失ったことに伴う損失感が大きくなりがちだからである。
さらに、現実に当てはめてみた場合、実際には、ここで述べた秘書問題における前提は、必ずしも十分に満たされるわけではない。
特に、「6.応募者は採用を決して断わらない。」との前提は、よほど採用者側に絶対的な優位性がない限り、かなり難しい前提になっている。特に、これを「結婚問題」に当てはめる場合には、自分に絶対的な選択権がある人は、そうはいないことから、必ずしも適切な前提とはいえず、あくまでも参考として考えるしかない。
一方で、「5.不採用にした応募者を後から採用することはできない。」も必ずしも当てはまらないかもしれない。現実には、複数段階の選択で、採用する側と採用される側の意思の相互確認が行われていくプロセスが、多くのケースで利用されているものと思われる。
ここで、紹介したものは、あくまでも基本的でシンプルなケースに相当するものである。例えば、応募者に拒否権があるケースや複数の応募者が選択されるケース等のより複雑な前提下での最適戦略の研究も行われている。
いずれにしても、こうした理論上の最適戦略が現実にどの程度適合するのかという問題は別にして、こうした理論の存在を一定程度認識した上で、事に臨むことも重要なことであると考えられる。
このP(r)の最大値については、nが大きくなるにつれて減少する。そして、「nが無限大に近づくと 1/eに収束する。」ことが証明されているが、これについては、ここでは詳しくは触れない。
(2016年06月20日「研究員の眼」)
中村 亮一のレポート
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