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かかりつけ医を巡る議論とは何だったのか(上)-年末に示された部会意見を読み解き、論点や方向性を考える
保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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2022年末に決着した社会保障制度改革では、身近な病気やケガに対応する「かかりつけ医」に関する議論が活発に交わされた。かかりつけ医は新型コロナウイルスの発熱外来などで注目を集めたが、かかりつけ医になるための要件とか、能力の基準などは特に定められておらず、制度的な位置付けは曖昧だった。
そこで、医療の質の向上や外来医療費の効率化などを図る観点に立ち、財務省や健康保険組合連合会(以下、健保連)が「かかりつけ医の制度化」を提唱した。これは患者がかかる医師を事前に指名する「登録制度」などを指しており、患者が自由に医療機関を選べる「フリーアクセス」の実質的な軌道修正を意味していた。
これに対し、日本医師会(以下、日医)は「かかりつけ医機能の強化」は重要としつつも、「患者の受療権を確保する必要がある」として、「制度化」に反対し続けた。さらに、関係団体や有識者、メディアなども絡み、かかりつけ医の制度化の賛否を巡り、活発な議論が展開された。
結局、昨年末に決着した議論では、(1)かかりつけ医機能の定義の法定化、(2)医療機関が果たしている役割を都道府県が公表している「医療機能情報提供制度」の見直し、(3)在宅医療など医療機関が担っている機能を都道府県に報告させる「かかりつけ医機能報告制度」の創設、(4)継続的な医学管理を要する患者が希望する場合、かかりつけの関係を示す書面を発行する仕組みの創設――などの内容で決着した。
本稿では2回シリーズで、かかりつけ医の制度化、あるいは機能強化を巡る経緯を振り返りつつ、今後の論点を考察する。(上)では、今回の決着の内容を細かく見るとともに、医療機能情報提供制度の有効性や書面交付制度の論点など、今回の決着がどこまで有効性を持つか検討する。
(下)では、「ケアの包括性強化」「患者の受療権確保」という二律背反の下、神学論争に陥りがちな状況を打破するための視座を提供するとともに、今後の論点や方向性を論じる。
■目次
1――はじめに~かかりつけ医を巡る議論とは何だったのか~
2――4つに整理できる今回の制度改正の概要
3――今回の決着の内容(1)~かかりつけ医機能の定義の法定化~
1|かかりつけ医とは何か
2|部会意見で示された方向性
4――今回の決着の内容(2)~医療機能情報提供制度の刷新~
1|医療機能情報提供制度とは何か
2|部会意見で示されている「刷新」の方向性
5――今回の決着の内容(3)~「かかりつけ医機能報告制度」の創設~
1|かかりつけ医機能報告制度のイメージ
2|都道府県と厚生労働省の役割
6――今回の決着の内容(4)~書面交付の仕組みの創設~
7――今回の決着の評価(1)外来医療に制度的な担保が入った意味合い~
1|曖昧だったかかりつけ医の位置付け
2|遅きに失した?制度的な関与
8――今回の決着の評価(2)医療機能が可視化される意味合い
9――今回の決着の課題(1)~それでも残るかかりつけ医の曖昧さ~
10――今回の決着の課題(2)~医療機能情報提供制度は機能するのか?~
11――今回の決着の課題(3)~かかりつけ医機能報告制度は機能するのか~
1|都道府県はどこまで運用できるか?
2|地域医療連携推進法人は都市部で通用するのか?
12――今回の決着の課題(4)~書面交付制度は機能するのか~
1|かかりつけ薬剤師・薬局制度は先例になる?
2|書面の関係は1:1なのか、それとも複数なのか?
13――おわりに
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- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
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