2022年10月12日

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■要旨
 
  1. 世界の実質GDP成長率は、コロナ禍からの回復が進展する一方で、高インフレと金融引き締めの影響で2023年には2.8%まで減速することが見込まれる。その後も、少子高齢化を背景とした新興国の成長鈍化により、予測期間末には2%台半ばまで低下することが見込まれる。
     
  2. 日本の2032年度までの10年間の実質GDP成長率は平均1.0%と予想する。潜在成長率は、労働参加の更なる促進や、デジタル化などの生産性向上のための設備や人材面での投資の実施により、2020年代半ばには1%程度まで回復すると想定した。消費者物価上昇率(除く生鮮食品)は、2022年度の2.5%から2023年度には1.1%まで低下し、その後は緩やかな上昇に転じるものの、物価安定目標の2%を達成することは難しく、10年間の平均で1.4%と予想する。
     
  3. 日本銀行が金融緩和の正常化に着手する時期は予測期間後半の2028年度を想定した。物価安定目標は達成されないものの、この頃には物価上昇率が一時的に1%台後半に到達する。また、長引く金融緩和に伴って、金融システムの不安定化リスクといった副作用が蓄積するため、日本銀行は2%の目標を長期目標として残しつつ、「デフレ脱却という目的は実質的に達成された」という整理で出口戦略への移行を開始すると予想する。

 
実質GDP成長率の推移
■目次

1. コロナ禍後、高インフレに直面する世界経済
  ・コロナ禍による影響は解消に向かう
  ・高インフレに直面する世界経済
  ・高インフレで世界経済の成長率は減速
2. 海外経済の見通し
  ・米国経済-FRBによる金融引締めから、当面は潜在成長率を下回る成長が持続
  ・ユーロ圏経済-「脱ロシア」に取り組む欧州経済
  ・中国経済-10年後の中国経済は2%台の成長率に
  ・新興国経済-ブロック化する世界のなかで成長を模索
3. 日本経済の見通し
  ・2023年度に、実質GDPはコロナ前ピーク(2018年度)の水準まで概ね回復
  ・進む生産年齢人口の減少と労働力人口の見通し
  ・今後10年間の実質GDP成長率は平均1.0%を予想
  ・基礎的財政収支は2032年度も黒字化せず
  ・インバウンド需要は回復へ
  ・経常収支は2020年代末に赤字へ
4. 金融市場の見通し
  ・日本の金融政策と金利
  ・米国の金融政策と金利
  ・ユーロ圏の金融政策と金利
  ・為替レート
5. 代替シナリオ
  ・楽観シナリオ
  ・悲観シナリオ
  ・シナリオ別の財政収支見通し
  ・悲シナリオ別の金融市場見通し

(2022年10月12日「Weekly エコノミスト・レター」)

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