2021年09月16日

貿易統計21年8月-自動車を中心に輸出の回復ペースが鈍化

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.自動車輸出の伸びが急低下

財務省が9月16日に公表した貿易統計によると、21年8月の貿易収支は▲6,354億円の赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲476億円、当社予想は▲2,095億円)を大きく下回る結果となった。輸出の伸びが7月の前年比37.0%から同26.2%へと鈍化する一方、輸入が7月の前年比28.5%から同44.7%へと伸びを大きく高めたため、貿易収支は前年に比べ▲8,633億円の悪化となった。部品不足に伴う生産調整の影響で自動車輸出が7月の前年比43.5%から同4.0%へと急減速したことが輸出の伸びを大きく押し下げた。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比13.7%(7月:同25.2%)、輸出価格が前年比11.1%(7月:同9.5%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比14.4%(7月:同2.1%)、輸入価格が前年比26.4%(7月:同25.9%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 季節調整済の貿易収支は▲2,718億円と3ヵ月連続の赤字となり、7月の▲59億円から赤字幅が大きく拡大した。輸出は前月比0.8%の増加となったが、原油高の影響などから輸入が同4.6%の高い伸びとなった。

8月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=73.9ドル(当研究所による試算値)となり、7月の71.8ドルから上昇した。足もとの原油価格(ドバイ)は70ドル台前半で推移しており、通関ベースの原油価格は9月も70ドル台となることが見込まれる。

2.輸出の回復ペースが鈍化

21年8月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比13.2%(7月:同19.5%)、EU向けが前年比30.2%(7月:同40.0%)、アジア向けが前年比11.1%(7月:同20.4%)、うち中国向けが前年比5.9%(7月:同12.2%)となった。

21年8月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲7.6%(7月:同▲1.8%)、EU向けが前月比1.0%(7月:同7.1%)、アジア向けが前月比▲1.5%(7月:同1.4%)、中国向けが前月比▲5.0%(7月:同▲2.7%)、全体では前月比▲0.4%(7月:同▲1.0%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 7、8月の平均を4-6月期と比較すると、EU向けは7.5%高いが、米国向けが▲2.4%、アジア向けが▲2.4%、中国向けが▲4.5%、全体では▲0.7%低くなっている。各国・地域ともに自動車輸出が大きく落ち込んでいるが、米国向けは自動車の割合が高い(20年実績は27.5%)ため、輸出全体への影響が大きくなっている。

世界的な設備投資の回復やデジタル関連需要の拡大を背景に、資本財、情報関連財が堅調を維持する一方、部品不足を受けて自動車が急減速していることから、輸出全体としては回復ペースが鈍化している。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年09月16日「経済・金融フラッシュ」)

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