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2021・2022年度経済見通し
基礎研REPORT(冊子版)10月号[vol.295]
経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎
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1―2四半期ぶりのプラス成長
2021年4-6月期は2四半期ぶりのプラス成長となったが、1-3月期の落ち込み(前期比▲1.1%、年率▲4.2%)を取り戻していない。日本経済は2020年4-6月期に過去最大のマイナス成長となった後、2四半期連続で前期比年率二桁の高成長を記録したが、緊急事態宣言が再発令された2021年入り後は停滞が続いている。
2―拡大する日米の成長率格差
サービス消費は、2021年に入ってから米国がワクチン接種の進捗に伴うソーシャルディスタンシングの緩和を受けて回復を続ける一方、日本は行動制限を再び強化したため、低迷が続いている。
3―輸出、設備投資が景気を下支え
輸出は海外のロックダウンの影響で2020年前半に急速に落ち込んだ後、世界的な経済活動の再開を受けて2020年後半には急回復し、2021年入り後も堅調を維持している。財別には、半導体不足の影響などから自動車関連は低迷しているが、デジタル関連需要の拡大や世界的な設備投資の回復を背景に情報関連、資本財が好調を維持している。輸出はすでにコロナ前の水準を回復していることもあり増勢ペースは鈍化しているが、先行きについても世界経済の回復を背景として堅調を維持することが予想される。
設備投資は、新型コロナウイルス感染症の影響で企業収益が大きく落ち込んだことから2020年度には前年比▲6.8%の大幅減少となったが、2021年4-6月期は緊急事態宣言下でも前期比2.3%の増加となった。
日銀短観2021年6月調査では、2020年度の設備投資(全規模・全産業、含むソフトウェア投資、除く土地投資額)が前年度比▲9.7%と10年ぶりの減少となる一方、2021年度の設備投資計画は前年度比10.2%の高い伸びとなった。
製造業を中心に企業収益が大きく改善する中、テレワーク拡大やデジタル化に向けたソフトウェア投資、製造業の生産活動の好調を受けた機械投資を中心に設備投資は持ち直している。先行きについては、対面型サービス業の建設投資が引き続き下押し要因となるものの、設備投資全体としては回復の動きが継続することが予想される。
4―実質GDP成長率の見通し
2021年10-12月期は緊急事態宣言の解除を前提として前期比年率5.3%の高成長になると予想する。行動制限が緩和されることにより対面型サービス消費が持ち直し、民間消費が前期比1.7%の高い伸びとなることが高成長の主因となる。ただし、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言が断続的に発令され、消費が下振れるリスクは否定できない。
先行きについては、ワクチン接種の進捗が感染抑制に一定程度寄与することが見込まれる。しかし、感染者数がゼロになることは考えにくく、様々な要因によって感染の波が起こることは避けられない。実際、諸外国の例をみると、新型コロナウイルスの新規感染者数は、ワクチン接種が進んだ国でも変異株の出現などによって増減を繰り返している。感染者が増加するたびに、休業要請や外出自粛などの感染抑制策が講じられれば、経済の停滞は長期化するだろう。
実質GDP成長率は、2021年度が3.1%、2022年度が2.0%と予想する。この予測に基づけば、実質GDPの水準がコロナ前(2019年10-12月期)を上回るのは2021年10-12月期、消費税率引き上げ前の直近のピーク(2019年7-9月期)に戻るのは2023年1-3月期となる[図表4]。
しかし、新型コロナウイルス感染症に対する政策対応がこれまでと変わらなければ、経済の正常化はさらに遅れるリスクが高まる。逆に、医療体制の拡充や医療資源の適正な配分を行い、感染者数が一定程度増えても経済活動を大きく制限する必要がないような環境を整備すれば、消費を中心に景気が大きく上振れる可能性があるだろう。
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(2021年10月07日「基礎研マンスリー」)
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