コラム
2016年02月16日

意外と知らない「ゼロ」の持つ意味と概念―あなたも「ゼロ」という数字から、知的探求、始めてみませんか?-

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はじめに

最近、インドの生命保険市場について、調査していたことから、インドの統計数字をよく見る機会があった。インドの「命数法(数に名前をつけて呼ぶ方法)」は、基本的には、日本で一般的な4桁毎の位取りや、西洋で一般的な3桁毎の位取りではなく、2桁毎の位取りに基づいている。ただし、最初の3桁のみが例外になっているので、この点が若干ややこしい。

よく使われるものに、「ラーク (lakh)」、「カロール (crore)」 という命数があるが、これらは、それぞれ1,00,000と1,00,00,000を表している。インドでの各種の統計数字や英字新聞等でも普通に使用されているので、インドでビジネスを行う場合には必須であり、一般の人も覚えておくと役に立つものと思われる。
 

「0(ゼロ)」が果たしている役割-数字の表記における意味合い-

日本は4桁毎の位取りをしていると述べたが、これに対応した命数法は「万」、「億」、「兆」、「京」等といった形になっている。一方、3桁毎の位取りをしている英語では「thousand」、「million」、「billion」、「trillion」等といった形になっている。世界の各国がそれぞれの言語に基づいた「命数」を有しているが、これらを覚えるのは易しいことではない。ただし、これを数字で表してしまえば、誰でも数字の大きさのレベルを理解できることになる。

この際、現代世界では、通常、「0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 」の十種類の「アラビア数字(インド・アラビア数字)」が幅広く用いられる。例えば、「2,704」というような数字を表現することを考えてみると、これを「ローマ数字」で表すと、「MMDCCIV)(M=1,000、D=500、C=100、IV=4)となる。ローマ数字は、「0」を表す表記を持たず、その一般的なルールに従った場合、4,000以上の値を表現できないが、アラビア数字では、「0」を用いることによって、どんな大きな数字も簡単に表現できる。

これに対して、「命数法」による数字の表現については、日本において「無量大数(一般的には1068を指すとされる)」の次は、と考えていくと、(もちろん「千無量大数(1071)」のような表現もあると思われるが)実質的に制約があるものと思われる。

このように、数字の表記においては、空位を示す「0」の存在が、その簡明さと実用性において、極めて重要な役割を果たしている。
 

「インドはゼロを発見した国」が意味するところは

インドは、「ゼロを発見した国」と言われるが、これの意味するところは、「零の発見-数学の生い立ち-」(吉田洋一著)、「数学史の小窓」(中村滋著)、「インドの数学-ゼロの発明-」(林隆夫著)等によると、以下の通り、「数としてのゼロを発見した国」ということになる。

(1) 「記号としてのゼロ」
「記号としてのゼロ」とは、先に述べたように「位取り表記で空欄を示すための記号」を意味している。「記号としてのゼロ」が、最初に使用されたのは、紀元前数世紀のバビロニアで、プトレマイオス朝(紀元前306年紀元前30年)のエジプトでも使用されていた。この有用性については、既に述べた通りである。

(2) 「数としてのゼロ」
インドでは、2世紀頃に、「空白」「うつろな」等を意味するサンスクリット語の「Sunya」が「ゼロ」や「無」を意味する言葉として使われていたが、そのころは数字として扱われていたわけではなかった。

7世紀(紀元628年)に、数学者・天文学者であるブラーマグプタが、その天文に関する著書「Brahmasphuta Siddhanta」(宇宙の始まり)において、「0(ゼロ)と他の整数との加減乗除」について論じ、0/0を0と定義した以外は全て現在と同じ定義を用いた。これが、「数としてのゼロ」、即ち「数学的演算の対象として、初めて0(ゼロ)を取り扱った」形になっている。

「数としてのゼロの発見」により、0(ゼロ)を含んだ表記法で表された数字の計算が行えるようになり、「0(ゼロ)が加法(足し算)における単位元」として確立されることになった。

なお、「アラビア数字」については、インドを起源としているが、アラビアに伝わり、さらにヨーロッパに広まっていった。それまで、ヨーロッパの人々はローマ数字を使っていたが、より表記が簡明なアラビア数字が広まっていくことになる。
 

日常生活におけるゼロの持つ意味

さて、我々は、「0(ゼロ)」という数字を何気なく使用しているが、その意味するところや使われ方は状況によって様々である。ここでは、哲学的・精神的な観点等からの意味合いではなく、あくまでも実用的な観点から、「0(ゼロ)」が使用されているケースを考えてみる。例えば、以下のようなものが挙げられる。

(1)何も無いことの表示
「0(ゼロ)」はもちろん「無」「空」という意味において、何も無いことを表すのに用いられる。

(2)各種の数字の起算点
「0(ゼロ)」は各種の数字で表される事象等の起算・基準点としても使用されている。時刻、場所(緯度・経度・高度)、距離、各種の科学的な数値(温度、重量)等数多くのケースが挙げられる。この場合には、起算・基準となる「0(ゼロ)」が、いつ、どこで、どのような状態等を意味しているのか、を明確に定義しておく必要がある。

一方で、類似したケースで、「0(ゼロ)」を使用することが考えられるケースでも、以下のように、通常は「0(ゼロ)」を使用していない場合も見られる。

(1)西暦年数の呼称
西暦年数の呼び方については、一般的には西暦1年の前は紀元前1年であり、西暦0年という言い方はしない。これは、日付や年月は序数を表すから、と言われている。

ただし、天文学ISO 8601(日付と時刻の表記に関する国際規格)では、紀元前1年は、西暦0年と定められている。

(2)住居の階数
住居の階数の呼び方が、米国と英国で異なっているのは良く知られている。米国式では、1階はFirst Floor であるが、英国式では、1階はGround Floor で2階がFirst Floor となる。英国でもZeroth Floorとは言わない。

ただし、コンピューターの分野等では0から数えることもあるので、1st(First)、2nd(Second)と同様に、0th(Zeroth)という言い方もある。

ゼロか零か

日本語では、「0」の呼び方や記載方法として、「ゼロ」と「零(れい)」がある。その区別は必ずしも明確ではない。一つの考え方として「ゼロ」は全く無し、という意味であるが、「零(れい)」には、零細企業の表現に見られるように、「わずかに」「規模が小さい」という意味もある、とされる。

従って、天気予報における降水確率の「0%」は必ず「れいパーセント」と読まれ、「ゼロパーセント」とは読まれない。これは、降水確率そのものが、「算出の際、1%の位は四捨五入されるため、降水確率0%といっても、実際には0%から5%未満の値である」ことによる。

一方で、「ゼロ」を意味する「0点」については、試験の点数の場合は「れいてん」と読まれ、科学等で使用される場合には、あくまでも基準点を示しているという意味合いから「ゼロてん」と読まれるケースが多いものと思われる。一方で、「零」についても、通常は「零下」「零点」「零敗」等「れい」と読まれるケースが多く、それが常用漢字の読み方に対応したものとなっていると思われるが、一方で、「零戦(ゼロせん)」とか、映画やゲームのタイトルでは「零」を「ゼロ」と読ませる形で使われるケースが多いように思われる。

結局は、明確なルールがあるわけではなく、過去からの習慣的な要素等も大きく関係しているようである。

最後に

数字の「0(ゼロ)」については、現代においては、あまりにもその存在が自然で当然過ぎて、日常生活においては、その存在意義や意味合いについて考えて見る機会もないものと思われる。ただし、その起源等を探ってみると、本当は極めて奥深いものがあり、結構複雑で重要な意味を持つものであることがわかる。ここでは、その一端を簡単に紹介させていただいた。興味深く感じた人は、ゼロに関する著書も多く出版されているので、そちらを参照していただきたい。
 

(2016年02月16日「研究員の眼」)

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