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- 定額年金を中心に米国個人年金市場は絶好調-中期でも年間3000億ドル超の販売額が続く見通し-
2023年06月21日
1――はじめに
米国で個人年金の販売が堅調に推移してきた。2021年の販売額2,546億ドルは前年比16%増、2008年の過去最高額2,650億ドルには届かなかったものの、パンデミックの影響から早期に回復を果たした。
この保険・年金フォーカスでは、米国における生保・年金のマーケティングに関する代表的な調査・教育機関であるLIMRAが5月と6月に公表したレポートに基づき、個人年金市場の現状と2027年までの中期見通しをお知らせしたい。
この保険・年金フォーカスでは、米国における生保・年金のマーケティングに関する代表的な調査・教育機関であるLIMRAが5月と6月に公表したレポートに基づき、個人年金市場の現状と2027年までの中期見通しをお知らせしたい。
2――2023年第1四半期の動向と通年見通し
過去20年間、米国の個人年金販売額は概ね年間2,000億ドルから2,500億ドルの範囲内にあったが、2022年はこれを大きく上回り過去最高の3,128億ドルに至った。
この勢いのまま、2023年第1四半期は920億ドルと前年同期比47%増、四半期として過去最高の販売額となった。定額年金が全種別で2桁の伸びを示したことが要因である。
特に確定利付き据置定額年金は409億ドルと前年同期比157%増となった。その利率が銀行CDの利率を上回る状態が続いていることに加えて、銀行部門の経営が不安視され、元本確保機能を求めて銀行CDから確定利付き据置定額年金に資金が移動したためである。
また、定額指数連動年金は231億ドルと前年同期比42%増となった。株式市場のボラティリティが増す一方で金利が上昇したことから、2022年と同様、元本確保機能と確実な成長を求めて定額指数連動年金へ資金が向かった。
上記の要因として、景気後退が意識される中、元本確保機能と成長のバランスを取るには個人年金以外の選択肢は乏しいことが挙げられる。LIMRAの調査では、2018年は33%であったところ、2022年では51%の現役世代が退職に際し終身保証型年金商品への資産振り替えを検討すると回答している。ソーシャルセキュリティや企業年金だけでは、退職後の生活資金が確保されていないためであろう。
現在の経済環境が続くことを前提に、元本確保機能を持つ年金商品への需要は引き続き堅い。2023年の販売額は2年連続で3,000億ドルを超えることが予想される。
この勢いのまま、2023年第1四半期は920億ドルと前年同期比47%増、四半期として過去最高の販売額となった。定額年金が全種別で2桁の伸びを示したことが要因である。
特に確定利付き据置定額年金は409億ドルと前年同期比157%増となった。その利率が銀行CDの利率を上回る状態が続いていることに加えて、銀行部門の経営が不安視され、元本確保機能を求めて銀行CDから確定利付き据置定額年金に資金が移動したためである。
また、定額指数連動年金は231億ドルと前年同期比42%増となった。株式市場のボラティリティが増す一方で金利が上昇したことから、2022年と同様、元本確保機能と確実な成長を求めて定額指数連動年金へ資金が向かった。
上記の要因として、景気後退が意識される中、元本確保機能と成長のバランスを取るには個人年金以外の選択肢は乏しいことが挙げられる。LIMRAの調査では、2018年は33%であったところ、2022年では51%の現役世代が退職に際し終身保証型年金商品への資産振り替えを検討すると回答している。ソーシャルセキュリティや企業年金だけでは、退職後の生活資金が確保されていないためであろう。
現在の経済環境が続くことを前提に、元本確保機能を持つ年金商品への需要は引き続き堅い。2023年の販売額は2年連続で3,000億ドルを超えることが予想される。
3――中期見通し
4――おわりに
これまで見てきた通り、現在、元本確保機能を有する定額年金を中心に米国の個人年金市場は絶好調と言える状態にある。2024年には金利の低下による減速が予測されるものの、人口動態の影響もあって、過去最高でもある2022年と同水準の3,000億ドル超の販売額が2027年まで続く見通しである。
とはいえ見通しの前提となる経済環境や金融政策が想定から外れる可能性もある。今後の動向を引き続き、保険・年金フォーカスで取り上げていきたい。
とはいえ見通しの前提となる経済環境や金融政策が想定から外れる可能性もある。今後の動向を引き続き、保険・年金フォーカスで取り上げていきたい。
(2023年06月21日「保険・年金フォーカス」)
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経歴
- 【職歴】
1990年 日本生命保険相互会社に入社。
通算して10年間、米国3都市(ニューヨーク、アトランタ、ロサンゼルス)に駐在し、現地の民間医療保険に従事。
日本生命では法人営業が長く、官公庁、IT企業、リース会社、電力会社、総合型年金基金など幅広く担当。
2015年から2年間、公益財団法人国際金融情報センターにて欧州部長兼アフリカ部長。
資産運用会社における機関投資家向け商品提案、生命保険の銀行窓版推進の経験も持つ。
【加入団体等】
日本FP協会(CFP)
生命保険経営学会
一般社団法人 アフリカ協会
一般社団法人 ジャパン・リスク・フォーラム
2006年 保険毎日新聞社より「アメリカの民間医療保険」を出版
磯部 広貴のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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