2023年05月30日

雇用関連統計23年4月-新規求人倍率が3ヵ月連続で低下

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は0.2ポイント低下の2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が5月30日に公表した労働力調査によると、23年4月の完全失業率は前月から0.2ポイント低下の2.6%(QUICK集計・事前予想:2.7%、当社予想も2.7%)となった。

労働力人口が前月から▲2万人の減少となる中、就業者が前月から13万人の増加となったため、失業者は前月から▲15万人減の180万人(いずれも季節調整値)となった。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差14万人増(3月:同15万人増)と9ヵ月連続で増加した。産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年差8万人増(3月:同24万人増)と10ヵ月連続、製造業が前年差38万人増(3月:同14万人増)と3ヵ月連続で増加したほか、生活関連サービス・娯楽業が前年差10万人増(3月:同▲6万人減)と5ヵ月ぶりに増加した。一方、卸売・小売業が前年差▲2万人減(3月:同▲32万人減)と5ヵ月連続、医療・福祉が前年差▲29万人増(3月:同▲18万人)と2ヵ月連続で減少した。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ6万人増(3月:同15万人増)と14ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差13万人増(3月:▲8万人減)と3ヵ月ぶりに増加したが、非正規の職員・従業員数が前年差▲6万人減(3月:同23万人増)と17ヵ月ぶりに減少した。

2.新規求人倍率が3ヵ月連続で低下

厚生労働省が5月30日に公表した一般職業紹介状況によると、23年4月の有効求人倍率は前月から横ばいの1.32倍(QUICK集計・事前予想:1.32倍、当社予想は1.31倍)となった。有効求人数(前月比▲0.6%)、有効求職者数(同▲0.7%)がとも前月から減少した。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.06ポイント低下の2.23倍となった。新規求人倍率は23年1月の2.38倍をピークに3ヵ月連続で低下している。

新規求人数は前年比▲0.9%(3月:同0.7%)と21年3月以来、2年1ヵ月ぶりの減少となった。産業別には、宿泊・飲食サービス業(3月:前年比5.9%→4月:同8.2%)、卸売・小売業(3月:前年比3.1%→4月:同2.2%)は増加が続いたが、製造業(3月:前年比▲8.0%→4月:同▲9.3%)、建設業(3月:前年比▲6.3%→4月:同▲9.6%)が2ヵ月連続で減少し、生活関連サービス・娯楽業(3月:前年比8.3%→4月:同▲1.3%)が3ヵ月ぶりに減少した。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
雇用情勢は持ち直しの動きが続いているが、新規求人倍率が3ヵ月連続で低下するなど、ここにきてやや陰りがみられる。

雇用調整助成金の特例措置は22年12月以降、通常制度に戻っており(23年3月までは一定の経過措置あり)、このことが雇用情勢に悪影響を及ぼしている可能性がある。経過措置は3月末で終了し、4月以降は通常運用に戻っているため、景気の悪化が失業者の増加に直結しやすくなっていることには注意が必要だ。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2023年05月30日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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