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次期介護保険制度改正に向けた審議会意見を読み解く-負担と給付の見直し論議は先送り、小粒の内容に
保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
3年に一度の介護保険制度の改正論議が一応の決着を見た。議論の舞台となっていた社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護保険部会が2022年12月に公表した意見書では、通所介護(デイサービス)と訪問介護を組み合わせた新サービスの創設など、いくつかの新規案件が盛り込まれた。これを受けて、政府は2023年の通常国会に介護保険法など関連法改正案を提出し、主な案件は2024年度に施行される予定だ。
一方、負担と給付の見直しに関するテーマのうち、ケアマネジメントの有料化などについては、結論が2027年度にも実施される次の次の制度改正に先送りされた。さらに、2割負担の対象者拡大についても、遅くとも2023年夏までに結論を持ち越す考えが示されており、結果的に「小粒」の改正となった。これは現行制度を前提にすると、既に様々な手立てが講じられている分、困難な案件しか残っていないという難しい事情が影響している。さらに、医療制度改革で高齢者の負担を増やす動きが相次いでいるため、負担増の議論が一気に集中しないように、結論を持ち越した面もある。
本稿は部会意見の内容を読み解くことで、2024年度に控えた次期介護保険制度改正を展望する。具体的には、負担と給付の見直し論議がほとんど先送りされた点に加え、総合的な人材確保への対応策、サービス基盤の整備など、部会意見の内容を考察し、今後の論点などを示す。
■目次
1――はじめに~次の介護保険制度改正に向けた審議会意見を読み解く~
2――部会意見の主な構成
3――先送りされた負担と給付の見直し
1|工程表に盛り込まれていた4つの論点
2|ケアマネジメントの有料化
3|軽度者向け給付の見直し
4|2~3割負担の対象者拡大
5|多床室の負担引き上げ
6|介護保険料の多段階化など、その他の論点
7|主な案件は先送り、2割負担は2023年夏に決定
4――人材確保や生産性向上に関する施策
1|人材確保では「総合的な対策」を推進
2|生産性向上の論点
5――科学的介護などの施策充実
1|「地域包括ケアシステムの深化・推進」が示されているが…
2|生活を支える介護サービスの基盤整備
3|ケアマネジメントの質の向上
4|地域包括支援センターの負担軽減
5|科学的介護の充実、介護情報の利活用
6|市町村の取り組みを評価する交付金の見直し
7|総合事業など、その他の施策
6――今回の部会意見の全般的な評価
1|異例の対応
2|先送りで十分か
3|その他の案件
4|2024年度制度改正に向けた展望
7――おわりに
(2023年01月12日「基礎研レポート」)
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03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
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