2021年08月23日

住宅市場の回復に陰り-住宅価格(前年比)が史上最高を更新する中、住宅市場の回復はピークアウトした可能性

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
 
  1. 住宅市場は、住宅ローン金利が史上最低水準に低下したことなどからGDPにおける住宅投資は20年7-9月期から3期連続で前期比年率2桁の伸びを示していたが、21年4-6月期は▲9.8%と4期ぶりにマイナスに転じた。
     
  2. 旺盛な住宅需要を背景とした住宅販売在庫の不足や、建材価格の上昇に伴う建設コストの増加もあって、21年入り後に住宅価格が前年比2桁上昇し、06年-07年の住宅バブルを超えて史上最高となっていることが住宅市場の回復に水を差したとみられる。
     
  3. 実際に、住宅着工や新築、中古住宅販売件数などの主要な住宅関連指標は住宅市場の回復が年初にピークアウトした可能性を示唆している。
     
  4. 一方、一部建材価格には安定の兆しがみられるほか、建設中の戸建て件数の増加や連邦政府による住宅ローン返済猶予の期限切れに伴う住宅の売却などから住宅販売在庫は増加が見込まれており、今後住宅価格の上昇スピードは鈍化が見込まれる。
     
  5. もっとも、これまでの住宅価格の高騰によって所得対比でみた住宅取得能力が低下しているほか、住宅購入に対するセンチメントが悪化していることに加え、今後は住宅ローン金利の上昇が見込まれることから、当面、住宅市場は軟調な状況が継続しよう。
(図表1)住宅着工件数と実質住宅投資の伸び率
■目次

1.はじめに
2.米住宅市場の動向
  ・(住宅価格)全米規模で住宅価格(前年同月比)は住宅バブル時を越えて史上最高の伸び
  ・(住宅投資、住宅着工件数)住宅市場の回復がピークアウトした可能性
  ・(新築、中古住宅販売)新築、中古住宅販売件数もピークアウト
  ・(住宅ローン)住宅ローン金利は依然低水準も購入目的の住宅ローン申請件数は低下
3.今後の見通し
  ・(住宅価格)住宅価格の上昇スピードは鈍化へ
  ・(住宅需要)当面住宅市場の軟調は継続
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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