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ESGという言葉を使わなくていい世界を目指せ!-米ブラックロックのラリー・フィンクCEOの発言に思う

社会研究部 上席研究員 百嶋 徹
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米国のブラックロックは、運用資産残高が2023年6月末時点で9.42兆米ドル(1ドル=144.535円換算で約1,362兆円)にも達する世界最大の資産運用会社だ。同社のCEO(最高経営責任者)であるラリー・フィンク氏は、今年6月に米コロラド州で開催されたイベントに登壇した際に、「ESG(環境・社会・企業統治)という用語を自身としては『もう使うつもりはない』と述べた」といい、この発言が資本市場界隈で大きな話題となっている。
「ESG投資」と言えば、企業の環境(E:Environment)、社会(S:Social)、企業統治(G:Governance)への配慮・対応を重視し、投資プロセスにおいてESG要素を考慮する株式などへの投資を指し、ESGへの取り組みを愚直に実践し続ける企業経営を「ESG経営」と呼ぶ。
フィンク氏と言えば、毎年1~3月の年頭に投資先企業の経営者に送る年次書簡、いわゆる「フィンク・レター」が非常に有名だ。フィンク氏は、これまでフィンク・レターや投資先企業との継続的なエンゲージメント(建設的な対話)を通じて、ESGの旗振り役としてその普及に努めてきた。
本稿では、フィンク・レターの趣旨、ESGに言及したフィンク・レターの内容、フィンク氏が「ESGという言葉を使わない」と発言した背景を公表資料を基に概観した上で、ESGやCSR(企業の社会的責任)の在り方について、企業経営の視点から筆者の考え方を述べたい。
■目次
1――ブラックロックのラリー・フィンクCEOが「ESGという用語をもう使わない」と表明
2――フィンク氏は「フィンク・レター」等を通じてESGの普及をけん引
1|フィンク・レターの趣旨
2|ESGに言及したいくつかのフィンク・レターの内容の概要
3――フィンク氏が「ESGという用語をもう使わない」と表明した背景
4――ESGという言葉を使わなくてもいい世界の構築を
5――CSR/ESGに対する2つの根強い誤解
1|誤解(1):CSR=フィランソロフィー
2|誤解(2):企業の目的=経済的リターンの獲得
6――むすびにかえて:「社会的ミッション起点の真のCSR/ESG経営」の普及啓発に努めたい
(2023年09月08日「基礎研レポート」)
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社会研究部 上席研究員
百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)
研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、イノベーション、企業不動産(CRE)、オフィス戦略、AI・IOT・自動運転、スマートシティ、CSR・ESG経営
03-3512-1797
- 【職歴】
1985年 株式会社野村総合研究所入社
1995年 野村アセットマネジメント株式会社出向
1998年 ニッセイ基礎研究所入社 産業調査部
2001年 社会研究部門
2013年7月より現職
・明治大学経営学部 特別招聘教授(2014年度~2016年度)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
・(財)産業研究所・企業経営研究会委員(2007年)
・麗澤大学企業倫理研究センター・企業不動産研究会委員(2007年)
・国土交通省・合理的なCRE戦略の推進に関する研究会(CRE研究会) ワーキンググループ委員(2007年)
・公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会CREマネジメント研究部会委員(2013年~)
【受賞】
・日経金融新聞(現・日経ヴェリタス)及びInstitutional Investor誌 アナリストランキング 素材産業部門 第1位
(1994年発表)
・第1回 日本ファシリティマネジメント大賞 奨励賞受賞(単行本『CRE(企業不動産)戦略と企業経営』)
百嶋 徹のレポート
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