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ランダムかどうかの判断-分析に用いている乱数は、本当にランダムといえるか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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例えば、経済予測をする際に、経済モデルを設定して、シミュレーションを行うことがある。そこで用いる金利や為替等の前提条件に、ランダムな変動を織り込むことで、シミュレーション結果の現実味を高めることができる。このため、昔から、計算によってランダムな数(乱数)を発生させる手法が考えられてきた。
しかし、計算式で乱数を発生させようとしても、最初はそれらしいものが得られるが、長い数列を見ていくと、やがて同じ数が繰り返し現れてしまう。そこで、数列の長さをものすごく長くして、簡単には繰り返しが起こらないようにするといった工夫が考えられている。しかし、それでも、何億個、何兆個もの乱数列を計算式で発生させようとすると、繰り返しの問題が生じてしまう。このように、ある計算式によって得られる数列は、本当の乱数ではないので、擬似乱数と呼ばれている。そもそもランダムである乱数を、何かの計算式を使って発生させるというのは、自己矛盾していると言えよう。
そこで、計算式で発生させる代わりに、既にある数を利用してはどうか、という発想に行き着く。その代表的なものとして、円周率πが挙げられる。
π=3.141592653589793… と続く円周率は、小数点以下が無限に続くことが知られている。それだけではなく、いまのところ、小数点以下の数値の並びに規則性が見つかっておらず、その一部分を切り出して乱数として使うことができる。ただし、何か隠れた数学的な規則性があるに違いない、と信じている数学者や統計学者も多く、その研究も進められている。円周率の数の並びは、現在知られている中で、かなりランダムに近いと言えよう。
次に、与えられたものが、ランダムかどうかを判断することを考えてみよう。例えば、aとbを20個並べた文字列である、列Iと、列IIが、与えられたとしよう。
順番 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
列I | a, | a, | a, | a, | a, | b, | b, | a, | b, | b, | a, | a, | b, | a, | b, | b, | a, | b, | b, | b |
列II | a, | b, | b, | a, | b, | a, | b, | a, | a, | b, | a, | a, | a, | b, | a, | b, | b, | a, | b, | b |
このように2種類の文字が並んだ列のランダム性を、統計的に判定する手段として、「ウィルコクソンの順位和検定」という方法がある。この方法は、文字の列がランダムであるかどうかの判定ではなく、ランダムではないかどうかの判定を行う。以下に示すとおり、具体的な内容は、かなり技術的だが、感覚ではなく、数量的に、ランダム性についての判定を行うことができる。
(2016年02月01日「研究員の眼」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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