2023年06月01日

法人企業統計23年1-3月期-製造業の低迷を非製造業がカバーし、経常利益(季節調整値)は過去2番目の高水準に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.2四半期ぶりの増益

経常利益の推移 財務省が6月1日に公表した法人企業統計によると、23年1-3月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比4.3%(22年10-12月期:同▲2.8%)と2四半期ぶりの増益となった。製造業は前年比▲15.7%(10-12月期:同▲15.7%)と2四半期連続の減益となったが、非製造業が前年比17.2%(10-12月期:同5.2%)と9四半期連続の増益となり、前期から伸びを大きく高めたことが全体の収益を押し上げた。
製造業は、海外経済の減速を背景とした輸出の低迷を受けて、売上高の伸びが22年10-12月期の前年比9.2%から同2.3%へと大きく鈍化したことに加え、売上高経常利益率が22年1-3月期の8.5%から7.0%に悪化したことが収益の押し下げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費要因、金融費用要因はプラスとなったが、変動費要因が利益率を大きく押し下げた。

非製造業は、国内需要の底堅さを背景に、売上高が10-12月期の前年比4.9%から同6.1%へと伸びを高める中、売上高経常利益率が22年1-3月期の5.4%から6.0%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。変動費は前年比5.3%と高い伸びが続いたが、売上高の伸びがそれを上回ったため、変動費要因がプラスとなった。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)

2.経常利益(季節調整値)は過去2番目の高水準

経常利益を業種別に見ると、製造業は、輸送用機械(前年比27.9%)、はん用機械(同38.1%)、生産用機械(同36.0%)、は増益が続いたが、情報通信機械(同▲53.1%)、鉄鋼(同▲39.0%)、化学(同▲24.4%)が大幅減益となり、石油・石炭は2四半期連続の赤字(▲880億円)となった。

非製造業は、不動産業(前年比▲6.7%)が減益となったが、卸売・小売業(同6.6%)が増益を続けたほか、情報通信業(同27.4%)、サービス業(同3.8%)が増益に転じ、燃料費高騰の影響で赤字が続いていた電気業が6四半期ぶりの黒字となった。非製造業の中で、コロナ禍の悪影響を強く受けた対面型サービス業についてみると、飲食サービス業、宿泊業、生活関連サービス業はいずれも前期に続き黒字となるなど、正常化に向かっている。
 
季節調整済の経常利益は前期比6.2%(10-12月期:同▲1.2%)と3四半期ぶりに増加した。製造業が前期比5.0%(10-12月期:同▲23.5%)、非製造業が前期比6.8%(10-12月期:同16.6%)といずれも増加したが、製造業は10-12月期に大きく落ち込んだ後としては、戻りが弱い。

23年1-3月期の経常利益(季節調整値)は24.0兆円となり、過去最高となった22年4-6月期の24.7兆円に次ぐ高水準となった。製造業は過去最高となった22年7-9月期の水準を▲20%程度下回っているが、非製造業は過去最高の19年1-3月期の水準にほぼ並んだ。
経常利益(季節調整値)の推移 企業収益は、海外経済減速に伴う輸出、生産活動の低迷を主因として製造業が悪化する一方、個人消費を中心とした国内需要の底堅さを背景に非製造業が大きく改善している。

先行きについては、累積的な金融引き締めに伴う欧米経済の減速を背景に輸出の低迷が続く一方、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴い個人消費の回復基調がより明確となることが見込まれる。当面は、製造業の低迷を非製造業の好調がカバーする構図が続きそうだ。

3.設備投資は好調を維持

設備投資(ソフトウェアを含む)の推移 設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比11.0%(10-12月期:同7.7%)と8四半期連続で増加し、前期から伸びが高まった。製造業が前年比11.3%(10-12月期:同6.0%)と8四半期連続、非製造業が前年比10.8%(10-12月期:同8.6%)と3四半期連続で増加した。

季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比2.3%(10-12月期:同0.8%)と4四半期連続で増加した。製造業が前期比4.8%(10-12月期:同1.0%)、非製造業が前期比1.0%(10-12月期:同0.7%)となった。

製造業の企業収益はこのところ悪化しているが、それまで増加が続いたことによる潤沢なキャッシュフローを背景に、設備投資は堅調を維持している。

4.1-3月期・GDP2次速報は上方修正を予想

本日の法人企業統計の結果等を受けて、6/8公表予定の23年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.5%(前期比年率1.8%)となり、1次速報の前期比0.4%(前期比年率1.6%)から上方修正されるだろう。

設備投資は1次速報の前期比0.9%から同1.3%へ上方修正されると予想する。

設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比10.0%(10-12月期:同6.3%)と8四半期連続で増加し、前期から伸びが加速した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ、前年比10%程度と公表値と同程度の伸びとなった。また、金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比3.7%(10-12月期:同▲3.4%)と2四半期ぶりに増加した。
2023年1-3月期GDP2次速報の予測 1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比8.9%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の上方修正要因と考えられる。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度0.1%から変わらないだろう。

その他の需要項目では、公的固定資本形成は3月の建設総合統計の結果が反映され、前期比2.4%から同2.0%へ下方修正されると予想する。
 
 

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(2023年06月01日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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