2022年07月01日

宿泊旅行統計調査2022年5月~延べ宿泊者数、客室稼働率ともに回復、新たな観光需要喚起策でさらなる回復へ

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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1.5月は延べ宿泊者数、客室稼働率ともに回復

観光庁が6月30日に発表した宿泊旅行統計調査によると、2022年5月の延べ宿泊者数は3,779万人泊となった。新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年同月比でみると、▲26.5%(4月:同▲33.7%)と3か月連続でマイナス幅が縮小した。

2022年5月の日本人延べ宿泊者数は3,709万人泊、2019年比同月比▲11.0%(4月:同▲16.1%)と、2か月連続でマイナス幅が縮小した。また、外国人延べ宿泊者数は、70万人泊、2019年同月比は▲92.8%(4月:同▲95.3%)と低い水準で停滞している。

日本人延べ宿泊者数の2019年同月比は、新型コロナウイルスの感染拡大以降、マイナスで推移していたが、2021年12月には+1.9%と、22か月ぶりのプラスとなった。しかし2022年入り後、オミクロン株の感染が広がり、再びマイナスとなった。3月21日にまん延防止等重点措置が全面解除されたことを受けて、足元では3か月連続でマイナス幅が縮小している。

外国人延べ宿泊者数の2019年同月比は、2020年4月以降、▲90%台で推移を続けている。
延べ宿泊者数(2019年同月比)の推移/宿泊施設タイプ別客室稼働率の推移
客室稼働率は2022年5月に全体で46.7%、2019年同月差では▲16.5%(4月:同▲21.6%)と3か月連続でマイナス幅が縮小した。宿泊施設タイプ別客室稼働率をみると、旅館が35.5%、2019年同月差:▲6.0%(4月:同▲11.4%)、リゾートホテルが43.5%、2019年同月差:▲16.1%(4月:同▲21.7%)、ビジネスホテルが56.4%、2019年同月差:▲19.4%(4月:同▲23.7%)、シティホテルが51.2%、2019年同月差:▲28.7%(4月:同▲37.9%)、簡易宿所は21.7%、2019年同月差:▲11.8%(4月:同▲16.3%)であった。2019年同月比では全ての宿泊施設タイプでマイナス幅が縮小した。

2.引き続き政府の後押しを受け、延べ宿泊者数はさらなる増加へ

2021年9月末に緊急事態宣言が全面解除されたことを受けて、人出は増えたが、2022年入り後、オミクロン株が猛威を振るい始め、1月9日のまん延防止等重点措置発令とともに、人出は再び減少した。回復に向かっていた日本人延べ宿泊者数と客室稼働率も再び低下に向かった。2022年3月21日にはまん延防止等重点措置が全面解除され、人出が回復し、日本人延べ宿泊者数、客室稼働率も回復している。

観光庁は、GoToトラベルの代替として2021年4月1日から実施している県民割(地域観光事業支援)の期間を令和4年6月30日宿泊分(7月1日チェックアウト分)までとしていたが、7月14日宿泊(7月15日チェックアウト分)まで延長することを6月17日に発表した。ワクチン3回目接種(都道府県知事の判断によっては2回目接種)やPCR検査での陰性など要件はあるが、ワクチン接種率は2回目接種がおよそ80%で推移しており、3回目接種はおよそ60%となっている。県民割が活用されれば、日本人延べ宿泊者数の増加、客室稼働率の上昇が見込まれる。

さらに政府は、6月中の感染状況を見極めた上で、感染状況の改善が確認できれば、7月前半より、全国を対象とした観光需要喚起策を実施することを発表した。県民割の対象の旅行者は、その都道府県内もしくは同一地域ブロック内に限られたが、今回の観光需要喚起策については、日本全国の旅行者を対象としている。感染再拡大への配慮が懸念されるが、旅行需要の分散のために、平日のクーポン券の値段を休日よりも高くする、交通付旅行商品の割引を大きくする、8月の最繁忙期は除外するといった対策に加えて、実施を希望しない都道府県があれば、対象から除外するという方針も示した。足元では新規感染者数は減少傾向のため、国内の人の移動が活発になることが見込まれる。

訪日外国人については、6月1日から入国者総数の上限を1日10,000人から、1日20,000人に引き上げ、6月10日から観光目的の外国人の入国を条件付きで許可していることから、外国人延べ宿泊者数の増加、客室稼働率の上昇が見込まれる。

感染拡大を抑えつつ、県民割と新たな観光需要喚起策の活用、国際的な人の往来再開を達成することによって延べ宿泊者数、客室稼働率はさらなる改善に向かうだろう。
新型コロナウィルス新規陽性者の推移/ワクチン接種率
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

(2022年07月01日「経済・金融フラッシュ」)

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