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- 2021~2023年度経済見通し(21年11月)
2021年11月16日
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1. 2021年7-9月期は前期比年率▲3.0%のマイナス成長
2021年7-9月期の実質GDPは、前期比▲0.8%(前期比年率▲3.0%)と2四半期ぶりのマイナス成長となった。
外需寄与度は前期比0.1%(年率0.4%)と成長率を若干押し上げたが、緊急事態宣言の長期化や半導体不足などの供給制約の影響で、民間消費(前期比▲1.1%)、住宅投資(同▲2.6%)、設備投資(同▲3.8%)がいずれも大幅に減少し、国内民間需要が2四半期ぶりに減少した。ワクチン接種の進捗を反映し政府消費が前期比1.1%の高い伸びとなり、公的需要が2四半期連続で増加したが、民間需要の落ち込みをカバーするには至らなかった。
日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年4-6月期に過去最大のマイナス成長となった後、2四半期連続で前期比年率二桁の高成長を記録したが、緊急事態宣言が再発令された2021年入り後は停滞が続いている。
外需寄与度は前期比0.1%(年率0.4%)と成長率を若干押し上げたが、緊急事態宣言の長期化や半導体不足などの供給制約の影響で、民間消費(前期比▲1.1%)、住宅投資(同▲2.6%)、設備投資(同▲3.8%)がいずれも大幅に減少し、国内民間需要が2四半期ぶりに減少した。ワクチン接種の進捗を反映し政府消費が前期比1.1%の高い伸びとなり、公的需要が2四半期連続で増加したが、民間需要の落ち込みをカバーするには至らなかった。
日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年4-6月期に過去最大のマイナス成長となった後、2四半期連続で前期比年率二桁の高成長を記録したが、緊急事態宣言が再発令された2021年入り後は停滞が続いている。
(景気は足踏み状態に)
11/8に公表された内閣府の「景気動向指数」では、2021年9月のCI一致指数が前月差▲3.8ポイントとなり、8月の同▲3.1ポイントに続く大幅低下となった。CI一致指数の基調判断は、それまでの「改善」から「足踏み」へと下方修正された。
11/8に公表された内閣府の「景気動向指数」では、2021年9月のCI一致指数が前月差▲3.8ポイントとなり、8月の同▲3.1ポイントに続く大幅低下となった。CI一致指数の基調判断は、それまでの「改善」から「足踏み」へと下方修正された。

明るい材料は、自動車減産の影響で急速に落ち込んだ自動車販売に持ち直しの兆しがみられることだ。自動車生産よりも早く公表される自動車販売台数(軽を含む乗用車)は2021年9月に前年比34.3%減と大きく落ち込んだ後、10月も同32.2%の大幅減少となった。しかし、当研究所が独自に季節調整をかけたところ、9月に前月比31.1%減と急速に落ち込んだ後、10月は同13.1%と増加に転じた。
通常、自動車の生産と販売は必ずしも連動しないが、足もとの自動車販売の落ち込みは需要の減少によるものではなく、供給制約に伴う大幅減産が主因だ。したがって、自動車販売の持ち直しは自動車の減産に歯止めがかかりつつあることを示唆する。自動車は2021年内には底打ちから挽回生産へと転じ、輸出、生産は再び回復軌道に復帰する可能性が高い。

世界的に経済活動の正常化が進む中、原油をはじめとした資源価格が高騰している。2021年10月の輸入物価指数は前年比38.0%となり、1980年7月(同40.0%)以来、約40年ぶりの高い伸びとなった。世界経済の回復を反映し輸出物価も上昇しているが、2021年10月は前年比13.7%と輸入の伸びは大きく下回っている。この結果、交易条件指数(輸出物価指数/輸入物価指数)は急低下している。
交易条件の悪化は日本から海外への所得流出が進んでいることを意味する。GDP統計では、交易条件(輸出入の相対価格)の変化に伴う実質所得(購買力)の変化を把握する指標として、「交易利得」が公表されており、「実質国内総所得(GDI)=実質GDP+交易利得」という関係がある。

交易条件悪化に伴う海外への所得流出は、企業と家計が負担することになる。企業が輸入物価上昇に伴うコスト増を価格転嫁できなければ企業収益が圧迫され、価格転嫁が十分に行われた場合には、企業の負担は軽減される一方、消費者物価の上昇を通じて家計の負担が増加するという関係がある。

消費者物価指数のエネルギー価格は、2021年9月の前年比7.4%から年末にかけて20%近くまで伸びを高めることが見込まれる。エネルギー代の月別購入量を考慮した上で、一世帯当たりのエネルギー代を試算すると、全国では2021年9月の約19,000円から2022年3月には約30,000円まで増加する。これに対し、北海道、東北、北陸の寒冷地域では冬場にかけてエネルギー代が40,000円前後まで急増する。エネルギー代は生活必需品に近い性質を持つため、価格の上昇に合わせて購入量を減らすことは難しい。寒冷地域を中心にエネルギー以外の選択的支出を控えることが消費全体を抑制するリスクがある。
2. 実質成長率は2021年度2.6%、2022年度2.5%、2023年度1.7%を予想
(緊急事態宣言の解除でサービス消費は持ち直しへ)
日本は2021年に入ってからほとんどの期間で緊急事態宣言かまん延防止等重点措置が実施されてきたが、9月末にいずれも解除され、10/25には首都圏4都県と大阪府で飲食店に対する営業時間短縮要請が解除された。
Google社の「コミュニティ モビリティ レポート」によれば、小売・娯楽施設(レストラン、カフェ、ショッピングセンター、テーマパーク、映画館などが対象)の人出は、緊急事態宣言の対象地域拡大を受けて、2021年8月から9月にかけて大きく減少した後、新型コロナウイルス陽性者数の減少や緊急事態宣言の解除を受けて減少ペースが緩やかとなっている。
緊急事態宣言が解除された10月以降の消費関連指標は現時点ではほとんど公表されていないが、人出との連動性が高いサービス消費は持ち直していることが見込まれる。ただし、人流データをより詳細にみると、2021年10月以降の人出は前年とほぼ同水準であり、感染症に対する警戒感が完全には払拭されていないことを示唆している。外食、旅行などの対面型サービス消費がコロナ前の水準に戻るまでには時間を要するだろう。
日本は2021年に入ってからほとんどの期間で緊急事態宣言かまん延防止等重点措置が実施されてきたが、9月末にいずれも解除され、10/25には首都圏4都県と大阪府で飲食店に対する営業時間短縮要請が解除された。
Google社の「コミュニティ モビリティ レポート」によれば、小売・娯楽施設(レストラン、カフェ、ショッピングセンター、テーマパーク、映画館などが対象)の人出は、緊急事態宣言の対象地域拡大を受けて、2021年8月から9月にかけて大きく減少した後、新型コロナウイルス陽性者数の減少や緊急事態宣言の解除を受けて減少ペースが緩やかとなっている。
緊急事態宣言が解除された10月以降の消費関連指標は現時点ではほとんど公表されていないが、人出との連動性が高いサービス消費は持ち直していることが見込まれる。ただし、人流データをより詳細にみると、2021年10月以降の人出は前年とほぼ同水準であり、感染症に対する警戒感が完全には払拭されていないことを示唆している。外食、旅行などの対面型サービス消費がコロナ前の水準に戻るまでには時間を要するだろう。
(高水準の貯蓄、現・預金が消費を大きく押し上げる可能性)
雇用所得環境は依然として厳しい状況が続いているが、最悪期は脱しつつある。労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率は、2019年1月の1.64倍から2020年10月に1.04倍まで低下した後、2021年9月には1.16倍まで上昇した。また、失業率は2019年12月の2.2%から2020年10月には3.1%まで上昇したが、2021年入り後は概ね2%台後半の推移が続いている。
雇用者数、一人当たり賃金ともに引き続きコロナ前の2019年の水準は下回っているものの、前年比では増加している。雇用の内訳をみると、宿泊・飲食サービス、生活関連サービス・娯楽などの対面型サービス業では大幅な減少が続いているが、それ以外の業種では2019年の水準を上回っている。一人当たり賃金については、所定外給与が前年の大幅な落ち込みの反動で高い伸びとなっており、特別給与は2020年度後半の企業収益の改善を反映し下げ止まっている。
雇用所得環境は景気に遅れて動く傾向があることから当面厳しい状況が続くものの、経済活動の正常化に伴い徐々に改善に向かうことが予想される。雇用者報酬は、2020年度に前年比▲2.0%と8年ぶりの減少となったが、2021年度に同1.4%と増加に転じた後、2022年度が同1.5%、2023年度が同1.8%と徐々に伸びを高めることが予想される。
雇用所得環境は依然として厳しい状況が続いているが、最悪期は脱しつつある。労働市場の需給関係を反映する有効求人倍率は、2019年1月の1.64倍から2020年10月に1.04倍まで低下した後、2021年9月には1.16倍まで上昇した。また、失業率は2019年12月の2.2%から2020年10月には3.1%まで上昇したが、2021年入り後は概ね2%台後半の推移が続いている。
雇用者数、一人当たり賃金ともに引き続きコロナ前の2019年の水準は下回っているものの、前年比では増加している。雇用の内訳をみると、宿泊・飲食サービス、生活関連サービス・娯楽などの対面型サービス業では大幅な減少が続いているが、それ以外の業種では2019年の水準を上回っている。一人当たり賃金については、所定外給与が前年の大幅な落ち込みの反動で高い伸びとなっており、特別給与は2020年度後半の企業収益の改善を反映し下げ止まっている。
雇用所得環境は景気に遅れて動く傾向があることから当面厳しい状況が続くものの、経済活動の正常化に伴い徐々に改善に向かうことが予想される。雇用者報酬は、2020年度に前年比▲2.0%と8年ぶりの減少となったが、2021年度に同1.4%と増加に転じた後、2022年度が同1.5%、2023年度が同1.8%と徐々に伸びを高めることが予想される。


これらのことは、行動制限の緩和によって貯蓄率が平常時に近い水準に戻るだけで、個人消費が急回復することを意味する。さらに、家計がこれまでに積み上がった現預金の取り崩しを行えば、フローの貯蓄率が急低下することで消費の水準が大きく押し上げられる可能性がある。

メインシナリオでは、家計消費支出は2022年10-12月期にコロナ前(2019年10-12月期)の水準を回復するが、2023年度末でも直近のピーク(2019年7-9月期)には届かない。一方、2022年度末に家計の貯蓄率が平常時の水準(2015~2019年度平均の1.3%)まで戻ったとすれば、家計消費支出は大きく上振れ、2022年度前半にコロナ前の水準を上回った後、2023年度前半には直近のピークを回復する。
(2021年11月16日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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