2021年10月13日

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■要旨
 
  1. 世界の実質GDP成長率は、ワクチン接種の進展などを背景とした経済活動の回復により、2021年に5.7%の高成長となるものの、予測期間末には2%台半ばまで低下することが見込まれる。
     
  2. 新型コロナウイルスの強毒化などにより再び厳しい活動制限が強いられることがないことを前提として、実質GDPの水準がコロナ前の2019年(度)に戻るのは、年単位でみると、米国が2021年、ユーロ圏、日本が2022年(度)と予想する。
     
  3. 日本の2031年度までの10年間の実質GDP成長率は平均1.1%と予想する。潜在成長率は、労働参加の更なる促進や、デジタル化などの生産性向上のための設備や人材面での投資の実施により、2020年代半ばには1%程度まで回復すると想定した。消費者物価上昇率(除く生鮮食品)は緩やかな上昇に転じるものの、物価安定目標の2%を達成することは難しく、10年間の平均で1.2%と予想する。
     
  4. 日本銀行が金融緩和の正常化に着手する時期は予測期間終盤の2028年度を想定した。物価安定目標は達成されないものの、この頃には物価上昇率が一時的に1%台後半に到達する。また、長引く金融緩和に伴って、金融システムの不安定化リスクといった副作用が蓄積するため、日本銀行は2%の目標を長期目標として残しつつ、「デフレ脱却という目的は実質的に達成された」という整理で出口戦略への移行を開始すると予想する。
実質GDP成長率の推移(日本)
■目次

1. コロナ禍からの復興を目指す世界経済
  ・新型コロナへの適応を目指す経済
  ・人の接触・移動は緩やかに回復へ
  ・金融・財政も正常化へ
  ・世界経済の成長率は鈍化傾向を辿る
2. 海外経済の見通し
  ・米国経済-新型コロナからの経済正常化に伴い、当面は潜在成長率を上回る成長が持続
  ・ユーロ圏経済-成長戦略で復興とEU経済圏の強化を目指す
  ・中国経済-10年後の中国経済は2%前後の成長率に
  ・新興国経済-コロナ禍で格差が広がる
3. 日本経済の見通し
  ・コロナ前の実質GDP水準に回復するのは2022年度
  ・今後10年間の実質GDP成長率は平均1.1%
  ・10年間の消費者物価上昇率は平均1.2%を予想
  ・基礎的財政収支は2031年度も黒字化せず
  ・経常収支は2030年代に赤字へ
4. 金融市場の見通し
  ・日本の金融政策と金利
  ・米国の金融政策と金利
  ・ユーロ圏の金融政策と金利
  ・為替レート
5. 代替シナリオ
  ・楽観シナリオ
  ・悲観シナリオ
  ・シナリオ別の財政収支見通し

(2021年10月13日「Weekly エコノミスト・レター」)

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