2023年05月31日

鉱工業生産23年4月-事前予想を下回り、3ヵ月ぶりの減産

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.生産指数は3ヵ月ぶりの低下

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が5月31日に公表した鉱工業指数によると、23年4月の鉱工業生産指数は前月比▲0.4%(3月:同1.1%)と3ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.5%、当社予想も同1.5%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.4%と3ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比0.3%と3ヵ月連続の上昇となった。

4月の生産を業種別に見ると、グローバルなITサイクルの調整を反映し低迷が続いている電子部品・デバイスが前月比8.9%の上昇となり、汎用・業務用機械が同11.6%の高い伸びとなったが、半導体製造装置、フラットパネル・ディスプレイ製造装置などの生産用機械が同▲7.4%と大きく落ち込んだ。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は23年1-3月期の前期比▲6.4%の後、4月は前月比1.3%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は23年1-3月期の前期比▲0.9%の後、4月は前月比▲0.1%となった。

GDP統計の設備投資は、22年7-9月期に前期比▲0.7%と3四半期ぶりに減少した後、10-12月期は同0.9%となった。高水準の企業収益を背景に、設備投資は基調としては持ち直しが続いていると判断される。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は23年1-3月期の前期比▲0.6%の後、4月は前月比▲0.4%となった。消費財全体では小幅なマイナスとなったが、内訳を見ると、耐久消費財が前月比1.6%(1-3月期:同1.6%)、非耐久消費財が前月比0.2%(1-3月期:同0.1%)といずれ上昇している。

23年1-3月期のGDP統計の民間消費は、前期比0.6%と22年10-12月期の同0.2%から伸びを高めた。財消費は力強さに欠けるものの、新型コロナウイルス感染症の5類への移行を受けて、サービス消費の回復ペースが加速することが見込まれるため、民間消費は4-6月期も増加が続くことが予想される。

2.4-6月期は3四半期ぶりの増産を予想するが、下振れリスクは高い

製造工業生産予測指数は、23年5月が前月比1.9%、6月が同1.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(4月)、予測修正率(5月)はそれぞれ▲4.2%、▲0.5%であった。

予測指数を業種別にみると、供給制約の緩和から回復が続く輸送機械は、5月に前月比12.5%の高い伸びとなった後、6月は同▲8.6%の大幅マイナスとなっているが、均して見れば底堅い動きが続くことが見込まれる。

一方、電子部品・デバイスは、5月が前月比1.8%、6月が同▲3.2%と横ばい圏の生産計画となっているが、4月の実現率は▲8.0%の大幅マイナスとなっており、実際の生産は計画から下振れる可能性が高い。世界的な半導体関連需要の低迷を反映し、電子部品・デバイスの出荷・在庫バランスは悪化が続いており、底打ちまでにはしばらく時間がかかりそうだ。
輸送機械の生産、在庫動向/ 
電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス
23年4月の生産指数を5、6月の予測指数で先延ばしすると、23年4-6月期の生産は前期比3.5%となるが、実際の生産は予測指数から大きく下振れる傾向がある。現時点では、4-6月期の生産は前期比でプラスとなるものの、2四半期連続減産の後としては低い伸びにとどまると予想している。

個人消費を中心とした国内需要の底堅さが生産を下支えしているが、欧米の景気下振れなどから輸出の低迷が長期化した場合には、3四半期連続の減産となる可能性が高まるだろう。
 
 

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(2023年05月31日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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