2021年10月29日

雇用関連統計21年9月-非労働力化の進展が失業率の上昇を抑制

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から横ばいの2.8%

完全失業率と就業者の推移 総務省が10月29日に公表した労働力調査によると、21年9月の完全失業率は前月から横ばいの2.8%(QUICK集計・事前予想:2.8%、当社予想は2.9%)となった。労働力人口が前月から▲31万人の減少となる中、就業者が前月から▲28万人の減少となり、失業者は前月から▲2万人減の189万人(いずれも季節調整値)となった。
失業率は前月と変わらなかったが、前月に続き就業者が減少する中で非労働力化が進展したことが失業率の抑制要因となっている。8、9月の2ヵ月で労働力人口は▲64万人、就業者は▲60万人減少した。失業率に表れない形で雇用情勢は厳しさを増している。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差▲10万人減(7月:同17万人増)と6ヵ月ぶりに減少した。雇用者数は前年差14万人増と増加を続けたが、自営業主・家族従業者が同▲23万人の減少となった。就業者数をコロナ禍前の前々年と比較すると▲89万人の減少となり、8月の同▲58万人減から減少幅が大きく拡大した。

産業別には、製造業が前年差▲8万人減(8月:同15万人増)、卸売・小売が前年差▲3万人減(8月:同17万人増)と減少に転じたほか、緊急事態宣言長期化の影響で、宿泊・飲食サービスが前年差▲34万人減(8月:同▲25万人減)、生活関連サービス・娯楽が同▲27万人減(8月:同▲6万人減)と減少幅が拡大した。
 
雇用者数(役員を除く)は前年に比べ30万人増(8月:同37万人増)と6ヵ月連続で増加したが、前々年差では▲45万人減(8月:同▲46万人減)と減少が続いている。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数は前年差50万人増(8月:47万人増)となったが、非正規の職員・従業員数が前年差▲20万人減(8月:同▲10万人減)と2ヵ月連続で減少し、前々年差では▲143万人減(8月:同▲130万人減)と減少幅が拡大した。

2.対面型サービス業の休業率が高水準に

主な産業別休業率 休業者数は208万人となり、前年に比べて11万人の増加(8月:同32万人増)となった。

休業率(休業者/就業者)を産業別にみると、飲食店が12.5%(8月:13.1%)と高止まりしたほか、宿泊業(8月:3.8%→9月:8.2%)、娯楽業(8月:5.3%→9月:8.1%)が大きく上昇した(休業率は原数値)。緊急事態宣言長期化の影響で対面型サービスの休業率が高水準となっている。

3.有効求人倍率、新規求人倍率ともに上昇

有効求人倍率の推移 厚生労働省が10月29日に公表した一般職業紹介状況によると、21年9月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント上昇の1.16倍(QUICK集計・事前予想:1.14倍、当社予想は1.13倍)となった。有効求人数が前月比0.9%と3ヵ月連続で増加する一方、有効求職者数が同▲0.2%の減少となった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.13ポイント上昇の2.10倍となった。新規求人数が前月比1.8%の増加となったが、新規求職申込件数が同▲4.8%の減少となった。
 
失業率は前月と変わらなかったが、労働力人口、就業者が2ヵ月連続で前月から大幅に減少しており、内容は厳しくなっている。緊急事態宣言が解除された10月以降、景気は持ち直しに向かうことが見込まれるが、雇用情勢は景気に遅れて動く傾向があるため、しばらく厳しい状態が続くことが予想される。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年10月29日「経済・金融フラッシュ」)

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