2023年10月24日

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■要旨

新型コロナウイルス禍に入って間もない2020年前半に、「オフィス不要論」を唱えて、早々とオフィスを退去・縮小移転しフルリモートワークなど在宅勤務を中心とする体制に移行する動きが、従業員規模が数十人以下の小回りの利くスタートアップを中心に一部の企業で見られた。現時点では、「オフィス不要論は行き過ぎ」との見方が大勢を占めているが、2020年前半当時では、多くの経営者や有識者は、コロナ禍初期で先を見通せなかったこともあり、このオフィス不要論を全否定することもできず、「オフィスは本当に必要なのかどうか」について確信を持って判断することができずにいたとみられる。

このような中で、筆者は2020年5~6月に、「イノベーションを起こすにはフェイストゥフェイスのコミュニケーションが欠かせず、バーチャル空間でのやり取りだけでは限界がある」「メインオフィス(本社、中核的な研究所、主要地域に立地する中核的な各種拠点など本拠となるオフィス)の重要性は今後も変わらない」との主張をいち早く明確に打ち出した。その後、このような考え方を体系的にまとめた論考として、拙稿「アフターコロナを見据えた働き方とオフィス戦略の在り方(前編)」ニッセイ基礎研究所『基礎研レポート』2021年3月30日(オリジナル版)、同「アフターコロナを見据えた働き方とオフィス戦略の在り方」ニッセイ基礎研究所『ニッセイ基礎研REPORT』2021年6月号(概要版)、同「アフターコロナを見据えた働き方とオフィス戦略の在り方」ニッセイ基礎研究所『ニッセイ基礎研所報』Vol.65(2021年7月)(再構成版)を発表した(以下、筆者が2021年に執筆したこの3本の論考をまとめて「2021年拙稿」という)。筆者はその後も、論考執筆や講演などを通じて、この考え方を一切ブレることなく「普遍的な原理原則」として提唱し続けてきた。

2021年拙稿では、コロナ後の働き方とオフィス戦略に関わる「原理原則」となるべき2つのキーワード、すなわち「『メインオフィス』と『働く環境の選択の自由』の2つの重要性」を中心に、GAFA(グーグル、アップル、メタ(旧フェイスブック)、アマゾン・ドット・コム)など米国の先進的な巨大ハイテク企業の事例を交えて考察した。

2021年拙稿での考察とそれ以降の状況を踏まえて、本稿と次稿の2編にわたり、筆者の主張に合致する数少ない日本企業の先進事例としてGMOインターネットグループ株式会社(以下、GMOインターネットグループ)を取り上げ紹介するとともに、その事例考察などから得られるインプリケーションを示したい。まず、前編の本稿では、筆者が2021年拙稿にて提唱した考え方を踏まえながら、GMOインターネットグループについて、同社プレスリリース資料や各種メディア記事などの公開資料を基に、コロナ禍で取られた主要な施策を中心に考察を加えたい。

■目次

1――はじめに
2――数少ない日本企業の先進事例、GMOインターネットグループに学ぶ
 :(1) 環境変化への迅速な適応力・柔軟性
  1|産業界に先駆けていち早く新型コロナのBCP対策として大規模導入した在宅勤務
  2|BCP対策の迅速な振り返りとそれを反映したブラッシュアップの繰り返し
  3|新型コロナに関連する情報を集めた特設サイトの公開は高い志に基づく社会貢献活動
  4|テレワーク制度の稼働による「2つの重要性」の同時実践
  5|独自の明確なルールに基づくコロナ禍での勤務体制の機動的・弾力的な運用方針
  6|コロナ感染対策は段階的緩和を経て2023年2月に完全撤廃へ
3――前編のむすび
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社会研究部   上席研究員

百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)

研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、イノベーション、企業不動産(CRE)、AI・IOT、スマートシティ、CSR・ESG経営

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レポート紹介

【コロナ後の働き方とオフィス戦略の再考(前編)-日本の先進企業、GMOインターネットグループに学ぶ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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