コラム
2023年04月18日

分数について(その2)-連分数に関する話題-

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はじめに

分数という概念は、小数の概念とは異なり、古代エジプトの時代から使用されていた。ただし、その使用のされ方は、現在とは必ずしも同様なものにはなっていない。

今回は、分数を巡る話題について、5回に分けて報告することにしているが、前回はその定義、起源、表記法等について述べた。今回は、連分数に関する話題について、述べることとする。

連分数

連分数(continued fraction」というのは、分母が数と分数の和となり、さらにその分母が数と分数の和となる、というような構造になっている、以下のような分数を指している。
連分数(
このうち、分子が全て 1 である場合には、「正則連分数」(regular continued fraction)」(又は「単純連分数」)という。則ち、以下のような形の分数である。
正則連分数
これに対して、分子が全て1とは限らない場合には、「非正則連分数(irregular continued fraction)」という。

数字を連分数で表す場合、これを「連分数展開」と呼ぶ。また、ai部分商という。

なお、連分数展開は、例えば以下のような省略記法で表記される。
連分数展開
ここで、「・・・」が有理数の場合には、ある自然数nにおいて分母がanという整数のみとなって、展開が有限で終了して、「有限連分数」となる。一方で、「・・・」が無理数の場合には、このような展開が無限に行われて、「無限連分数」となる。

数字の連分数表示

有理数は有限正則連分数で表すことができ、その逆もまた真で、有限正則連分数で表すことができる数は有理数となる。このように有理数と有限連分数は本質的に1対1に対応している。

また、任意の無理数は無限正則連分数として一意に表される。このうち、「2次無理数(quadratic irrational)」(整数係数二次方程式の根である無理数)の正則連分数展開は、必ず循環し、これを「循環連分数」、循環する部分を「循環節」という。逆に、正則連分数展開が循環連分数となる数は2次無理数となる。これは、18世紀のフランスの大数学者であるジョゼフ=ルイ・ラグランジュ(Joseph-Louis Lagrange )によって証明されている1

と、ここまでの説明を聞くと、小数に関する研究員の眼「小数について(その2)-循環小数を巡る話題-」(2023.1.30)において紹介してきた循環小数や循環節との類似性を意識される方もいらっしゃるのではないかと思われる。これらの関係は以下のようになっている。
循環小数や循環節との類似性
従って、以前にも述べたように、また下記で示すように、√2、√3 黄金数φ(=(1+√5)/2)、白銀数τ(=1+√2)は、2次無理数で、循環連分数に展開されるが、ネイピア数eや円周率πは非循環連分数に展開されることになる。
 
1 なお、このあたりの無理数に関する話題については、研究員の眼「無理数について(その2)-無理数の(有理数や無理数)べき乗や無理数度等-」(2021.12.13)でも紹介した。

連分数による実数の近似

実数αを連分数展開したものをとする時、までで打ち切った連分数を実数αの「n番目の近似分数」という。

有理数p/q(pとqは互いに素)の連分数展開において、は互いに素な自然数)とするとき、がn番目の近似分数となる。

この時、は、nが大きくなるにつれて、p/qとの差の符号を交互に変更させながら、p/qに近づいていく。即ち、は、p/qの前後で振動しながらp/qに近づいていく。

無理数αに関して、任意の有理数p/q(0<q<Q)(≠P/Q)に対して、

|α-p/q|>|α-P/Q|

を満たす有理数P/Qをαの「最良近似分数」というが、連分数展開で得られる近似分数は最良近似分数となる。

代表的な無理数の連分数表示

2、√3、黄金数φ(=(1+√5)/2、白銀数τ(=1+√2は、2次無理数で、その循環する連分数展開は、以下の通りとなる。
√2の循環する連分数展開
√3の循環する連分数展開
黄金数φの循環する連分数展開
白銀数τの循環する連分数展開
ネイピア数eは、様々な無限連分数で表現できる。eは超越数であるので循環連分数展開は有しない(循環節は持たない)が、ある種の規則性が観察される。例えば、以下のように正則連分数展開される。
白銀数τの正則連分数展開
円周率πも超越数であるので循環連分数展開を有しない。さらに、その正則連分数展開には規則性がないと考えられている。
円周率πの正則連分数展開
一方で、以下のように、円周率πの非正則連分数展開で規則性を持つものが存在する。
円周率πの非正則連分数展開
このような連分数展開を通じて、πの近似値を分数で表し、算出することができることになる。
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中村 亮一

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【分数について(その2)-連分数に関する話題-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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