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行きたくなるオフィスとは何か?-フルパッケージ型オフィスのすすめ
社会研究部 上席研究員
百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)
研究・専門分野
企業経営、産業競争力、イノベーション、企業不動産(CRE)・オフィス戦略、AI・IOT・自動運転、スマートシティ、CSR・ESG経営
03-3512-1797
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その中でも、「従業員が一人でもできる作業は在宅勤務でこなせるため、オフィスは、従業員がコミュニケーションを交わしコラボレーションを実践する創造的な場に変えるべき」との意見が多く聞かれる。これは、在宅勤務とオフィスワークの役割・能を厳格に切り分けようとする考え方だ。この考え方を突き詰めると、固定席など一人で集中できるスペースが撤去される一方、座席を固定せずに共用する「フリーアドレス」や「ホットデスキング」が導入され、従業員同士の交流を促すオープンな環境に特化したオフィスに行き着くだろう。
このようなコラボレーション機能に特化したオフィスでは、メインオフィスが本来担うべき、イノベーション創出の起点や企業文化の象徴としての機能を十分に果たせない、と筆者は考える。
従業員がイノベーションにつながり得るアイデアを生み出すプロセス例を考えてみよう。まず、オフィス内のインフォーマルなコミュニケーションを促す休憩・共用スペースなどで、異なる部門の従業員との何気ない雑談・会話や時には白熱した議論から、これまでにない気付きやインスピレーションを得るのが第一段階(フェーズ1)だ。
フェーズ2では、得られた気付きやひらめきを、間を置かずに一人で集中して熟成し深掘りすることで、ビジネスに使える具体的なアイデアに一気呵成に落とし込まなければならない。ところが、従業員間の交流を促す機能に特化したオフィスでは、周りが騒がしく集中できないために、気付き・ひらめきを熟成させる集中作業だけのために、わざわざ自宅に帰ったりサテライトオフィスの個別ブースを予約しなければならないのであれば、そのようなオフィス環境は本末転倒であり、創造的な環境には程遠いと言わざるを得ない。それでは、気付き・ひらめきを整理されたアイデアに落とし込むタイミングを逸してしまい、ビジネスに活かされない単なる気付き・ひらめきの段階で終わってしまうことになりかねない。
フェーズ3は、生成されたアイデアを文章・図表・数式などに形式知化する最終段階であり、ここでも集中力が必要だ。
このように気付きやひらめきの鮮度が高いうちに、間を置かずに一気にアイデアの形式知化までのプロセスを回し切ることが重要であるため、各フェーズは中断・分断せずにオフィス内で一気通貫で進めるべきだ。フェーズ2以降の集中作業は、自宅に持ち帰って在宅勤務で行うのではなく、フェーズ1と同じオフィス内の固定席や集中ブースで行うことが効率的だ。またフェーズ2では、少人数で深掘りの議論を行うこともあり得るため、少人数で密度の濃いミーティングをじっくり行える分散した小さな部屋も、オフィスに完備されていることが望ましい。
このようにイノベーションの源となるアイデアを効率的に生み出すためには、メインオフィスでは、従業員間の交流を促すオープンな環境と集中できる静かな環境といった両極端にある要素を共存させるなど、多様なスペースの設置が求められる。テレワークとの役割のすみ分けにより単一の機能に集約するのではなく、できるだけ「フルパッケージの機能」を装備することが望ましい。
そもそも「行きたくなるオフィス」と言っても、従業員が望むオフィス環境は嗜好や性格特性などによって異なる。また同じ従業員でも、その時々に取り組んでいる業務の内容や気分・体調によっても、照明の明るさや家具などを含め働く場へのニーズは異なるだろう。企業が従業員にその時々のニーズに応じて「働く環境の選択の自由」を与えることは、「働き方改革」の本質だ。従業員の働く環境の多様なニーズにできる限り応えるとの視点からも、メインオフィスにはフルパッケージ機能の装備が望まれる。
オフィスは従業員にとって、各々の能力創造性を最大限に活かすことができる場所であり、そのコミュニティに属していることを誇りに感じることができる場所でなければならない。自席などアイデンティティを持てる居場所も必要だ。多様性のない機能特化型のオフィスでは、居場所がないと感じる従業員が多くなってしまうのではないだろうか。メインオフィスは、多くの従業員が愛着や誇りを持てる場でなければ、そこで企業文化を醸成することはできず、会社への帰属意識を高めることもできない。
行きたくなるオフィスを考えるなら、訪れるとワクワクする多様性を持った街のような「フルパッケージ型」のオフィスをお奨めしたい。街や都市をモチーフとした設計デザインの下で、様々な利用シーンを想定して多様なスペースを取り入れることは、創造的なオフィスの「原理原則」であり、コロナ前後で変わるようなものではない、と筆者は考えている。
(2023年02月06日「研究員の眼」)
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