2023年05月19日

消費者物価(全国23年4月)-年度替わりの価格改定で上昇ペースが加速

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアコアCPI上昇率が4%台に

消費者物価指数の推移 総務省が5月19日に公表した消費者物価指数によると、23年4月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比3.4%(3月:同3.1%)となり、上昇率は前月から0.3ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:3.4%、当社予想も3.4%)通りの結果であった。

エネルギー価格の下落率が拡大したが、食料(生鮮食品を除く)や鉄道運賃など、幅広い品目で年度替わりの価格改定(値上げ)が実施されたことがコアCPIを押し上げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比4.1%(3月:同3.8%)と81年10月以来の4%台となった。総合は前年比3.5%(3月:同3.2%)であった。
 
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(3月:前年比▲4.7%→4月:同▲3.3%)下落率が縮小し、灯油(3月:前年比▲3.0%→4月:同▲3.0%)の下落率は前月と変らなかったが、電気代(3月:前年比▲8.5%→4月:同▲9.3%)、ガス代(3月:前年比8.3%→4月:同4.8%)の伸び率がいずれも低下したことから、エネルギー価格の下落率は3月の前年比▲3.8%から同▲4.4%へと拡大した。

食料(生鮮食品を除く)は前年比9.0%(3月:同8.2%)となり、上昇率は前月から0.8ポイントの急拡大となった。原材料価格高騰の影響で、食用油(前年比21.0%)、麺類(同12.6%)などが引き続き前年比二桁の高い伸びとなっているほか、年度替わりの価格改定の影響もあり、菓子類が前年比11.0%(3月:同8.2%)と伸びが急加速した。また、鳥インフルエンザの影響で品薄状態が続く卵が前年比33.7%(3月:同29.4%)と伸びをさらに高めた。
川上にあたる飲食料品の輸入物価、国内企業物価はすでにピークアウトしているが、川下の消費者物価の食料(生鮮食品を除く)は価格転嫁の動きが続いており、上昇率は飲食料品の国内企業物価(23年4月:前年比7.0%)を上回っている。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.39%(3月:▲0.33%)、食料(生鮮食品を除く)が2.11%(3月:1.91%)、携帯電話通信料が0.04%(3月:0.05%)、全国旅行支援が▲0.05%(3月:同▲0.14%)、その他が1.70%(3月:1.61%)であった。
食料品の輸入物価、国内企業物価、消費者物価/消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解

2.物価上昇品目の割合がさらに上昇

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、4月の上昇品目数は433品目(3月は427品目)、下落品目数は46品目(3月は52品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は83.0%(3月は81.8%)、下落品目数の割合は8.8%(3月は10.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は74.1%(3月は71.8%)であった。

4月は年度替わりの価格改定の影響もあり、上昇品目数の割合が一段と高まった。特に、食料(生鮮食品を除く)については95%とほとんどの品目が上昇している。

3.コアCPI上昇率は夏場まで3%前後で高止まり

23年4月のコアCPIは、エネルギー価格の下落率が拡大する一方、年度替わりの値上げが幅広い品目で実施されたことから前月から伸びが高まった。コアCPI上昇率は、5月には再生可能エネルギー発電促進賦課金の引き下げにより電気代の下落率がさらに拡大することを主因として鈍化するが、6月には電力各社が申請している値上げが認可され、電気代が再び上昇することもあり、夏場までは3%前後で高止まりすることが見込まれる。
 
物価高の主因となっていた輸入物価の上昇には歯止めがかかっている。このため、今後は原材料コストを価格転嫁する動きが徐々に弱まり、財価格の上昇率は鈍化する公算が大きい。

一方、下落が続いていたサービス価格は22年8月に上昇に転じた後、23年4月には前年比1.7%まで伸びを高めている。サービス価格は賃金との連動性が高いが、現時点では、サービスの中では原材料コストの割合が高い一般外食の大幅上昇(23年4月:前年比7.3%)がサービス価格上昇の主因となっている。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の要因分解 しかし、今後は賃上げに伴う人件費の増加を価格転嫁する動きが一段と広がることが予想される。23年のベースアップは2%程度が見込まれることを考慮すれば、サービス価格の上昇率は2%台まで高まる可能性が高い。これまで長期にわたって値上げが行われていなかった分、今後のサービス価格の上昇ペースは非常に速いものとなる可能性がある。

23年4月のコアCPI上昇率を財、サービスに寄与度分解すると、財が2.5%、サービスが0.9%となり、財が全体の7割強を占めている。今後は物価上昇の中心が財からサービスへとシフトしていくことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年05月19日「経済・金融フラッシュ」)

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